■スポアナ アスリートレポート■ ■TBSの上村彩子(かみむら・さえこ)アナウンサーが現場で取材した大会でのエピソードや舞台裏、インタビューしたアスリートの魅力や意外な一面などを伝えてくれるこの連載。今回は7月4日に再開予定のサッカーJ…

■スポアナ アスリートレポート■



 

■TBSの上村彩子(かみむら・さえこ)アナウンサーが現場で取材した大会でのエピソードや舞台裏、インタビューしたアスリートの魅力や意外な一面などを伝えてくれるこの連載。今回は7月4日に再開予定のサッカーJ1から、今季注目の川崎フロンターレMF田中碧選手を紹介。昨年大ブレイクを果たし、東京五輪でも活躍が期待される21歳の若きボランチの素顔に迫ります。



川崎・田中碧選手を直撃インタビューした上村彩子アナウンサー

 いよいよ待ちに待ったJリーグ再開です!

 コロナ禍が本格化する直前にTBSのサッカー番組『スーパーサッカー』の取材で、川崎フロンターレの田中碧(あお)選手にインタビューしました。

 昨シーズンのベストヤングプレーヤー賞に選ばれた田中選手は、今シーズン大注目の選手のひとり。『スーパーサッカー』でご一緒しているサッカー解説者の福田正博さんも絶賛している逸材です。「今後、川崎を引っ張っていく選手になる」と福田さんも太鼓判を押しています。

 そんな田中選手の「碧」という名前の由来は、生まれた時の空がとても綺麗な青色だったから。元々は違う名前だったそうですが、サックスブルーの川崎でも、サムライブルーの日本代表でも活躍する田中選手にぴったりの素敵な名前ですよね。

 今回の取材では、田中選手の躍動の秘訣ともいえる「サッカーノート」を見せてもらいました。なんと、この日がメディア初公開ということで、ワクワクしながらページをめくりました。このサッカーノート、高校生の頃からつけているもので、周囲からのアドバイスや試合で悔しかったことなど記録しているそうです。

 ノートには「ミスをしてもパスを受け続ける」「ボランチが不安定だとチームも不安定に」「研究されても止められないプレーヤーに」などなど、箇条書きで簡潔・整然と書かれていて、頭の中で言葉を整理したうえで書いているんだな、という印象を受けました。

 サッカーノートの言葉の中には、チームの先輩であり、元日本代表の中村憲剛選手からのアドバイスもたくさん書かれていました。


J1川崎MFの田中碧選手。東京五輪世代としても注目される

 photo by Getty Images

「研究されても止められないプレーヤーに」という言葉は昨年、中村選手からのアドバイス。昨季ブレイクしたといわれる田中選手ですが、シーズン途中で中村選手の目には煮詰まっているように見えた時期もあったそうです。中村選手は「お前はこの程度でいいのか、もっと先へいく選手だろ。チームの方向性や流れを自分で決められる選手になれ」ということを伝えたかった、とインタビューで話していました。

 アドバイスに込められた話を聞くと、田中選手への期待の大きさを改めて感じました。と、同時に同じチームで出場機会を争うこともある後輩に、丁寧にアドバイスする中村選手の懐の深さにも感動しました。田中選手は中村選手について、技術だけでなく「人間性を心から尊敬している」と大先輩に少しでも近づこうとしています。

 田中選手の今の目標は、「攻守両面に顔を出し、試合を決定づけられる選手になる」こと。今でこそ中盤の選手ですが、子どもの頃はバリバリのフォワードで、どんどん点を取っていくタイプだったとのこと。これから得点に積極的に関わる姿にも期待したいですね。

 そうした目標を目指すなかで参考にしているプレーヤーとして挙げたのは、バルセロナのフレンキー・デ・ヨング選手。同じミッドフィルダーで、ボールを中盤から前へ運ぶ力があり、攻守で存在感を発揮しているところが「自分の理想とする選手像と重なる」とのこと。

 インタビューで意外だったことは、田中選手が「ミドルシュートはどちらかと言えば苦手」と言っていたことです。昨年10月に行なわれたU-22ブラジル代表とU-22日本代表の親善試合で、見事に決めたミドルシュートがとても印象に残っていて、てっきり得意なプレーなのだと思っていました。田中選手自身は、今後はボランチエリアからペナルティエリアに飛び出してゴールに絡んでいくプレーも見てほしいと、プレーの幅を広げることを目指していました。

 フロンターレでのプレーはもちろん、五輪世代としての活躍も楽しみです。残念ながら今年のU-23アジア選手権で日本はグループリーグ敗退。田中選手は「主導権が握れるはずの試合で負けたのは完全な力不足」と悔しさをにじませていましたが、それでも「自分たちが強くないことをこの段階で認識できたので、残りの時間で一人ひとりが、またチームが課題を克服していけば優勝は狙える」と前を向いていました。

 五輪に向けては、「自国開催ということもあり、やるからにはメダルを獲りたいです。でも、そこがゴールではない」と冷静に話し、さらにその先を見据えています。

 将来的には、欧州チャンピオンズリーグで活躍できる選手を目指しているという田中選手。サッカー以外の話題では、髪がサラサラなので「ワックスとかつけないんですか?」と聞いたところ、「実は…ワックスをつけたことなくて、付け方がわからないんですよ。谷口(彰悟)さんに聞こうかな」と照れながら話す姿は、控えめな今どきの男子でした。

「インタビュー苦手なんですよ〜」というシャイな一面もある田中選手ですが、ピッチでは積極的な攻撃参加やボール奪取が持ち味。筋力トレーニングにもかなり力を入れているようで体が大きくなってきています。昨シーズン以上の活躍が今から本当に楽しみです。

 無観客試合からのスタートでサポーターがスタジアムに足を運べないのは残念ですが、テレビの前から声援を送りましょう!『スーパーサッカー』でも、全力でサッカーを盛り上げて行きます!

■プロフィール 上村彩子(かみむら・さえこ)1992年10月4日 千葉県生まれ
【担当番組】TV『S☆1』土/24:30〜 日/24:00〜 『SUPER SOCCER』 日/24:50〜 『フラッシュニュース』金/21:00頃〜(変動あり)