「これってズルだよね、やっぱり」そんな風に私が怒っていたのは金曜日、セビージャのノリトがセルタに特例移籍、この日曜のアラベス戦から出場できると知った時のことでした。いやあ、元凶は移籍市場クローズ中でも登録選手が長期負傷となった場合、リーガのチームからなら戦力補強していいというスペインのサッカー協会規則にあるんですけどね。でもセルタで今季絶望となったのはGKセルヒオだというのに、リーガ再開からの2試合で無得点、1分け1敗で終わり、1部残留を果たすために必要なゴールを補うため、アタッカーを獲るとはこれ如何に。

まあ、このケースは冬にエン・ネシリも加わって、攻撃陣にゆとりがあるため、セビージャが文句を言うことはなし。おまけにノリトも4年前、マンチェスター・シティに引き抜かれるまでプレーしていた古巣に戻れるとあって、すんなり話がまとまったようですが、同じ特例移籍でもマドリッドの弟分、レガネスなどは2月に契約解除金をポンと積まれ、デンベレの離脱を補いたいバルサになけなしのFW、ブライトワイテもさらわれてしまいましたからね。それだけで悲劇もいいところだったにも関わらず、残留を争う直接ライバルまでがそんな姑息な手を使うって、もしやアギーレ監督のチームも誰かが大ケガしていれば良かったとでも?

うーん、私がどうも愚痴っぽくなってしまうのが、リーガ再開2試合目、火曜に彼らがカンプ・ノウで戦ったバルサ戦でも決定力不足が致命的で、だってえ、前半10分、13分とエン・ネシリの代わりとして、1月にレガネスに戻って来たゲレーロが絶好機で失敗。最初のシュートはレングレに防がれてしまい、2本目もゴールポストに当たって、千載一隅の先制チャンスをモノにできなかったんですよ。となれば、後は推して知るべしで、41分にはフィルポ・ジュニオールから受けたアンス・ファティをDF陣が止められず、1点を奪われるわ、後半もグリーズマンのゴールこそ、セメドのオフサイドで難を逃れたものの、23分にはドリブルで密集陣形を抜けようとしたメッシを最後はジョナタン・シウバが倒してペナルティ。

この金曜の降格争い天王山、マジョルカ戦でも終盤に今季4本目となる技ありのFKで同点ゴールを挙げ、今や正真正銘、チーム唯一の得点源と化したオスカルもその日は出場停止でいなかったとなれば、とても2点など返せる訳もなかったかと。これでバジャドリー戦に続いての連敗となったため、とうとうレガネスは最下位になってしまったんですが…いえ、それにはお隣さんの責任もあるんですよ。というのも同日、早い時間帯でエスパニョールをコリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎えたもう1つの弟分、ヘタフェも再開後の初勝利を掴むことができず。それも前半16分にはダミアンの顔を叩いたベルナルドが一発退場となり、残り時間全てを数的優勢で戦いながら、1点すら取れずにスコアレスドローで終わるんですから、困ったもんじゃないですか。

うーん、後半には途中出場したアンヘルに2度、得点のチャンスがあったんですけどね。どちらもGKディエゴ・ロペスに弾かれてしまうとはツイていない。一方でこの冬、2部の弟分ラージョから、エスパニョールに移籍したエンバルバの1対1のシュートを防ぎ、少なくとも勝ち点1をチームがゲットするのに貢献したGKダビド・ソリアも「Si queremos estar arriba hay que puntuar de tres en tres/シー・ケレモス・エスタル・アリーバ・アイ・ケ・プントゥアル・デ・トレス・エントレス(上位にいたいなら、勝ち点3ずつ貯めていかないといけない)」と言っていましたが、苦境のお隣さんを助けるというのはともかく、クラブ史上初のCL出場権を狙うヘタフェとしては痛い足踏みだったかと。

そんな彼らの次戦は土曜日、再びコリセウムに今度は先日、兄貴分のレアル・マドリーのエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ初陣で3-1と敗れた後、2試合目のアスレティックとのダービーで2-2と引分け。まだ降格圏とは勝ち点3しか離れていないため、残留争いの渦中にあると言っていいエイバルを迎え、またしてもレガネスの援護射撃に挑むんですが、水曜にクラブはベテラン左SBのアントゥネスが契約終了に伴い、6月いっぱいでチームを離れることを発表。イプルアの試合で審判への抗議を聞き咎められ、退場させられたため、今回はベンチに座ることができないメンディリバル監督のチームにもオレジャナ、エスカランテといった、まだシーズン延長分の契約更改をしていない選手がいますし、6月末日が近づくにつれ、落ち着かなくなるクラブも出てきそうですよ。

