新型コロナウイルス(COVID-19)による中断期間を経て、再開するJリーグ。Jリーグ全試合を配信する「DAZN」と18のスポーツメディアがタッグを組んだ「DAZN Jリーグ推進委員会」では、「THIS IS MY CLUB -FOR RE…

新型コロナウイルス(COVID-19)による中断期間を経て、再開するJリーグ。Jリーグ全試合を配信する「DAZN」と18のスポーツメディアがタッグを組んだ「DAZN Jリーグ推進委員会」では、「THIS IS MY CLUB -FOR RESTART WITH LOVE- Supported by DAZN Jリーグ推進委員会」の企画をスタートさせた。

超ワールドサッカーでは、ギラヴァンツ北九州の小林伸二監督にインタビューを実施。“昇格請負人"として知られる小林監督が、就任1年目でJ3優勝、J2昇格を達成した北九州について、クラブへの想いや今シーズンへの意気込みを語ってもらった。

取材・文:菅野剛史

写真提供:ギラヴァンツ北九州

◆「チーム内競争も激しくなった」

──中・長期の計画を立て、再スタートとなった2019シーズンで見事にJ3優勝、J2昇格を勝ち取りました。改めて昨シーズンを振り返ってください

「90分戦えるチームを目指しました。足が止まるとか、後半最後に失点があるというのが、積極的だけど、どちらかというと(ゴールを)取りに行かなくてはいけないというときに取られたり、逃げ切れずに取られたりという原因をクリアするには、90分戦えるということと、積極的にサッカーをするというところで、サッカーを通してフィジカルを上げていくということをさせました」

「どうしてもイメージが受けのイメージがあるので、積極的にサッカーをやるという意味では、思い切って攻撃的になろうということで、攻撃的なカードを切るということと、攻撃的な選手をうまく配置するということと、サイドバックにも攻撃的な選手を入れつつ、攻撃的なサッカーをしていくということをしました。ただ、そうなると前からのディフェンスがとても重要になります」

「逆に前にいるので、後ろから持ち出す力というのが難しいですけど大事で、そこさえ上手くいけば、選手が前にいるというのが、我々にとっても課題ですけど、多くのチームにとっても課題かなとは思います。ただ、そこに積極的にトライしていって、それが上手くシーズンに入って開幕から4連勝できて、力強く入れたことと、(中断からの)再開後、9月のアウェイの4連戦で4勝しましたが、移行期もうまくトレーニングをしっかり積めました」

「入りが良かったことと、選手もモチベーションが高く、トレーニングゲームで良い選手をできるだけ出すように心掛けました。チーム内競争も激しくなったというところも考えると、前年度が厳しいシーズンでしたが、選手のモチベーションをプラスに持っていき、戦い方の整理が上手くできたということで、上手くいったシーズンだったと思っています」

──若い選手や期限付き移籍の選手が多い中で、最初に自信を持てたことはシーズンを進める上では大きかったということですね

「若い選手が一生懸命やるというところに、中盤に元々いた選手、ベテランの池元(友樹選手)が上手く絡むことができて、シーズンも上手くいったと思います。元々いた選手との融合も上手くいったと思いますね」

──夏にも3選手を期限付きと育成型期限付き移籍で獲得しました。所属チームでの出場機会がない若い選手をチームに取り込むことの難しさやその効果はどう感じられましたか

「3人とも前の選手を獲りました。攻撃的であるということと、前からプレスをかけるということで、前に機動力のある選手を獲りました。あとは、選手にも上手く表現しないと使わないといいました。元所属していたクラブで出場機会がなくて、試合に出たいということで来ていますから、トレーニングをちゃんとやって、トレーニングで表現できれば使うということは言っていました。そういったところがより明確になって、トレーニングやトレーニングマッチでパフォーマンスを上げてくれた部分が、すんなりとチームに入り込めた要因かなと思います」

「上のカテゴリーにいたからということよりも、トレーニングをちゃんとやったということを他の選手も認めたと思います。そういったところで上手く元々いた選手も受け入れたと思いますし、新しく入った選手も無我夢中で頑張ったというのも1つだと思います」

