来年の東京パラリンピックのハンドサイクル競技で3大会連続金メダルがかかっている元F1ドライバーのアレックス・ザナルディ(53)が瀕死(ひんし)の重傷を負った。19日に母国イタリアのトスカーナ州の公道で行われたハンドサイクルの大会でトラック…

 来年の東京パラリンピックのハンドサイクル競技で3大会連続金メダルがかかっている元F1ドライバーのアレックス・ザナルディ(53)が瀕死(ひんし)の重傷を負った。19日に母国イタリアのトスカーナ州の公道で行われたハンドサイクルの大会でトラックに激突し、頭部などに深刻なダメージを負った。

 

昨年11月に富士スピードウェイを訪れたアレックス・ザナルディ(BMW提供)

 

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 地元メディアなどによると、すぐに近くの大学病院に搬送され、2時間半に及ぶ緊急手術を受けたが、術後は人工的に昏睡(こんすい)状態にさせており、病院側は22日に「集中治療を変化なく続けている。心肺機能や代謝の状態は変わらないが、脳神経学的には深刻なまま」と最新の容体を説明した。

 事故現場はカーブのある下り坂でコントロールを失い、反対車線を走行していたトラックとぶつかったという。コントロールを失った原因については明らかになっていない。

 ザナルディの運命を変える出来事が起きたのは今から19年前。2001年のことだ。自動車レースに参戦中に大クラッシュに巻き込まれ、両脚を切断してしまったのだ。

 1991年にF1にデビューしたが、思うように芽が出なかったことから米CART(現インディカー)に転向。97、98年には2年連続でシリーズ王者に輝いた。その後、F1に返り咲き、再びCARTの世界に戻ったものの、2001年に独ラウジッツリンクのオーバルコースで行われたシリーズ戦で他車と激突する大事故に遭遇。一命こそ取り留めるも両脚を膝の上から切断した。

 一時は再起不能とまでささやかれた。が、そこから懸命のリハビリで奮起。事故からわずか2年後の03年に欧州ツーリングカーレースに手元だけで運転できる特別仕様車で参戦した。世界ツーリングカー選手権にもフル参戦するようになり、09年までの5シーズンで通算4勝を挙げた。

 

ザナルディはハンドサイクルで富士スピードウェイのコースを周回(BMW提供)

 

 自動車レースと平行して挑んでいたのがハンドサイクルだ。12年のロンドン・パラリンピックではタイムトライアルとロードレースの2種目で金メダルを獲得し、続く16年のリオデジャネイロ大会でもタイムトライアルで金メダルを射止めた。次の東京大会への出場も目指していたという。

 昨年11月には東京五輪とパラリンピックの自転車競技の会場に決まっている富士スピードウェイ(静岡)に姿を見せた。日本のスーパーGTとドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)の交流レースにBMWのドライバーとしてゲスト出場。大会前には下見を兼ねてハンドサイクルでサーキットコースを周回した。

 1999年にザナルディが在籍したF1の名門チーム、ウィリアムズも「アレックスはいつまでもファイターだ。強く生きてくれ、頑張れ」と応援メッセージを寄せた。F1やCARTで取材した時は、気難しいところはまったくなく、フランクに質問に答えてくれた。東京パラリンピックでの雄姿を見たいところではあるが、それよりもまずは命だけは助かってほしい。不死身の男の不死身ぶりを信じている。

[文・写真/中日スポーツ・鶴田真也]

トーチュウF1エクスプレス(http://f1express.cnc.ne.jp/)

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

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