リーガ・エスパニョーラ第30節。6月19日。18位のマジョルカは本拠地ソン・モイスに、最下位20位のレガネスを迎えている。降格回避を懸けた直接対決。注目の結果は、マジョルカが先制しながら終盤に追いつかれ、1-1と痛み分けに終わった。レ…
リーガ・エスパニョーラ第30節。6月19日。18位のマジョルカは本拠地ソン・モイスに、最下位20位のレガネスを迎えている。降格回避を懸けた直接対決。注目の結果は、マジョルカが先制しながら終盤に追いつかれ、1-1と痛み分けに終わった。
レガネス戦に先発、81分までプレーした久保建英(マジョルカ)
マジョルカの久保建英は、チームの攻め手が少なすぎたこともあって、華々しいプレーを見せることができていない。連戦による疲労の蓄積もあるのか。いつもなら抜け切るところで、違いを見せられなかった。
もっとも、スペイン大手スポーツ紙『アス』が星ふたつ(0-3の4段階評価)をつけているように、その存在は欠かせなかった。チームを救うセービングを見せた守護神マノーロ・レイナ、FKを放り込んだ主将サルバ・セビージャと並びチームトップ。『エル・ムンド・デポルティーボ』紙も星ふたつをつけた。
では、リアルな久保の評価とは――。”世界に冠たるレアル・マドリードの選手”としての試練がそこにあった。
試合は序盤から、レガネスがペースを握っている。5-2-1-2のような布陣がはまり、ボールを回す時間が長く、相手ゴールに近い位置でプレーしていた。しかし一瞬のスキを突かれ、ディフェンスがクチョ・エルナンデスを後ろから倒し、FKを与えてしまう。壁が不用意に跳んだ下を抜かれ、サルバ・セビージャに決められてしまった。
先制したマジョルカだが、陣を引いて守るだけ。ボールはつながらず、最低に近い出来だった。レガネスの決定力不足に助けられた。
右サイドアタッカーで先発した久保は序盤、明らかに体が重そうだった。しかし前半20分過ぎから左サイドにポジションを変え、次第に試合にフィット。ドリブルで仕掛け、ファウルを誘い、後半頭までにイエローカード2枚を誘発し、相手の勢いを巧妙に削いだ。
久保が撹乱することよって、マジョルカに息をつかせていた。後半は、相手ボールを力強く奪い、カウンターを発動。オープンな展開になるなか、それを2度、3度と繰り返し、脅威を与えていた。直接、ゴールには結びつかなかったものの、そのあたりの貢献が現地でも評価されたのだろう。
しかし、81分に久保を下げると、マジョルカは相手の勢いに飲まれていった。
レガネスは最下位だが、過去4シーズンは1部。2年前まで2部B(実質3部)だったマジョルカ以上の戦力を有する(シーズン途中にはモロッコ代表ユセフ・エンネシリをセビージャへ、デンマーク代表マルティン・ブライスワイトをバルセロナに売却している)。
マジョルカ戦に交代で入ったロケ・メサは1部で十分なキャリアがあるファンタジスタ。同じくブライアン・ヒルはセビージャで将来を嘱望されるドリブラーで、マジョルカを追いつめた。
そして86分だった。レガネスのエース、オスカル・ロドリゲスがゴールから約20メートル、やや左のFKをセットし、右足を振り抜いた。ボールは無回転で高速スライダーのような軌道を描いて、ゴール右上隅に突き刺さった。
レガネスの窮地を救ったオスカルは21歳で、レアル・マドリードから期限付き移籍している。マドリードの下部組織出身選手らしく、戦術、技術、体力、メンタルとコンプリートで弱点が少ない。FKひとつをとってもパワーを感じさせる。
トップ下が本職だが、インサイドハーフや左サイドなども担当。レガネスは2年目で成熟が見られ、チーム最多の9得点を記録している。
「レアル・ソシエダがマルティン・ウーデゴールの代わりに狙っているのは、久保ではなく、彼だ」とも言われている。
レアル・マドリードの幹部は、「チームに勝利をもたらす生来的王者しか求めていない」と言うが、これは”はったり”ではない。どんな状況でもあきらめず、勝利に向かう。不屈な選手のみが、白いユニフォームに袖を通せる。
その点でオスカルは株を上げたはずだ。
同じくレアル・マドリードに籍を置く久保は、決して悪い出来ではなかった。よくない状況ながらも、うまく戦っていた。しかし常勝軍団の一員になるには、そのレベルに甘んじてはいられない。
6月24日、マジョルカはレアル・マドリードの本拠地ディ・ステファノ・スタジアムに乗り込む。現有戦力で、真っ向から対峙するのは厳しいだろう。しかし、勝ち点を拾う活路はどこかにあるはずだ。
久保にとって、「レアル・マドリードの選手としての力量を示す」、またとない舞台となる。