「一体、何考えているんだか」そんな風に私が呆れていたのは月曜日、マドリッドの弟分ヘタフェのケネディとデイベルソンが6月末で終わるレンタル契約を延長せず、クラブもそれぞれチェルシーとパルメイラスに対し、買い取りオプションを行使しないことにした…
「一体、何考えているんだか」そんな風に私が呆れていたのは月曜日、マドリッドの弟分ヘタフェのケネディとデイベルソンが6月末で終わるレンタル契約を延長せず、クラブもそれぞれチェルシーとパルメイラスに対し、買い取りオプションを行使しないことにしたため、もう今季の試合に出ずにチームを離れるという記事をマルカ(スポーツ紙)で見つけた時のことでした。いやあ、先日、契約満了となるアントゥネスが退団すると聞いた時には33歳のベテランですし、長期負傷をして以来、あまり出番に恵まれず、オリベイラとククレジャ、ニヨムもいて不自由していない左SBの選手だけに仕方ないかなという感じはしたんですけどね。
それがアタッカーの2人なると、何せ新型コロナウィルス流行によるparon(パロン/リーガの中断期間)が終わった後、再開してからの3試合を2分1敗と、3月までの快進撃をどこかに置き忘れてしまったようなチームですからね。ボルダラス監督は「結果を出していないのはウチだけじゃない。例えば、レアル・ソシエダなんて、再開後の勝ち点は私たちより1少ないのに、parece que el equipo que no se está adaptando es el Getafe/パレセ・ケ・エル・エキポ・ケ・ノー・セ・エスタ・アダプタンドー・エス・エル・ヘタフェ(ヘタフェが適応できていないように見られる)」と反論していましたが、いや、中断前、4位だったチームは1分け2敗で勝ち点1というだけですし、あまり低次元な比較はしないでほしいかと。
実際、デイベルソンは初戦のグラナダ戦に先発、ケネディは3試合に途中出場しただけなんですが、2カ月間のconfinaiento(コンフィナミエントー/外出禁止令)による自宅トレの後、約1カ月間の厳しいプレシーズン練習をこなしながら、あとはもういいよというのもねえ。だってえ、幸いヘタフェはまだ5位のままとはいえ、クラブ史上初のCL出場という夢を叶えるための4位まで、いつの間にか、勝ち点差4がついているんですよ。
この先、リーガではまだレアル・ソシエダとの直接対決、そして兄貴分のレアル・マドリー、アトレティコとの難しい対戦が控えている上、先週UEFAの会合で再開予定が出たELでも1stレグが延期された16強対決、インテル戦が中立地のドイツで8月5or6日に一発勝負で開催されるとか。それがわかっていながら、戦力を削っているなんて、とうとうこの月曜にはスペイン全土で解除されたEstado de Alarma/エスタードー・デ・アラルマ(警戒事態)中、唯一、ERTE(不況時の雇用調整法)や選手の給料カットをしないクラブであることをアンヘル・トーレス会長は自慢していたものの、財政の内実は結構、厳しかった?
いやまあ、ここで前節のヘタフェの試合を伝えておくことにすると、土曜にコリセウム・アルフォンソ・ペレスでエイバルと戦った彼らは前半30分、ククレジャのクロスをアンヘルがエリア内で繋ぎ、エテボがゴール前から撃ち込んで先制。そこまでは良かったんですが、なかなか追加点が取れずにいるうち、ハーフタイム直前にはFKから、エンリッチ、チャルレスと連続ヘッドで同点に追いつかれてしまうのですから、まったく中断前の堅守はどこへ行ってしまったのやら。
幸い、後半40分に再び、FKからビガスのヘッドがGKダビド・ソリアを破った際にはVAR(ビデオ審判)がヘルプ、オフサイドを取ってくれたため、試合は1-1の引き分けで終了。先制しながら、逆転負けを喰らったグラナダ戦の二の舞は避けられましたが、その次のエスパニョール戦でも前半早い時間から、相手が退場者を出して10人になったのを利用できず、勝利のゴールを誰も挙げてくれませんでしたからね。前述の2人に加え、エテボ、カバコも負傷欠場となるヘタフェの31節は火曜にバジャドリーとのアウェイ戦。降格圏まで勝ち点差7と程々に余裕のあるチーム相手ですが、結構しぶといのは土曜の遅い時間、ワンダ・メトロポリターノで戦った兄貴分が証明してくれています。
そう、100日以上ぶりにホームに戻ったアトレティコでしたが、連戦3試合目ともあって、シメオネ監督はローテーションを実施。皆勤常連のコケ、サウール、ロディ、そしてジエゴ・コスタとサビッチをベンチスタートにしていましたが、おかげでキックオフ前に余裕があったんですかね。ビセンテ・カルデロン時代から、fondo sur/フォンド・スール(南側ゴール裏席)側のコーナーには長年のファンであるマルガリータさんが毎試合、1996年のdoblete(ドブレテ/リーガとコパ・デル・レイの2冠のこと)達成時、セットプレーのキッカーとして数々のゴールに貢献したヒーロー、パンティッチを称えるための花束を置いているんですが、今は観客を入れられないため、もちろん彼女もワンダに来ることはできず。
そこでキャプテンのコケが代わりに花束を置く役を仰せつかったんですが、携帯でマルガリータさんに指示を受けていたのはともかく、まさか「これで運が向いて勝てますように。Y metemos un gol del balon parado/イ・メテモス・ウン・ゴル・デル・バロン・バラードー(セットプレーでゴールを入れるよ)」という彼の言葉がまさか、現実になるとは!
