所属スポンサー大会でも低迷、渡邉彩香「不甲斐ない」「プロとして失格」 新型コロナウイルスの影響で開幕が遅れていた女子ゴルフの開幕戦、アース・モンダミンカップ最終日が29日、無観客試合として千葉・カメリアヒルズCC(6622ヤード、パー72)…
所属スポンサー大会でも低迷、渡邉彩香「不甲斐ない」「プロとして失格」
新型コロナウイルスの影響で開幕が遅れていた女子ゴルフの開幕戦、アース・モンダミンカップ最終日が29日、無観客試合として千葉・カメリアヒルズCC(6622ヤード、パー72)で行われた。4打差4位で出たツアー通算3勝の渡邉彩香(大東建託)が、首位で並んだ鈴木愛(セールスフォース)とのプレーオフを1ホール目で制して復活優勝。苦労の末に手にした栄冠で周囲を泣かせ、支えてくれた妹に力強い姿を届けた。
嬉しさと安堵の思いが胸を占めた。68の通算11アンダーで4打差を大逆転。2015年11月の樋口久子Pontaレディス以来、1702日ぶりの優勝だ。最後のバーディーパットは4メートルのスライスラインを読み切り、左手を高々と掲げた。無観客で関係者だけのまばらな拍手。敗れた鈴木も加わって称えた。
「嬉しいのと、ずっとたくさんの人が気にかけて応援してくれていたので、それに応えられたというホッとした気持ちでした」
最後のパットを決めた瞬間を振り返った。優勝インタビューでは「みんなの顔が浮かんだ」と涙が頬をつたった。苦労を知る川口淳キャディーは、グリーン脇で膝をついて泣いていた。
2016年は32試合の出場で開幕から18試合連続で予選通過。ツアー屈指の飛ばし屋として武器に当たり前のように上位に顔を出し、リオ五輪代表にも手が届きそうな位置だった。しかし、毎年30試合以上に出場しながら、賞金ランクは16年12位、17年36位、18年は55位でシード権を喪失。昨年は8試合連続を含め、予選落ち23度で115位まで低迷した。
「もう勝てないんじゃないか」
そんな思いが胸をよぎった。しかし、諦めない。原動力となったのは周囲の支え。ともに戦い、ライバルであるはずの他の選手からの言葉も力になった。
「辞めようと思うことはなかった。やっぱりチームのみんなだったり、家族だったり、ファンの方だったり、あとは他の選手も凄く気にかけてくださった。ちょっとでもいいプレーをすると『ナイスだったね!』と声をかけてくださる選手の方もいた。支えが大きくて、その人たちのためにもっと頑張って優勝を見せてあげたいというのが一番でした」
家族に八つ当たり、記者にも愛された
トップゴルファーは、所属先など多くのスポンサーからサポートを受ける。渡邉もその一人だった。スポンサー企業が主催、協賛する大会は「ホステスプロ」として出場し、大会を盛り上げるのが一つの役目。しかし、ドライバーショットに悩み、結果の残せない日々は胸の張り裂けそうな思いだったという。
「たくさんスポンサーをしていただいて、そのホステス大会が年間通して何試合かある。去年は、そこで結果を一切残せないことがあったので、それは自分でも不甲斐ない。プロとして所属させていただいている大会で、こんなプレーをして『プロとして失格だな』という気持ちになりました」
昨年は妹の祐奈さんが入籍。これまでサブマネージャーなどでツアーに同行し、おにぎりなどの軽食のサポートもしてくれることもあった。しかし、これからはそうもいかない。
「寂しい気持ちはありますが、でも、やっぱり妹も家族ができてそっちも大事にしてほしいと思いました。私が頑張って『もう大丈夫だよ』と試合でアピールしてあげないと。こんなに早く、こんなにいい形でできてよかったなと思います。家族には八つ当たりをしたし、迷惑をかけた。(喜びを)家族に伝えたいですね」
コロナ禍の開催で家族や関係者も入場できなかった今大会。ネット中継を通じ、復活した姿を存分に届けた。
Zoomによるオンラインの優勝会見では、質問をする記者一人ひとりが「おめでとうございます」と祝福。久々に顔を合わせた渡邉は「あー、ありがとうございます!」「お久しぶりです」などと感謝を伝えて答えた。
周囲に愛される人柄で、ファンも復活を待ち望んでいた。自身の結婚については「まだないです」と苦笑い。「久々に勝っていい開幕戦になったので、次の試合でも準備を怠らずにやりたい」とコースで戦う覚悟を示した。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)