6月25日に行なわれたチェルシー戦で、2位のマンチェスター・シティが1−2で敗戦。この結果、首位との差は残り7試合で23ポイントに開き、リバプールの国内リーグ優勝が決まった。チームメイトとの連係もスムーズになってきた南野拓実 リバプールは…

 6月25日に行なわれたチェルシー戦で、2位のマンチェスター・シティが1−2で敗戦。この結果、首位との差は残り7試合で23ポイントに開き、リバプールの国内リーグ優勝が決まった。



チームメイトとの連係もスムーズになってきた南野拓実

 リバプールはユルゲン・クロップ監督、1軍選手全員、コーチ陣が市内のホテルに集まり、この試合を屋上で見届けた。当初、観戦会は強制参加ではなかったようだが、チームの和を何よりも大事にするクロップらしく、「参加を義務にした。選手よりも、私は多くの経験を積んでいる。ここでみんなで集まらないと、残りの人生でずっと後悔することを知っていたから強制にした」という。

 マンチェスター・Cが敗戦し、リバプールの優勝が決まると、選手たちは「チャンピオン」の掛け声とともに喜びを爆発させた。1990年以来、30年ぶりとなる悲願のリーグ優勝が決まった瞬間だった。

 振り返ると、今季はリバプールの強さが際立った。

 シーズン前半戦の折り返し地点まで、18勝1分無敗の圧倒的な強さで首位を独走。12月にはカタールで行なわれたクラブW杯を制し、世界王者に輝いた。大会終了後も勢いは衰えず、2月29日のワトフォード戦で敗れるまで、昨シーズンから続いていたリーグ無敗記録を44試合まで延ばし、リーグでの連勝も18試合続いた。

 本来なら3月にもリーグ優勝が決まるはずだったが、新型コロナウイルスの感染拡大によりプレミアリーグは一時中断となった。再開まで3カ月の時間を要したが、こうしてリバプールは国内リーグの頂点に立った。

 そして、12月のクラブW杯の開始直前に飛び込んできたのが、南野拓実のリバプール移籍の一報だった。

 リバプールはセレッソ大阪時代から南野に注目していたが、昨年10月のチャンピオンズリーグ・グループリーグで1ゴール&1アシストの活躍を見せた日本代表MFの獲得に本腰を入れ、移籍金725万ポンド(約9億6000万円)で契約。南野は1月1日付けでリバプールの一員となり、優勝決定まで国内リーグ戦の5試合に出場した。

 加入からわずか半年での優勝決定に、南野は「実感はあまりない」という。無理もないだろう。

 思えば、リバプールは昨シーズンも国内リーグ戦で白星を重ね、栄冠を掴んだマンチェスター・Cとわずか1ポイント差の2位で涙を飲んだ。この時、リバプールが獲得した97ポイントは、2017−18シーズンにマンチェスター・Cが記録した100ポイント、昨シーズンのマンチェスター・Cの98ポイントに次いで、プレミア史上3番目に多い数字だった。

 無論、2位のチームとしては最多だ。リバプールの選手たちの悔しさが相当なものだったのは容易に想像がつく。

 南野はチームの優勝に喜びを示していたが、国内制覇を待ちわびていた既存戦力たちと温度差があるのは仕方がない。また、本人としても、まだリバプールで大きな貢献はできていないとの思いがある。クラブを通じて、南野は次のように話した。

「自分は半年だけしかプレーしていないので、実感はあまりない。まだここで何も示していないので、いずれ自分がチームに貢献し、優勝をまた味わえればいいかなと思う」

 そんな南野に以前、「リバプールの強さの秘密はどこにあるのか」と尋ねたことがある。南野の目に、リバプールはどのように映っているのか。日本代表MFは、次のように答えた。

「(点を)獲れるところでしっかり取れているし、あとは後ろ(守備)が堅いですね。何気ない試合でもゼロで抑えて勝つ。本当に、スタメンで出ている選手はオートマチックに自分のポジショニングとか、プレッシングのタイミングなどが身体に馴染んでいるというか。

 自然に身体が動いている感じがする。そういう部分かな。自分もそうなっていかないといけないと思う。僕もそれを目指している。そのためにやるべきことは、まだいっぱいあると思います」

 優勝決定前に4−0で大勝したクリスタル・パレス戦は、そんなリバプールの強さが凝縮していた。レギュラー陣が先発に戻り、序盤からクリスタル・パレスを圧倒。南野の言う「自然と身体が動く」プレーができていた。

 とくに、この試合の2点目となるモハメド・サラーの得点は、今季のリバプールを象徴するようなプレーだった。アンカーのMFファビーニョが中盤でボールを持つと、そのタイミングでサラーがDFラインの背後に飛び出し、鮮やかにネットを揺らした。まさに、阿吽の呼吸で生まれた得点だった。

 後半29分から途中交代で出場した南野にも好プレーがあった。英BBC放送のダイジェスト番組「マッチ・オブ・ザ・デイ」で褒められていたのが、南野のプレスバックだった。

 相手が中盤でパスを回し始めると、南野はチームメイトとともに猛然とボールホルダーを追いかけて奪い返した。解説を務めた元イングランド代表FWアラン・シアラーが「4−0でリードしているのに、この強度でプレスをかけ、ボールを奪い返した。これが今のリバプール」と、選手たちの貪欲な姿勢に感心していた。

 リーグ優勝が決まった今、クロップ監督は過密日程を乗り切ろうと、積極的にローテーションを行なうことだろう。南野の出場機会も増えるはずだ。

 残りは7試合。本人が「出場した試合で結果を残し、チームの勝利に貢献したい」と語るように、ゴールやアシストの結果を残せば、流れもまた変わってくる。勝負の年となる来シーズンに向け、最終節までアピールを続けていきたい。