香川真司(サラゴサ)、岡崎慎司(ウエスカ)、柴崎岳(デポルティーボ・ラ・コルーニャ)。日本代表の3人を擁するクラブは、それぞれがリーガ・エスパニョーラ2部で昇格、残留をかけた攻防のさなかにいる。クラブにとっても、選手にとっても、まさに危急…
香川真司(サラゴサ)、岡崎慎司(ウエスカ)、柴崎岳(デポルティーボ・ラ・コルーニャ)。日本代表の3人を擁するクラブは、それぞれがリーガ・エスパニョーラ2部で昇格、残留をかけた攻防のさなかにいる。クラブにとっても、選手にとっても、まさに危急存亡の秋(とき)と言えるだろう。昇格、残留で大きく命運は分かれるのだ。
コロナ禍で中断後、リーガ2部はすでに3節を消化。戦力が限られるなかでの週2試合ペースのやりくりは、すでに各所で”パンク”を起こしつつある。しかし”あり得ない状況”を生き抜くしかない。
3チームの展望とは--。
3人の中では1部昇格に一番近い位置にいるサラゴサの香川真司
香川を擁するサラゴサは自動昇格圏内の2位につけるものの、再開後は1勝2敗と波の激しい戦いを演じている。
第32節は、本拠地ラ・ロマレダでアルコルコンに1-3で敗戦。懸案の守備が耐え切れず、破綻した。第33節、敵地ルーゴ戦では自慢の攻撃力が炸裂し、1-3と快勝。ビクトール・フェルナンデス監督は「ボールプレー」を信条とするが、うまくはまっていた。
しかし、直近の第34節は、同じく自動昇格を争うアルメリアと本拠地で対戦し、0-2と完敗。攻撃的スタイルを持つチーム同士の対戦で、膝を屈した。
防御線を簡単に破られるシーンが目立っており、3試合で6失点。ディフェンスの脆さは昇格に向けて不安要素だ。
エースの香川も、及第点は与えられていない。
アルコルコン戦、香川は中盤に落ち、ゲームを組み立て、前線にも絡んだが、効率的ではなかった。ルーゴ戦は決定力を見せ、見事なゴールを決めている。ゴール前の技量はやはり2部では秀逸、賞賛を浴びた。しかし、アルメリア戦は再び沈黙。スペイン大手スポーツ紙『アス』からは、0点(0~3の4段階)という厳しい評価を受けている。
チーム同様、香川も正念場だ。
岡崎が所属するウエスカは再開後、マラガ、ミランデス、アルバセテに1勝1分け1敗。格下を相手に勝ち点を伸ばせず、4位に停滞。昇格争いでは苦戦を強いられている(3~6位が昇格プレーオフに回る)。
ウエスカはここまで、核になっている選手たちの存在で、堅実に勝ち点を積み重ねてきた。しかし週2試合の過密日程で、その戦力維持が難しい。たとえば、中盤で攻守を司るミケル・リコは35歳という高齢もあって、連戦ではパフォーマンスが落ちるのだ。
再開後、まだゴールはない岡崎だが、戦力として欠かせない。マークを外し、ボールを呼び込む技術は、世界トップレベル。直近の第34節、アルバセテ戦も、その一端を見せた。2-0とリードされる状況で、エリア内で相手の背後を取って右からのクロスボールを呼び込み、胸でコントロールし、抜け出したところを引っ張られてPKを勝ち取っている。残り10分、千金に値するプレーだった。
これで1点を返したあと、アディショナルタイムにジョルディ・ムブラの右サイドの突破からラファ・ミルのゴールで同点にした。
昇格に向けては、この試合で同点弾を生み出したミル、ムブラの2人の新鋭が伏兵になるか。23歳のミルはバレンシア下部組織出身の大型ストライカーで、ノッティンガム・フォレストから移籍し、すでに6得点。21歳のムブラはバルサ下部組織出身のエリートで、センスは際立つ。
もちろん、チーム最多8得点の岡崎が昇格のキーマンであることは変わらない。
柴崎が中盤に陣取るデポルは、フェルナンド・バスケス監督就任以来、連戦連勝で一時は最下位から中位まで順位を上げた。しかし中断前から調子を落とし、2分け2敗で中断へ。再開後もスポルティング・ヒホン、オビエド、ラージョ・バジェカーノに3引き分けで、勝ち点を積み上げることができない。
降格圏の19位からは脱出したが、6月22日現在で17位と”危険水域”にある(15位から6チームが勝ち点差3でひしめき合う。また、20位のオビエドは1試合未消化)。
柴崎は3-4-1-2システムのダブルボランチの一角で、攻守のかじを取っている。その技量は明らかに非凡だ。チームとしてイニシアチブを取った時は、存在感が光る。シーズン途中まで”戦犯”のひとりに数えられたことを考えれば、鮮やかな巻き返しだ。
しかし、チームの調子が下降線に入って以来、彼自身のプレーも停滞気味と言える。
直近の第34節ラージョ戦では、バスケス監督が柴崎をローテーションで休ませ、前節から6人を入れ替えて4バックでスタートしたが、これは裏目に出た。攻守にちぐはぐで、一時は2点リードされてしまう。後半はシステムを戻し、交代で入れたエムレ・チョラク、ウーゴ・バジェホ、クリスティアン・サントスが活躍し、どうにか引き分けた。
デポルの軸はDFペルー・ノラスコアイン、MF柴崎、FWサビン・メリーノの3人だが、ラージョ戦ではノラスコアインが右足首を捻挫。最低でも2試合は欠場することになりそうだ。システムの根幹を担っていただけに、守備が崩壊しなければいいが……。
リーガ2部は残り8試合。週2試合のペースが続き、怒涛のフィナーレとなる。