「オンラインエール授業」で全国の女子サッカー部40人にメッセージ 現役のなでしこジャパンが、大切な夏を失った高校生の背中…

「オンラインエール授業」で全国の女子サッカー部40人にメッセージ

 現役のなでしこジャパンが、大切な夏を失った高校生の背中を押した。サッカー女子日本代表MF長谷川唯が22日、「インハイ.tv」と全国高体連が「明日へのエールプロジェクト」の一環として展開する「オンラインエール授業」に登場。インターハイが中止となった全国の女子サッカー部40人に向け、「夢を追いかけたり、目標を達成したりするためには楽しむこと必要」と語った。

 長谷川が登場した「オンラインエール授業」はインターハイ実施30競技の部活に励む高校生をトップ選手らが激励し、「いまとこれから」を話し合おうという企画。村田諒太、川口能活さん、佐々木則夫さんら、現役、OBのアスリートが各部活の生徒たちを対象に授業を行ったが、第7回は現役のなでしこジャパンが“先生”になった。

 冒頭で語ったのは、高校時代の思い出だった。部活ではなく、クラブチームの日テレ・ベレーザの下部組織、日テレ・メニーナでプレーした長谷川。朝から学校に行き、授業を終えると、クラブの練習場まで移動が必要になった。しかし、「サッカーが上手くなりたい」という思いを成長の原動力に変え、夜までボールを追いかけ、青春を捧げた日々は部活の高校生と一緒だ。

 常に持っていたのは、高い志。「身近に日本を代表するような選手がベレーザにたくさんいたので、そういう選手になりたいと思っていたし、小さい頃からプロの選手になりたいと思っていたので、高校時代も変わらずプレーしていました」。世代別代表で活躍し、2年生だった14年に行われたU-17ワールドカップ(W杯)では6試合すべてに出場して3得点、日本の初優勝に貢献した。

 トップ選手への足掛かりを作った高校時代を経て、現在は東京五輪を目指すフル代表のなでしこジャパンの主力にまで成長した。そんな現役日本代表と交流できるとあって、オンライン上で目を輝かせた高校生たちは、質問コーナーで積極的に声を上げた。特に関心が集まったのは、157センチという女子サッカー界でも小柄なサイズで、世界と戦える秘訣だ。

――自分より大きい選手と戦う時に何を意識していますか?

「中学生の時は今よりもっと小さくて、自分より身長が低い選手は味方にも相手にもいないくらい。意識したのはどれだけ相手にぶつからずにプレーするか。その時に一番大事なのはポジショニング。自分は中1の時(日テレ・メニーナ入団)にもう高3の選手まで同じチームでプレーしていたので、ただやるだけだったら通用しない。どこのポジションに立ったら相手に触れられずにボールを受けられるかを考えてプレーするようになりました。結果として中学から高校の間に今のプレースタイルができたので、もちろん苦労した部分はあるけど、背が大きくなくて良かったとも思っています。短所と思うところも今は長所として捉えることができています」

――相手にスピードで負けてしまい、自信がありません。どうすれば、相手に勝てるようになりますか?

「自分も体が小さいこともあり、中学生の頃からスピードで勝てないことがたくさんありました。でも、先の展開を予測したり、周りを見て状況を把握したりして『次にここに来そうだな』と考えてポジションを取っている。スピードがなくても守備でボールを取れたり、攻撃で相手の逆を突けたり、スピードがなくても通用すると感じました。もちろん、スピードを上げるために今も筋トレをしているし、まずは克服できるようにトレーニングすることも大事。その上で(スピードについては)しょうがないと割り切れていた部分がある。この体だからこそ、相手の懐に入り込めると大きい相手とやって感じたので、チャレンジすることが大事です」

 短所は考え方次第で長所になる。実体験を伴って伝えたアドバイスに高校生も深く頷いた。

忘れがちだけど、大切な「楽しむこと」の意味

「落ち込むことがあんまりない」と自認する性格。メンタルの作り方も長谷川らしく伝えた。

――怪我や今回のコロナのように、サッカーできない場合は、どうモチベーションを保ちますか?

