4年越しのリベンジが男をさらに強くしたー。「五輪で絶対に金メダルを取る」。幼少期から掲げている“明確”な夢が男を再び立ち…

4年越しのリベンジが男をさらに強くしたー。「五輪で絶対に金メダルを取る」。幼少期から掲げている“明確”な夢が男を再び立ち上がらせ、恋い焦がれた“夢舞台”への挑戦を奮起させた。

昨年のNHK杯兼日本代表選手権大会で東京五輪の座を勝ち取ったのは、カヌースラロームカヤックの足立和也。

悲願となる憧れの“切符”を掴んだ足立だが、目指すのは表彰台の頂。ここにくるまでの壮絶な道や、コロナ禍での影響、五輪へかける思いなど、五輪へかける思いなど、「今」と「未来」の「足立和也」を前編、後編にわけて余すことなく紹介したい。

カヌースラローム競技は、川の一定区間(200m程度)に不規則に設置された20前後のゲートを、最上流のスタート地点から順番に通過して下って時間を競うカヌー競技の一つで、両端にブレードのついたダブルブレードパドルを左右交互に漕ぎながら艇を前に進める「カヤック」と、東京五輪代表が内定しているリオ五輪銅メダリストの羽根田卓也が主戦場とする「カナディアン」に分類される。どちらも、持久力の高さ、パワー、バランスが要求され、体力的にも精神的にもハードな競技となっている。

足立は幼い頃から競技に触れ、世代別の日本代表選手や、フル代表に選出されるなどメキメキと力をつけてきた。しかし、大学在学中はどれだけ努力しても思うような結果を残すことができず、世界との差を痛感。将来を想像できなくなり、苦悩の日々を過ごしたという。

2012年には、さらに成長するため、集中できる環境と指導者を求めて大学を退学。山口県に拠点を移し、再起を図った。結果はすぐに表れた。その年の日本選手権で優勝し、そこから3連覇を達成。14年のアジア大会では優勝、16年のワールドカップでは日本人初となる3位入賞、17年のワールドカップにおいても3位に入り、世界レベルで戦えることを証明した。

この時はまだ自分が優勝した大会の会場で販売している100円のフランクフルトを買えないほど、困窮した競技生活を送っていた足立。一心不乱に競技に打ち込んだからこそ、新たな道を切り開けた。

五輪の延期は大きなチャンス

新型コロナウイルスの感染拡大は日常に多大な影響を及ぼした。約1ヶ月の自粛期間により、水上での練習が全くできず、不安に駆られた。「中止もあり得るという状況の中で、延期という決定は嬉しかった」と安堵の表情を見せつつも、100%割り切ってすぐに次の一歩を進められた訳ではなかったのだ。先行きが不透明なため、東京五輪本番までの予定が立てられず、「目先の目標や、計画に沿って過ごせないのは気持ち的に難しい」と漏らす。

それでも、足立は前を向く。自宅にお手製の練習器具を作るなど工夫を凝らし、できる限りのトレーニングを積んで体力や感覚の現状維持に努めた。どんな苦境に立たされても、常に前を向く姿勢を貫いてきた。

五輪の延期で時間に余裕ができたことも「大きなチャンス」と足立。これまで世界の1番になったことがなく、「発展途上の段階にいる」と自己分析する。試せることは多く、「1年で成長できる準備の時間が延びた」と冷静に分析し、「自分を見つめ直す時間が増えたからこそ、記録を伸ばす方法や自身を支える周囲の存在などを再確認できた」と話した。

コロナ禍で再確認した自身を取り巻く環境

記録を伸ばすための鍵となるのが道具の改良だ。「今より確実に強くなれる」と語気を強め、現在はある“秘策”を手に入れるために励んでいる。ボートの改良や、それに伴う漕ぎ方の技術などをテストしており、習得すれば、ハイレベルでのパフォーマンスが出せるという。来夏には「過去最高にパワーアップした“ニュー“足立和也を皆さんの前で披露できる」と自信をのぞかせる。

「娘の成長は刺激になる」。競技面以外でも改めて気付かされたことが多かった。家族との時間も増えたので「しっかりとリラックスもでき、2歳の娘ともたくさん遊んだ」。特に会話には驚かされたいい、口から出る単語が文に変わる瞬間を目の当たりにし、「このような状況下でも予想以上に成長していた」と目を丸くした。親としては嬉しいが、選手目線となると、「急激な成長に対して勝手にライバル心を持ち、負けてられないなと思った」と愛娘に“嫉妬”したそうだ。

また、大変な状況下でも支え続けてくれる存在は大きく、「五輪が延期になっても、前を向いていることを近況報告としてご連絡をさせていただいた」と地元企業のスポンサーへの感謝も口にした。自分が何も成果を見せられない中でも、変わらずに支え続けてくれる方たちに対しての気持ちは「一層大きなものになった」と振り返り、「結果を残すことで恩返しをしたい」と誓った。

目の前にいくら高い壁が立ちはだかっても、足立は物ともしない。信じて進み続けた“ビクトリーロード“に向かって今日も着実に成長する。「後編」では、1年後に延期となった五輪への思いや、さらにその先の未来について聞いた。

取材・文/山本未来王

プロフィール
あだちかずや/カヌー日本代表。1990年10月生まれ。神奈川県出身。3歳でカヌーを初経験。世代別日本代表選手権に選出される。日本選手権3連覇。2014年、アジア大会優勝。16年、日本人で初となるワールドカップ決勝進出。19年NHK杯兼日本代表選手権大会で4位入賞し、東京五輪代表選手に内定した。5月11日に自身のYouTubeチャンネル「足立和也の『東京五輪へ真っ直ぐ!』」を開設した。