◆「決めつけない、チーム内競争、切磋琢磨」

──J3リーグで指揮を執るのは初めてだったと思いますが、これまで経験したJ1リーグ、J2リーグとのリーグとしての差はありましたでしょうか

「守備的ではないですね。現代サッカーと今の若い選手、サッカー歴の長い上手い選手が多くて、その選手たちをどう使うかというと、守備的より攻撃的なチームが多いという印象を受けました。そういった中で、いかに自陣で上手くボールを回しながら裏をとるのか、押し込んだ中でどう破っていくのかは、なかなか難しいですけど、少しずつできるようになったという感じです」

──小林監督は「昇格請負人」と称されることが多いですが、チームを昇格に導く上で、監督としてのポリシーやポイントはあるのでしょうか

「まず、そういった匂いがするチームの仕事を受けているので、その可能性は高くなっているかなと思います。ただ、今回は実はそういった感じではなかったです」

「決めつけない、チーム内競争、切磋琢磨ということが非常に大事だと思います。それはやっぱり、サンフレッチェ広島の前身である(現役時代にプレーした)マツダの時もそういった部分がありましたし、ピッチで何ができるかを大事にしなくてはいけないです。私もそうですが、コーチがいかに選手に関わって、その1人の選手が変わること、勇気を出して使うということは怖いことだと思いますが、大事なことだと思います」

「それは、J3だったらひょっとしたら安易にできたかもしれませんし、J1だったら難しい部分があると思います。でも、意外と(モンテディオ)山形の時を考えると、選手が変わったから高校生を使ったと言うのが結構あったなと」

「私と関わらない選手がいて、コーチが細かく指導している選手もいます。自分が全体を動かすとなると、コーチが選手と密にやっているトレーニングがあって、ファンクションがあったり、それが上手くいったら公式戦にハメたりということが大事だと思います。みんなが出られると言うと言い方が悪いですけど、頑張った選手が出られると言うのがある。より私とコーチ、コーチと選手が近い関係になるということは大事にしているところですし、それがとても出たシーズンだったと感じています」

──伸びそうな選手、若い選手を大胆に起用する上で、そこに踏み切るポイントや大切にしていることはどこにあるでしょうか

「トレーニングを頑張っている、行けそうだな、まだ早いなと思いますが、意外とその心配を楽に超えて選手は上手く行ったりします。そういった心配があっても、モチベーションが高い選手は意外と集中してやるんですが、それは3試合ぐらいだったりします。続けていると、ポカをやったりするんです」

「そこをやってしまいそうだなとか、ちょっと疲れてきたなというのをトレーニングで見極めるか、それをやってしまうことで成長に繋がるというのも1つあると思います。そういうのは、トップトップではないので、我々が持っていないといけないかなとも思います」

「意外と今シーズンの開幕に向けても、最初の2週間で後ろが結構崩れてしまったんです。良くなっていたのに。そこにも何人かの選手を起用して心配していましたが、意外とやるなと。(開幕戦は)結果としては負け(アビスパ福岡に0-1で敗戦)ましたが、予想以上に個人としてやってくれたなというのは良かったと思います。それがチームとしてもっと強くなれればいいですが、一度には変わらないので。そこは大事にしているところです」

◆「相当難しいと感じている」

──新型コロナウイルスの感染拡大を受け、開幕後に約4カ月中断することになりました。今回の中断期間はどう捉えましたか?