「今回のように自分の体が元気な時に、みんなとサッカーができない状況はつらいし、もどかしいと思うけど、自分は家でたくさんトレーニングをして、この期間が終わった時に自分がどれだけ成長するかを楽しみにしながらやっていました。今回も、普段は試合が続くのでできない負荷をかけたトレーニングをやってパワーアップして、練習が始まった時のことを考えてトレーニングに励んでいました。やっぱり、自分のできることが増えるのはうれしいので。今までもそういう経験あったから、楽しんでできていました」

――夢や目標を叶えるために継続することはありますか?
 
「練習をすることはもちろんだけど、自分の中では『楽しむこと』を一番大事にしています。今回、みんなは大会がなくなってしまい、自分は五輪という目標が目の前からなくなってしまったけど、そもそも毎日の練習が楽しかったり、修正することをみんなで話し合ったりして、どんどんクリアして成長することが楽しくてやっている。そういう意味では夢を追いかけたり、目標を達成したりするためには楽しむことが大事。努力、練習することは大事だけど、そのために楽しむことが必要かなと思っています」

 どんな状況でも「楽しむこと」の大切さ。当たり前のようでいて忘れがちなことをまっすぐな言葉で届けた。

 他にも憧れの選手についてはアンドレス・イニエスタ(神戸)を挙げ、パス、ドリブル、シュートどれもが一級品であることに触れた一方で「自分はその選手のいいところを全部集めたような選手になりたいです。ドリブルに特化した選手のドリブルを吸収したいし、パスに特化した選手のパスを吸収したい、すべてにおいてトップを目指しています」と貪欲な成長の意欲を明かした。また、座右の銘について問われると、具体的なものはないとしながら、中村俊輔(横浜FC)の著書に書かれていたという「誰よりも練習すること、それが自信につながる」という言葉を紹介。「それは本当にその通りと自分も思います」と明かした。

 等身大の言葉で、自然体のまま高校生と向き合った1時間。授業を終え、参加者を代表して1人の高校生が挨拶した。「部活動が行われていない今、サッカーをプレーする時間より考える時間の方が多くなり、不安や悩みが多くありましたが、この授業で長谷川選手からアドバイスをもらい、とても勉強になりました。今だからできるトレーニングなどをしっかりして、部活動再開後に良いスタートを切れるように頑張っていきたいです」。長谷川の言葉に救われ、前向きになれた様子だった。

 笑顔で聞いていた長谷川も「明日へのエール」として高校生にメッセージを贈った。「自分は考えてサッカーをやることで、さらにサッカーを楽しめるようになりました。考えすぎて、空回りしてすることもあるけど、考えてやったプレーが結果につながると本当に楽しいので、これからもっと味わってほしい。今後、サッカーを続ける人、続けない人も高校時代の部活、サッカーで得た経験は生きてくる」と言った後で「今を全力で楽しんで、頑張ってください」と長谷川らしい言葉で締めくくった。

 授業終了後に取材に応じた長谷川。これまで高校生とは触れ合う機会は多くなかったといい、授業について「なかなか話すことができない世代と話せて楽しい時間になりました。自分の高校生時代の話をして『なるほど』『タメになった』と言ってもらえてうれしかったです」と振り返った。今日を楽しみ、成長を求め、明日を前向きに生きること。現役のなでしこジャパンが画面を通じて届けたメッセージは、高校生の背中を押すエールになったはずだ。

■オンラインエール授業 「インハイ.tv」と全国高体連がインターハイ全30競技の部活生に向けた「明日へのエールプロジェクト」の一環。アスリート、指導者らが高校生の「いまとこれから」をオンラインで話し合う。今後はサッカー・仲川輝人、ハンドボール・宮崎大輔、元テニス・杉山愛さん、元バレーボール・山本隆弘さん、元体操・塚原直也さんらも登場する。授業は「インハイ.tv」で全国生配信され、誰でも視聴できる。(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)