「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第4回目は特別編として、指導者同士の授業を開催。講師は、2011年女子サッカーW杯で、監督として「なでしこジャパン」を優勝に導き、現在は人材育成として教育現場でも活躍する佐々木則夫さん。全国教職員・サッカー指導者約15人の、今のリアルな悩みや質問に答えた。

世界でも長く戦える選手は創意工夫ができる人

まずは佐々木さんの挨拶から授業はスタート。「まだまだ授業や部活の再開に予断がない状況。対話をメインにざっくばらんに、何か一助になることがあれば。みなさんと楽しくやっていきたい」と柔和な表情で語りかけた。

「練習の許可は出ているが、対外試合の許可は出ていない。監督歴はまだ短い」と話す女性教員に対し、「大学生の時、実は中学・高校の教員になりたいと思っていた」とコメント。「経験が浅い頃はとにかくトライ&エラーだった。ロジェ・ルメール(元フランス代表監督)の『学びをやめたら指導者ではない』という言葉に感銘を受けた。大切なことは『学びと洞察力』だと思う。さまざまな状況や試合の変化があった時に、そこに対応できる立ち振る舞いができるか、洞察力を磨いていくことが必要」と答えた。

東日本大震災直後での、思うように練習できない環境や選手間のコンディションの変化に対応しながら、「なでしこジャパン」を世界一に導いた際のエピソードを織り交ぜながら、「チームでの一体感を作るにはどうしたらいいか?」という教員の質問には、「(今の状況は)大変ですよね。こんなことは日本や、世界でも今まで経験したことがないこと」と共感。「ただ、こんな時だからこそ創意工夫できる。あんなこともこんなこともやったという思い出作りにもできる。世界でも長く戦える選手は、主体性を持ち創意工夫ができる人」と前向きな姿勢を促した。

今こそ身体を気遣ったトレーニングに移行してほしい

後半は、今の状況や教員の本音も垣間みえるリアルな内容に。

「指導者の私自身もモチベーションが落ちている」という教員に対しては、「その気持ちはよく分かる。今は、サッカーが勉強できる間ができたと思ってみては。先生はやはり、モチベーションを高めてほしい。先生が下がると、生徒のモチベーションも下がるから」と返答。教員も勇気づけられたようだった。

「未経験の顧問教員にもできることはあるのか」という悩みには、「人生としては経験があると捉えることもできる」と一言。「学ぶという観点では知らない分、視点を広げられるメリットがある。周りにも学生時代に剣道をやっていて、今は素晴らしいサッカー指導者になっている人を2人知っている。絶対いい指導者になれるから、経験のないことを恐れず頑張ってください」と優しいエールを贈った。

「女子選手の身体や精神面での管理をどうしたらいいか?」という質問には、「なでしこジャパンでもありました。勝たなきゃいけない予選で負けた。苦しみや悲しみというのはスポーツにはあります」と強く共感。「大切なのは、乗り越えるより受け止めること。まずは、チームで受け止めるということを始めてほしい。今はオフ明けと同じ状況。夏ではなく、冬の大会を見越した気持ちの切り替え方もある。あとは体重の上下と筋力の低下。体重が増えていたら、ひざ周りの負担を考えてあげてほしい。未来に関わることなので、ぜひ気遣っていただきたい」と選手の将来にも心配りをしていた。

最後は、この一期一会の記録として、佐々木さんを中心に約15人の教員と記念撮影。「総合的な力で世界一を目指す」ことをイメージし、全員が人差し指で「No.1」のポーズで締めくくった。全員の笑顔と拍手は、配信が始まった時より、明るく穏やかに見えた。

授業後の「アフターセッション」で教員同士の本音を語り合う

佐々木さんとのオンラインエール授業後に、教員・サッカー指導者同士が意見を交換する「アフターセッション」を開催。授業でのエールを受けて、今のリアルな想いを自由に語り合った。

まず、授業後の感想としては「活動再開できているところや、まだできていないところ、いろいろな地域の話が聞けてよかった」との意見が多く聞かれた。授業では発言ができなかった教員にスポットが当たると、「なかなかサッカーをやろうという女の子が少ない。部員募集のコツは?」というリアルな悩みも。「サッカー好きだけを探すのは難しいかもしれない。自分の学校でないとできない何かがあって、そこを育てようとするところから始めるのがいいと思う」といった教員らしいアドバイスや、「学びを止めない、情熱を持って接していくことが必ず(口コミで)広がっていく」という熱い意見も聞かれた。

また「オンライン授業にかける準備が大変で時間が取れない」といった今を象徴するような声も。教員も自粛期間を経たことから、モチベーションが下がっているという話題には、「サッカーの勉強は深まらなかったかもしれないが、代わりに本を読む時間や、家族と触れ合う時間が増えた。一人の人間としての幅を広げられたのでは」という前向きなコメントも聞かれた。

佐々木さんの授業での言葉を引用し「乗り越えるではなく受け入れる、それが最終的には乗り越えることにつながる。学びの姿勢という意味では、今は本当に成長のチャンスだと思う」と、あらためて声にするサッカー指導者としての決意が聞かれた場面も印象的だった。

今後もさまざまな競技によって配信される「オンラインエール授業」。

生徒だけでなく指導者もまた、今だからこその悩みを抱える人と想いを共有しながら、今のやるせなさ、不安感が少しでも前向きになり、モチベーションの向上につながることを切に願ってやまない。