ただ、ベンチには4月に亡くなったアンティッチ監督の、スタンドにもペイロ、ジョーンズ、カポンら、この中断期間中に他界したアトレティコOBの名を記したユニフォームを飾り、コロナ禍の犠牲となった大勢のソシオ(協賛会員)のユニも各人のシートに用意。イムノ(クラブ歌)のバイオリン生演奏を聴きながら、選手たちが黙祷を捧げた後、ゴールが入るまではかなり辛抱の時間があって、開始3分にはワルドの強烈シュートをGKオブラクがジャンピングセーブ、29分にもマテウスにフリーで撃たれ、枠スレスレを外れていくという、ヒヤリとさせられるシーンも。ジョアン・フェリックスのシュートも決まらず、前半が無得点で終わった時、「だからオサスナ戦で5点も取らないで、節約しておけば良かったのよ」と呟いていたのはきっと、私だけではなかったかと。
後半になると、リーガ再開後の新機軸、5人交代枠をいたく気にいったようなシメオネ監督は11分から、早速フレッシュな戦力を投入。まずはエレーラとレマルをコケとカラスコに、続いてジョアンとモラタをコレアとコスタに、そして最後にマルコス・ジョレンテをビトロへとチェンジします。すると35分、トマスの弾丸シュートはマシップに代わり、先発GKに抜擢されたカロにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されたものの、それでゲットしたCKをコケがまさに自身が花束を置いたコーナーから蹴ったところ…カロがパンチングしたボールをビトロが1人、悠々とヘッド。オリバスがヘッドでクリアしたものの、その位置がすでにゴール内だったため、値千金の1点がスコアボードに挙がることに。
いやあ、これにはどうやら「Estábamos celebrando una parada/エスタバモス・セレブランドー・ウナ・パラダ(ウチはセーブを祝っていて)、うっかりマークが甘くなっていた」(セルヒオ監督)と、バジャドリーサイドの油断のおかげもあったようですけどね。少なくともTVで見る分には、局が挿入するイメージ音声の応援歌がずっと聞こえていて、大体、こういうじれったい展開はアトレティコの十八番ですし、何より今は「El mejor plan es ganar/エル・メホール・プラン・エス・ガナール(一番のプランは勝つこと)。そこから全てのビジョンが楽観的に、ポジティブになってくる」(シメオネ監督)のは本当ですからね。
再開後ホーム初戦を得意の1-0で勝利して、前節にようやく戻ったCL出場圏でもセビージャを抜いて3位に上昇してくれたため(月曜の31節でセビージャはビジャレアルと引分けて、また3位に)、ファンはかなり満足しているんじゃないかと思いますが、さて。アトレティコの次戦は火曜午後7時30分(日本時間翌午前2時30分)からレバンテとのアウェイ戦。あまり得意な相手ではありませんが、パコ・ロペス監督のチームもシュタット・デ・バレンシアの改修工事のため、今季の残りは100キロ離れたアリカンテのラ・ヌシア(スペイン南部)にあるエスタディオ・オリンピコ・カミーロ・カロでプレー。前節はエスパニョールに勝って、勝ち点38と目標の1部残留にもかなり近づいてきたため、ゆったり構えてくれているとありがたいかと。ちなみに月曜には現地入りしたアトレティコではリハビリ中のベルサイコとフェリペ以外、負傷欠場も出場停止者もいません。
え、先週末、ランクアップを果たしたのはお隣さんも同じだろうって?その通りで、日曜にレアル・ソシエダに勝ったマドリーもアトレティコ同様、勝ち点でバルサに並び、直接対決の結果で首位に立ったんですが、実はその結果を招くことになった原因となる前節のセビージャvsバルサ戦のスコアレスドローの後から、彼らにはVAR判定でひいきされているんじゃないかという疑惑が投げかけられることに。
そのキッカケとなったのは、お馴染みのピケのお騒がせ発言で、いやまあ、当人もマスコミが深読みすることを知っていて、「Viendo las dos últimas jornadas será complicado que el Real Madrid pierda puntos/ビエンドー・ラス・ドス・ウルティマス・ホルナーダス・セラ・コンプリカードー・ケ・エル・レアル・マドリッド・ピエルダ・プントス(直近の2節を見ると、レアル・マドリーが勝ち点を取りこぼすのは難しいだろう)」とコメントしたんだと思うんですけどね。もちろん、ベルデベバス(バラハス空港の近く)にあるエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノで行われたエイバル戦、バレンシア戦どちらにも、ホームチームに有利なオフサイドのVAR判定もあったりはしたんですが、いやあ。
