無観客で始まった今季NPB、DeNAではオンライン応援企画「オンラインハマスタ」開催 約3か月遅れ、かつ無観客試合という形でスタートした今季NPB。球場にファンの姿がない、応援歌が鳴り響かない開幕3連戦では、12球団がそれぞれ工夫を凝らした…

無観客で始まった今季NPB、DeNAではオンライン応援企画「オンラインハマスタ」開催

 約3か月遅れ、かつ無観客試合という形でスタートした今季NPB。球場にファンの姿がない、応援歌が鳴り響かない開幕3連戦では、12球団がそれぞれ工夫を凝らした応援“演出”を行い、開幕の雰囲気を盛り上げた。

 本拠地・横浜スタジアムに広島を迎えたDeNAは、3連戦で「おうちで交流!OB 解説つき! オンラインハマスタ Supported by 日本生命」を開催。オンライン会議アプリ「Zoom」を利用して、数多くのファンが自宅からハマスタへ大きなエールを届けた。

 開幕日の19日には、ゲストOB解説者として鈴木尚典氏(現BC神奈川フューチャードリームス監督)と荒波翔氏(同アドバイザー兼コーチ)が参加。テレビ中継の副音声のように、画面上で共有される試合映像を見ながら、OBならではのオリジナル方法の詰まった解説を届けると同時に、参加したファンから直接質問を受け付けるコーナーも。さらには「初めて食べる」(鈴木氏)という球場グルメを試食し、ハマスタ名物の「ベイカラ」や「ベイ餃子」などを食レポする貴重なシーンも見られた。

 参加費(税込1000円)を支払って参加したファンは、それぞれ自宅で応援グッズを持ち、球団特製ビールやおつまみを手にしながら、球場気分を高めて参加。応援歌を歌ったり、家族揃っての大声援を送ったり、新しい形での応援を満喫している様子だった。

 今回の「オンラインハマスタ」で最大の目玉となったのは、このオンラインイベントの様子が試合前や試合中に横浜スタジアムのメインビジョンに映し出されたことだろう。試合開始前に球団歌「勇者の遺伝子」を歌う場面や試合中のイニング間に、ランダムに選ばれた参加者はオンライン上から球場のメインビジョンへ“移動”。初戦では開幕投手を務めた今永昇太投手や、新主将の佐野恵太内野手らに向け、「頑張ってください!」「応援してます!」というファンの熱い声援が、そのまま届けられた。

「オンラインハマスタ」では、Zoomのチャット機能も存分に利用。参加者は試合展開やプレーに関するフリートークを楽しんだり、鈴木氏や荒波氏に積極的に質問をしたり、試合映像を見るだけの受け身の観戦・応援ではなく、積極的に関わりながら双方向のやりとりを楽しんだ。

海外からの参加者も… ファンが球場に戻った後も活用できるリモート応援

 球場では、事前にファンから募集した約5000枚の応援パネルが内野席に掲出されたり、右翼席に広げられた「I☆YOKOHAMA」の文字をファンから寄せられた約1万1000枚の写真からなるモザイクアートで制作したり、約1000件の声援動画をオンエアしたり。ファンと球場の距離を縮め、繋げる様々な工夫がなされていた。

 初めての試みとあって、序盤に音声が繋がりづらいトラブルがあったり、途中でミュートが解除されていることに気が付かないファンの会話が混じったり、今後に向けての改善ポイントはあった。だが、海外に滞在中のファンが参加できたり、小さな子どもがいるファンはストレスフリーで楽しめたり、これからの未来に向けて“新しい応援のカタチ”として持つポテンシャルの高さは際立っていた。

 OB解説者として参加した鈴木氏は「いつもと違う方法で試合を味わえて楽しかったです。また違う企画があれば、ぜひ参加したいです」と、オンライン上ではあるがファンと交流しながらの解説を楽しんだ様子。荒波氏も「僕自身がとても楽しかったので、ファンの皆さまもきっと楽しんでいただけたのではないかと思います」と手応えを語っている。

 球場でオンラインによるファンの声援を受け取ったラミレス監督は「球団もファンのために、少しでも我々とみんなが一つになれるようにサポートしてくれている」と評価。同時に「これまで球場の応援が相手チームにとって脅威となっていたが、今年は残念ながらそれがない。一日も早くファンが球場に戻ってくることを心待ちにしている」と球場が再びファンの熱気で包まれる日を楽しみにした。

 打球音やアンパイアのコール、ベンチからの掛け声など試合の“生音”が響くファンのいない球場で、メインビジョンにオンラインで盛り上がるファンの姿が映し出される光景は、慣れるまで多少の時間を要するかもしれない。だが、球場に観客が戻ってきた後も、地方や海外などに住むため応援に駆けつけられないファンが参加できる応援のカタチとして、選べるオプションが加わったと言えそうだ。このコロナ禍を機に、参加者が双方向で楽しめるオンライン応援やリモート応援が珍しくはない時代がやってくるのかもしれない。(佐藤直子 / Naoko Sato)