そして水曜、28節のアスレティック戦に続き、また今季は14試合中3勝しかしていないエル・サダルでのアウェイ戦だったため、あまり期待しないで私が見ていたアトレティコはどうだったかというと。いやあ、それがCL出場権を争っている弟分の躓きを見事に利用するとは結構、えげつない。ええ、この日はジエゴ・コスタにジョアン・フェリックスとコレアをヘルプにつけたのが成功、前半29分にはロディのラストパスにサウールは方向を違え、オサスナのDFに弾かれてしまったものの、こぼれ球に詰めたジョアンが先制点を挙げてくれたから、有難かったの何のって。

おまけにサン・マメスでの試合には累積警告で出られなかった21才は後半にも、いえ、その前にゴール前で彼からもらった必殺パスに自身の反応が追いつかず、追加点のチャンスをフイにしていたコレアも反省したんですかね。11分にはコスタへ絶妙なスルーパスを送ったところ、ブラジル人FWが同じポルトガル語を話す後輩に太っ腹なところを披露。ゴール前でジョアンにパスして、アトレティコで初となるdoblete(ドブレテ/1試合2得点のこと)をプレゼントしていましたが、もうその時点で勝利を確信したアトレティコファンは多かったんじゃないかと。

でもそれだけじゃなかったんですよ。どうやら彼らもアウェイでの鬱憤がかなり溜まっていたようで、その後に入ったマルコス・ジョレンテが34分にはFKから、敵選手3人をエリア内でかわして3点目のゴールをゲット。どうやらその当人、アンフィールドでのCL16強対決リバプール戦2ndレグで攻撃本能に目覚めたか、このモラタと並んでの2トップの位置が妙に馴染んでしまったようで、その3分後にはアシストもしているんですから、驚かせてくれるじゃないですか。

いやまあ、モラタのゴールはオフサイドで最初は認められず、VAR(ビデオ審判)介入があったため、しばらくスコアボードに挙がるのに時間がかかったんですけどね。もう4点リードともなれば、手を緩めてもいいアトレティコだったんですが、最後まで敵陣でプレスをかけ続けた彼らは、43分にもカラスコがジョレンテのラストパスから5点目って…いやはや、お隣さんならともかく、彼らのmanita(マニータ/5得点のこと)なんて、記憶にないと思ったら、2018年3月のELロコモティフ・モスクワ戦以来ですって(最終結果0-5)。

ただ、そんな赤飯でも焚いて喜びたい時にも「3点目以降は他の試合のためにとっておけば良かったのに」とケチをつけてしまうのがアトレティコファンで、翌朝、私がいつも新聞を買うキオスクのオジサンもそうだったんですけどね。もしや、この一戦で出場182試合中100回目という無失点記録をリーガ史上最短で達成して、「Ojalá marquemos goles... prefiero marcar uno más que no encajar/オハラ・モルケモス・ゴーレス…プレフィエロ・マルカル・ウノ・マス・ケ・ノー・エンカハール(ゴールが決まりますように。失点しないより、相手より1点多く取る方がいい)」と言っていたGKオブラクも同じ気持ちだった?

だってえ、再開初戦は4位のレアル・ソシエダと1-1で引き分け、アトレティコとの距離が開くのを防いでくれたオサスナのロベルト・トーレスこそ、お世辞も混じえてか、「Con la pegada que tienen ni perdonan/コン・ラ・ペガダ・ケ・ティエネン・ニ・ペルドナン(あれだけの決定力を持っているから、チャンスを見逃してくれない)」と話していましたが、基本的、今季のアトレティコはゴールが入りませんからね。それだけにアスレティック戦でのコスタを始め、「Cuando un jugador tiene talento/クアンドー・ウン・フガドール・ティエネ・タレントー(選手にタレントがあって)、敵エリア近くでいい位置をキープしていたら、敵はコントロールするのが難しいもの」とシメオネ監督にお褒めの言葉をもらっていたジョアンにしろ、新参アタッカーのジョレンテにしろ、モラタもカラスコも得点したのは当人たちに自信もつきますし、何よりリーガのラストスパートに向けて、心強いんじゃないかと。