その件に関しては、「ピッチ外で別の方法で戦うこともできるが、nosotros no lo hacemos porque somos el Madrid y sabemos de nuestra fuerza/ノソトロス・ノー・ロ・アセモス・ポルケ・ソモス・エル・マドリッド・イ・サベモス・デ・ヌエストラ・フエルサ(私たちはやらない。何故なら、ウチはマドリーで、自分たちの実力を知っているから)」とジダン監督が前日記者会見で一蹴していたのが、ファン的にはスカッとしましたが、やっぱり起きたんですよ。レアル・アレナでの一戦でもVARの有利判定が。
それはアザールをベンチ置き、久々にスタメンに入ったものの、やはりハメス・ロドリゲスは光らず、唯一、レアル・ソシエダの選手たちにパニックを巻き起こしていたビニシウスも決定力不足で、どちらのチームも無得点のまま始まった後半のことでした。5分にはゴール右前からまた、シュートが外れたんですが、審判は後ろからディエゴ・ジョレンテがビニシウスを倒したとして、PKを宣告してくれたから、ビックリしたの何のって。私的にもちょっと軽めな感じはしましたが、ここはセルヒオ・ラモスが決めて、マドリーが先制点をゲットします。
おまけに22分にはオジャルサバルと交代で出て来たヤヌザイがエリア外から放ったシュートが決まったんですが、GKクルトワの視界を遮る位置にいたミケル・メリーノがオフサイドだったとして、得点にならず。うーん、バレンシア戦でもマキシ・ゴメスがバランの前にいたため、ロドリゴのゴールが認められなかったんですけどね。こちらは「Entre el portero y yo había mucha distancia, tiene tiempo para ver la trayectoria del balón/エントレ・エル・ポルテーロ・イ・ジョ・アビア・ムーチャ・ディスタンシア、ティエネ・ティエンポ・パラ・ベル・ラ・トラジェクトリア・デル・バロン(GKとボクの間にはかなり距離があったから、ボールの軌道を見る時間はあったはず)」(メリーノ)状態でしたからね。
クルトワ自身もその後、ベルギー代表の同僚ヤヌザイに「邪魔された」と言っていたようですが、まあそれは彼の立場なら、そう主張するしかないので、ほっておくことにして。その3分後、バルベルデのクロスをゴール前でベンゼマがトラップしたのが肩だったか、腕だったかも議論の的になりました。何せ、ボールをコントロールした彼はいい位置まで移動して、チームの2点目を決めてしまいましたからね。VAR判定でハンドではないとされたんですが、それがなければ、38分にはミリーノが名誉挽回の1点を返していただけに、レアル・ソシエダもヘタフェと同じく、再開後の獲得勝ち点2となっていたはずですが…。
いや、だからってリーガ中断中に足首の長期負傷が治りながら、プレシーズン練習で左太ももを痛め、やっぱり今季絶望となってしまった元マドリーのイジャラメンディが試合後、ロッカールームへのトンネルで審判に「Sois un desastre/ソイス・ウン・デサストレ(あんたたちは災厄だ)」と悪態をつき、どうせ出られないため、結果は同じですが、出場停止処分2試合を喰らっていいってことにはなりませんけどね。ジダン監督も「皆が審判のことばかり話して、ウチがピッチで何もしなかったように思わるのは迷惑だ」と言っていたように、マドリーが3連勝したのは選手たちの頑張りに負うところも多かったかと。
実際、バルサだって、セビージャ戦で削られまくって怒ったメッシがディエゴ・カルロスをド突いてもイエローカードすら出なかったり、カンプ・ノウで弟分レガネスが彼を倒して献上したペナルティだって、怪しいと言えなくもないですしね。要は審判の解釈次第なんですが、いよいよマドリーが首位を守る立場となって挑む次戦は水曜午後10時(日本時間翌午前5時)からのマジョルカ戦。ええ、月曜にブタルケにグラナダを迎えたレガネスが後半、アサレが受けたペナルティで先制するチャンスを得たにも関わらず、前半カリージョのケガで急遽、途中出場したチーム唯一のゴールの持ち主、オスカルが筋肉痛でハーフタイムに交代。PKを蹴ったゲレーロがGKルイ・シウバに止められてしまい、結局0-0で勝ち点1しか稼げませんでしたしね。
ここはマジョルカ1部残留に尽力している久保建英選手には悪いんですが、自身のため、そしてセビージャからノリート緊急補強でアラベスに6-0と大勝、勢いに乗って16位に上がったセルタに代わり、17位の残留境界線となったエイバルと勝ち点差4ありながら、まだ決して諦めていない弟分のためにもマドリーには勝ってもらいたいところ。懸念はカセミロが累積警告で出場停止になること、レアル・ソシエダ戦で太ももに打撲を受けたラモスが回復するかどうかわからないこと、再開後2試合に先発したアザールが日曜に出番がなかっただけでなく、翌日も練習に参加しなかったことと、幾つかあるんですが、火曜にアスレティックと対戦するバルサ共々、目が離せないのは間違いありません。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。