10年連続でクライマックスシリーズ(CS)進出を果たしながらも、ファーストステージでDeNAの前に敗退してしまった巨人。就任1年目の高橋由伸監督の下、リーグ2位という成績を残したが、常勝軍団に求められることは日本一になることだろう。■股関節…

10年連続でクライマックスシリーズ(CS)進出を果たしながらも、ファーストステージでDeNAの前に敗退してしまった巨人。就任1年目の高橋由伸監督の下、リーグ2位という成績を残したが、常勝軍団に求められることは日本一になることだろう。

■股関節手術から復帰を目指す35歳左腕、元G投手コーチ・川口和久氏の見解は?

 10年連続でクライマックスシリーズ(CS)進出を果たしながらも、ファーストステージでDeNAの前に敗退してしまった巨人。就任1年目の高橋由伸監督の下、リーグ2位という成績を残したが、常勝軍団に求められることは日本一になることだろう。日本シリーズ優勝という命題を達するために一つのカギとなるのが、先発左腕の強化。ドラフトやフリーエージェント(FA)での補強も可能だが、忘れてはならない存在がある。昨年10月、右股関節の手術を受けたベテラン左腕・杉内俊哉だ。

 現役野球選手としては過去に症例の少ない手術を受けた杉内は、長いリハビリ生活を終えた後、今年7月19日、3軍戦で約1年ぶりにマウンド復帰。その後は2軍で登板を重ね、1軍復帰を目指している。通算142勝を誇る35歳左腕は無事復活を果たし、来季巨人の重要な戦力として勝利に貢献することができるのだろうか。杉内がソフトバンクから巨人へFA移籍した2012年、投手コーチとして、その才能に触れた川口和久氏は「もう1回花は咲くと思いますよ」と、期待を込める。

 杉内が受けたのは、股関節の形成手術。アメリカでは、元広島のコルビー・ルイス投手が2013年に同様の手術を受けた。メジャーでも現役中に同手術を受けた選手は少なく、前例が少ないとされているが、ルイスは翌2014年にメジャーのマウンドに復帰。現在もレンジャーズ先発ローテの一角としてプレーし続けている。例のない手術を受けることになった背景には、杉内の体が持つ特徴が関係するのではないか、と川口氏は見る。

■1軍復帰に投げている事実が大切―、「来年のシーズンには万全に合わせてくる」

「杉内君の左脚って、膝が少し外を向いているんですよ。正面を向いて立った時に、少しだけ外を向いている。ピッチャーとしては、実はすごくいい。(投球動作の中で軸足に)力を溜めて投げやすいんですよ。溜が作れるから力強いボールも投げられる。だからこそ、股関節に掛かる比重も大変だったんだろうなって思います」

 昨年10月に手術を受けた杉内は、今年3軍登板を経て、2軍のマウンドに上がり、4試合(19回)に先発して1勝2敗、防御率5.21という成績だった。1軍復帰に向けて試合で投げられている――。この事実が大切だと、川口氏は言う。

「彼の性格って、すごく用心深いんですよ。ちょっと痛いと自分でストップを掛けるくらい。だから、投げ続けていられるということは、怖いとか痛いとかいう感覚がなくなって、万全の手前まで来ているということだと思います。キャッチボールをやって、ピッチングを始めて、ゲームでも投げた。ということは、来年のシーズンには万全に合わせてくるでしょう。そのくらい順調に来ていると思いますよ。

 今、100(の状態)では投げていないと思いますけど、100で投げた時の感覚がどうなるか。まだホップ・ステップ・ジャンプで言えば、ステップの段階だから、完全に治るのかっていう不安はあるでしょう。でも、階段はだんだん上がってきてますからね。巨人としても、内海君がちょっと下がってきているから、左のピッチャーをいかに機能させるかっていうのが、来シーズンは大事ですよね」

■周囲に復活を期待させる左腕、「そう思わせるのは杉内君の人徳」

 今季の年俸は5000万円+出来高。昨季は、投手としては12球団最高の年俸5億円だったが、昨オフの契約更改で自ら申し出て、4億5000万円ダウンでサインした。川口氏は、この潔さにこそ、杉内の人柄が表れているという。

「手術の前は5億円もらっていた給料を、4億5000万円返金して、5000万円で一からスタートした。リハビリも含めて野球ができないという状況を約1年間過ごしたわけですね。FA移籍してきたやりづらさもあるでしょうし、巨人はなかなかマイペースを許してくれないところもある。それでも、彼はマイペースでやってますから大丈夫です。

 自分を見失わない、そういう野球人生であれば、もう1回花は咲くと思いますよ。復活に期待したいですね。周りをそう思わせるのは、杉内君の人徳ですから。頑張ってほしいと思います」

 第1回WBCから第3回WBCまで3大会連続で日本代表として戦った唯一のピッチャーは、再びかつての輝きを取り戻すことができるのか。来季、1軍のマウンド上で生き生きと投げる左腕の姿を期待したい。