そんな彼らは翌日、レアル・ソシエダがアラベスに負けたため、引き分けのヘタフェも抜いて、待望の4位の座に上がったんですが、次は土曜午後10時(日本時間翌午前5時)から、いよいよ3カ月ぶりとなるワンダ・メトロポリターノでバジャドリー戦。さすがに5月の練習再開から、ずっとマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に閉じこもっていたチームも金曜には久々にスタジアムでセッションを行い、ガラガラのスタンドの音響効果を確認していましたが、金曜に3位セビージャがバルサと0-0で引き分け、勝ち点差が3に開いたとはいえ、定位置まであと一息になったのは選手たちにとって、励みになってくれるものと思います。

そして木曜に再び、29節も最終カードでバレンシアと対決したレアル・マドリーはどうだったかというと。いやあ、こちらは今回も首位バルサとの差が5ポイントに開いて、断崖絶壁での戦いだったんですが、前日にイスコがハムストリングを痛め、全治3週間となってしまい、ルーカス・バスケスも再開直前に負傷して欠場。そこへ前日、かつて自身の教え子だったボランチのジョレンテが大活躍したのを見たせいか、ジダン監督もバルベルデを前線の3人目に配置という意表を突くことをしてきましたが、前半はバレンシア優勢でゲームが進みます。ええ、ロドリゴのシュートをGKクルトワがかろうじて触れ、ゴールポスト直撃で逃げて間もなく、20分にはソレルのスルーパスを決められてしまったから、さあ大変!

でも大丈夫、この時、ロドリゴは後ろから飛び出してきたものの、オフサイドの位置にいたマキシ・ゴメスがバランの邪魔をしたことから、VARで確認した主審がノーゴールを宣告。いえ、バレンシアサイドは、「理解できない決定だ。Es una situación en la que Maxi no interviene/エス・ウナ・シトゥアシオン・エン・ラ・ケ・マキシ・ノー・インテルビエネ(マキシは干渉していない状況だったのに)」(セラデス監督)とまったく納得していなかったんですが、これで命拾いしたおかげもあって、後半にはマドリー自慢の攻撃力が火を噴くことに。

まずは15分、モドリッチのスルーパスをアザールが繋ぐとベンゼマが決めて先制。27分には、あまりポジションチェンジが功を奏したとは言えないバルベルデからアセンシオに代わったと思いきや、その30秒には初タッチでチーム2点目のゴールを挙げているって、いやあ、彼がプレーするのは昨年7月、アメリカでの親善試合アーセナル戦でヒザの靭帯を断裂して以来のことなんですけどね。まるで絵に描いたような復活劇を見せてくれたとなれば、これが無観客のRMカスティージャのホームではなく、新型コロナウィルス禍前のサンティアゴ・ベルナベウであったなら、どれだけスタンドも盛り上がったことかと私など、遠い目をしてしまいましたが、まあそれはそれ。

まさにジダン監督も「marcar en el primer balón que toca demuestra su calidad/マルカル・エン・エル・プリメール・バロン・ケ・トカ・デムエストラ・ス・カリダッド(最初のボールタッチでゴールを入れるのは当人の質の高さを表している)」と言っていた通りなんですが、まったく才能のある選手が豊富にいるチームは羨ましい。何せ、アセンシオは35分にもベンゼマにクロスを送った上、そのフィニッシュも右脚でボールを浮かせて地面に落とさず、左足で正確にシュートという技ありものでしたからね。これではエイバル戦の翌日には背筋痛を起こしてジム調整、控えスタートの2試合目には改装工事中のベルナベウのベンチから、アルフレド・ディ・ステファノのスタンドに運んできたシートで体を伸ばして、ラストまで優雅に観戦していたベイルがこの先も当てにならなくても全然、影響ない?

3-0で試合を終え、ライバルと同じ2連勝としたマドリーは日曜午後10時、レアル・アレナでの再開後、初アウェイ戦に挑みますが、いやもうこの毎日、試合があると、だんだん訳がわからなくなってきますよね。相手は1分け1敗とヘタフェ同様、CL出場権獲得の争いで躓いているんですが、金曜から30節では一足早く、グラナダに勝って、3連勝を達成したビジャレアルが急上昇。3チーム同勝ち点でのEL出場権争いになっているって、3位以下はまだまだ大乱戦が続きそうですが、ここ2試合、勝ち点差5を2に戻してきたマドリーも今度は首位バルサと並べるチャンスとあって、より一層の意気込みを示してくれるはずですよ。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ

南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。