「まず、早く休ませました。こういった怖い病気に感染したら困ると思って、早く休ませました。1カ月ぐらいかなと思っていたんです。その期間であれば、オフということも計算できます。実際2カ月近いオフになり、選手も私も経験したことがないので、段々不安になっていく状態でした」

「命令でこういったことをやっておけと言うこともできない状態ですし、個人に任せているということから、体幹トレーニングをZOOMで入れたり、グループトレーニングをやったりして、やっと11日から全体練習をやれるようになりました」

「選手個人では集中しているのが見られますが、10対10をやらないので、どうしても機能的ではないというか、役割が明確ではないと言うのを感じています。紅白ゲームをしましたが、なかなかアップダウンは元気良く飛び出したりできますが、機能的にボールを回したり、連動してボールを奪ったりというのは、少し物足りない、かけ離れているのがありました。そこはどうしても共通理解を徹底させる、喋る、やらせる、喋る、やらせると言うのは、まだまだ足りず、難しさを感じています」

──監督という立場で、中断期間にやれることも少なかったかもしれませんが、どういったことをされて過ごしていましたか

「海外の試合のビデオを見たり、自分なりに自分たちの攻撃に当てはめたり、こういった攻撃のトレーニングができないかなとか、参考にさせてもらいました。あとは、動けないのでね。難しいです」

──選手とのコミュニケーションは取られていましたか

「ZOOMで体幹トレーニングを週2回やり出した時には、そういったこともありました。それ以外にハドル(ビデオ共有システム)を去年から使っていて、選手もそのハドルを開けると試合を見られるような形でコーチが落としてくれているので、それを見ておけというやり取りはしていました。再開した時は、目指している戦術のビデオを流したりとかして、共通理解をしました。ただ、見たものが現実にピッチでとなると、なかなか難しいですね」

──トレーニング再開から2週間程度でリーグ再開となりますが、描いていたものとのギャップがあると思いますが

「10対10がやっとできたということと、3月以来トレーニングマッチをしていないので、未知数という感じですね。相当難しいと感じています。グループから全体トレーニングに移るタイミングで、北九州は新型コロナウイルスの感染者が増えたんですよね。そこで、一度個人トレーニングに戻したりした時期もあります。1週間、2週間で遅れたこともあります」

「福岡は地方都市として一番感染者が多かったので、早めに動けなくなりました。最初もトレーニングができなかったので、(中止したのも)早かったし、後ろも長かったので、ちょっと試合をやりながら上げていくしかないかなと思っています」

◆「積極的にチャレンジすることを忘れずに」

──今シーズンは昇格1年目、チームとしては久々のJ2リーグとなりますが、再開するシーズンへの想いは

「タフなシーズンになると思いますけど、去年描いたような積極的なサッカーをやるというのは大事ですし、それをやっていきたいと思います。チャレンジャーとして忘れずに、J2にチャレンジしていくという姿で、今シーズンはぶつかっていきたいと思っています」

──大会方式が変更され、降格がないという特別なシーズンになります。非常にチャレンジはしやすいかと思いますが

「去年も挑戦してきたので、積極的に挑戦するで良いかなと思います。どういうシーズンになるのか、メンバーも交代できますし、夏の水分補給など、ちょっとしたことでも難しいものになると思います。そこ全てを、周りを見ながら進めていくことは大事ですけど、我々は積極的にチャレンジすることを忘れず、降格がないということもありますけど、去年から積極的な気持ちで攻撃的なサッカーをやれたらと思います。相手あってのことなので、難しい部分はありますが、気持ちの部分とサッカーの組み立てはそうしていきたいです」

──再開の初戦では監督の地元であり、同じ九州のV・ファーレン長崎と対戦します。特別な想いはありますか

「JFL時代は少し手伝ったこともありますし、長崎ということもありますし、手倉森監督も一緒に仕事をしたことがありますから、なかなかこういう時に再開の一発目にやれるということは非常に嬉しく思います」

「レベルが高いチームですし、個人的にも高いので、胸を借りるつもりで、積極的にサッカーをやりたいなと思っています」

──当初はスタジアムにファン・サポーターがいないリモートマッチとなりますが、その影響はどこにあるでしょうか

「集中するということ。選手のコーチングと我々のコーチングがよく聞こえると思うので、そこは大事にしていきたいです。無観客とはいえ、情報だったり、DAZNだったりで観られるので、そういったことを忘れずに、積極的に思い切ったサッカーを見せられたらなと思います。そして、観客の方が入った時に、一体感があって盛り上がっていければと思います」