J1再開。今季限定ルールに見る有力チーム(1) 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、およそ4カ月にわたって中断されていた今季J1が7月4日、いよいよ再開する。 過去に前例のない長い中断期間があったとはいえ、その間に各クラブがキャンプ…

J1再開。今季限定ルールに見る有力チーム(1)

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、およそ4カ月にわたって中断されていた今季J1が7月4日、いよいよ再開する。

 過去に前例のない長い中断期間があったとはいえ、その間に各クラブがキャンプでじっくりとトレーニングを積めたわけではなく、互いの力関係が大きく変わったとは考えにくい。それでも、異常事態下でのリーグ戦開催とあって、いくつかの今季限定ルールが採用されており、それらが少なからず勝負に影響してくる可能性はあるだろう。今季J1を占ううえで、少なくとも2月の開幕前とは考慮すべき条件が変わってきていることは間違いない。

 なかでも、特に注目すべき要素が以下の3点である。

1.シーズン短縮による過密日程

2.選手の健康に配慮した交代枠の増加

3.移動負担減を目的とし、再開当初は東西分割開催

 異例の状況のなかで再開されるシーズンは、はたしてどんな展開を見せるのか。上記3つのキーポイントに沿って、今季J1をあらためて展望してみたい。

 最初のポイントは「シーズン短縮による過密日程」である。

 当初、今季J1は9カ月強の期間で行なわれるはずだったが、中断を余儀なくされた結果、およそ5カ月半にまで短縮された。最終節開催時期が当初予定より半月ほど先延ばしとなったが、それでも実施期間は大幅に短くなっている。

 にもかかわらず、J1の試合数は変わっていないのだから、試合スケジュールが過密になるのは当然だ。ルヴァンカップや天皇杯の方式を変更し、シーズン全体での試合数は減らされているとはいえ、週末だけではとても全試合は消化し切れず、それだけ水曜日に行なわれる試合が多くなる。

 つまり、前の試合から中3日、あるいは中2日で迎える試合が多くなるということだ。

 各クラブにとっては、選手のコンディション調整に細心の注意を払わなければならないのはもちろん、抱える戦力をフル活用しながらの総力戦が求められる。いかに優れた戦力を擁していたとしても、特定の主力選手ばかりを使い詰めにした結果、途中で息切れしてしまっては意味がない。

 試合間隔が詰まったなかでも、コンスタントに戦力を維持することが、今季J1を戦い抜くうえでのカギとなるのだ。

 そこで、昨季の公式戦(Jリーグ、天皇杯、ルヴァンカップ、AFCチャンピオンズリーグ)を対象に、前の試合から「中4日以上で行なわれた試合」と「中3日以下で行なわれた試合」で、それぞれのクラブがどんな成績を残しているのかを比べてみた。

 天皇杯の他、ルヴァンカップやACLのノックアウトステージでの試合についても、リーグ戦と同様の勝ち点(勝利=3、引き分け=1、負け=0。※PK戦決着は勝敗にかかわらず、引き分けと見なす)に置き換え、1試合当たりの平均勝ち点(総勝ち点÷試合数)を算出したのが、以下の一覧である。

 表を見るとわかるように、中4日以上の試合での平均勝ち点を見ると、(今季J2から昇格の2クラブを除けば)概ね昨季順位どおりの並びになる。当然と言えば、当然だ。

 ところが、中3日以下の試合となると、少しバラつきが見られる。なかでも顕著なのが、昨季王者の横浜F・マリノスの落ち込みである。

 中4日以上で唯一勝ち点2を超えているのはさすがだが、中3日以下になると、1.47と大きく勝ち点を下げている。その差-0.74は、全18クラブの中で最も低い数字だ。



昨季優勝した横浜F・マリノス。連覇に向けて、今季の過密日程は不安材料となる

 横浜FMは昨季、J1のラスト11試合を無敗(10勝1分け)で乗り切り、逆転優勝を果たしているが、その間の唯一の引き分けも天皇杯4回戦から中2日でのゲームだった。それ以外の10試合に、中3日以下はなく、それどころかインターナショナルマッチデーが挟まっていたこともあって、日程に余裕があるなかでの快進撃だったのである。

 ディフェンディングチャンピオンにとって、今季の過密日程は、思わぬアキレス腱となるかもしれない。

 対照的に、中3日以下の試合を得意としていたのが、昨季2位のFC東京、同5位のセレッソ大阪である。

 特にFC東京は、中3日以下で12勝6敗2分けの好成績。1試合あたりの勝ち点1.90は、昨季J2の横浜FCを除けば、最も高い数字である。また、C大阪は10勝4敗4分けの勝ち点1.89と、FC東京にはわずかに劣るとはいえ、中4日以上との差で言えば、+0.30とFC東京を上回る。

 昨季3位の鹿島アントラーズにしても、中4日以上と中3日以下との勝ち点差は-0.10ではあるものの、中3日以下での勝ち点1.78は、昨季J1の16クラブの中では、FC東京、C大阪、サンフレッチェ広島に次ぐ4番目の成績。しかも、昨季の総試合数55は、全18クラブの中で最多であり、中3日以下の試合にしても、浦和レッズの26試合に次ぐ23試合をこなしている。シーズンを通じて厳しい日程をこなしながらも戦力をうまく使いこなし、ACLでベスト8、ルヴァンカップでベスト4、天皇杯で2位、J1で3位と安定して上位進出を果たしたことは評価に値する。

 ただし、単純に中4日以上と中3日以下との勝ち点差だけで言えば、最も”過密日程巧者”ぶりを見せているのは、昨季ふた桁順位に終わった3クラブ、12位の清水エスパルス、14位の浦和、15位のサガン鳥栖である。いずれも中3日以下の試合では、中4日以上の試合に比べ、0.6前後も多くの勝ち点を稼いでいる。

 もちろん、そもそも中4日以上の試合での勝ち点が低いだけ、とも言える。しかし、今季の過密日程を考えると、この差は見逃せない。特に浦和は、中3日以下での26試合を含め、53試合を昨季1シーズンでこなしており、過密日程慣れしているという側面もあるはず。逆境が意外な追い風になる可能性はあるだろう。

 さらには今季昇格組のひとつ、横浜FCも中3日以下の試合数が9試合と少なかったとはいえ、J2王者の柏レイソルをも上回る勝ち点2.11を稼いでいる。昇格1年目で苦戦が予想されるシーズンではあるものの、過酷な条件がむしろ番狂わせを起こすチャンスになるかもしれない。

 およそ5カ月半で33試合を詰め込む超過密スケジュール。横浜FMは連覇に黄信号、FC東京をはじめとする昨季上位勢には逆転のチャンスあり、といったところである。

(つづく)