受験勉強へ切り替えた矢先…代替大会開催への複雑な思い

 第102回全国高校野球選手権大会の中止が決まり、約1か月。代替大会、引退試合、上の舞台、将来の夢……。球児たちも気持ちを切り替え、新たな目標に向かってそれぞれのスタートを切っている。新型コロナウイルスは彼らから何を奪い、何を与えたのか。Full-Countでは連載企画「#このままじゃ終われない」で球児一人ひとりの今を伝えていく。

 例年15枠の野球推薦のほか、一般受験で入学した生徒も受け入れる専大松戸の野球部。付属校である専修大などへの推薦入学の一方で、当然受験を経て大学へ進む選手もいる。今年の3年生部員18人のうち、一般受験を経て入部したのは4人。そのなかの一人、中村真也投手(3年)は代替大会の決定に当初、複雑な思いも感じていた。

「自粛期間中は練習も限られるので、受験勉強を並行して進めていました。どうしても野球で時間を取られるぶん、他の一般生と比べて勉強で遅れているという不安はあって、夏の大会中止が決まってからはより本格的に進路について考えるようになった。代替大会の発表は、自分のなかで気持ちを切り替えられたのとちょうど同じタイミングでした」

 選手個々によって異なる野球と勉強のウエート。急遽決まった代替大会にどう臨むのか、持丸監督は選手たちに話し合いの場を設けさせた。中村は受験組の意思も尊重し、主将の吉村に提言。「言いづらいこともあったけど、みんなが話しやすい空気を作ってくれたおかげで、腹を割って本音で話せた。野球に時間のすべてを捧げることはできないということも伝えたうえで、やるときは全員で野球に向き合おうと誓いました。あそこまで言いたいことを言い合えたのは、こういう状況にならなければなかったことかもしれません」。今は練習に全力で取り組みつつ、休み時間や夜寝る前に時間を作ってコツコツと勉強も続けている。

当初は高校までと決めていた硬式野球、自粛期間に考えた自身の将来

 約100日にも及んだ自粛期間の間には、将来についても考え方が変わった。当初は研究職を目指し、理系の学部へ進学を希望していた中村だが、「こういう形で最後の夏が終わってしまって、野球の振興や発展について学びたいという思いが強くなった」。報道の仕事や学校教員なども視野に入れ、スポーツ全般について学べる国立難関大に志望を切り替えた。理系で両立は難しいと準硬式などへ転向するつもりだった野球も、今は硬式で続けたい思いが強まっているという。

 全国的な感染拡大も落ち着き、高校野球の現場では日常も戻りつつある。夏の甲子園中止は早計だったのではとの見方もあるが、中村は「早くに大会中止が決まったことで、前を向く時間が増えた。進路についてもいろいろと考える時間になったし、結果的には野球を続けることにもつながった。もう少し待てばやれたんじゃないかという声もありますが、早くに決まったことは自分にとってはよかった」と前向きに捉えている。コロナ禍によって奪われた夢と、そこから芽生えた新たな目標。一人ひとりが前を向き、次の夢に向かって歩を進めている。(佐藤佑輔 / Yusuke Sato)