写真提供=戸嶋ルミ

-Global Baseball Bizの記事一覧はこちら-

 2019年の春、一人の青年が海を渡り夢を叶えにやってきた。彼の名前は、劉源(りゅう・げん)。埼玉武蔵ヒートベアーズの新入団投手、中国人初のBCリーガーである。

(取材日は2019年6月下旬)

■北京生まれの野球少年

写真提供=戸嶋ルミ

 劉選手は、中国の北京出身。野球を始めたのは小学校1年生のときだった。最初は外野手と捕手からスタートし、6年生で内野(遊撃、三塁手)と中学校1年生で投手に転向した。

――野球を始めたきっかけは?

「子どもの頃からスポーツが好きで、中でも特にボール遊びが好きでした。そんな僕の様子を見て、両親が小学校の野球チームを探してきてくれたんです」

 中国の少年野球事情は日本の部活動とは少し違い、学校ごとの野球チームが存在している。劉選手も小学校から高校2年まで学校のチームに所属した。

――子どもの頃の憧れの選手はいましたか?

「中国ではあまり野球中継をやっていないので、小学生のときは野球選手と言えばイチロー選手と台湾の王建民(ワン・チェンミン)選手しか知らなかったです。中学生や高校生になってからはメジャーリーグの試合を観るようになって、中でもホルヘ・ポサダ選手やマリアノ・リベラ選手、黒田博樹選手が好きでした」

写真提供=戸嶋ルミ

 高校2年生までは中国の学校に通い、3年時からはカナダの学校へ留学した。現地のクラブチームであるOkotoks Dawgs Academyで1年間プレーをしたのち、アメリカのアリゾナ・クリスチャン大学へ進学。大学のチームで4年間プレーした。

――日本球界に挑戦したきっかけは?

「ジェフさんという方のおかげです。ジェフさんは台湾生まれのカナダ人で、野球の審判をしていた方です。中国の高校時代に知り合い、カナダ留学も勧めてくれました。ジェフさんが僕に『日本球界に挑戦するべきだ』と言ってくれて、BCリーグのトライアウトを受験することになりました」

 劉選手は2019年2月に行われたトライアウトに参加。四国アイランドリーグplus×ルートインBCL合同ドラフト会議にて、埼玉武蔵ヒートベアーズから第一指名を受けた。

――将来の目標があれば聞かせて下さい

「ルーキーイヤーの今年は、日本の野球をもっと勉強して、チームを勝たせるピッチングをしたいです。ステップアップしたらNPB球団にもチャレンジしたいですね。もちろん中国代表選手にもなりたいし、将来的にはMLBも目指したいです」

写真提供=戸嶋ルミ

「日本人の野球に対する情熱は素晴らしいです。声出しから違いますよね。こういう精神的なことから、技術や戦略もしっかり学んで、引退後は中国で指導者になりたいです。中国は人口が多く、野球チームも増えています。僕が子どもの頃に比べて、中国の野球人口は増えています。学校ごとのチームだけでは所属人数が多すぎて、学年ごとにもチームができているような状況です。日本のような少年野球クラブチームも増えています。もっと野球を普及させてマーケットを拡大させれば、中国の野球はこれからもっと強くなると思います。可能性は十分あります」

■劉選手が選ぶ2019年のオールスター選手は?

 取材日がNPBオールスターゲームの投票期間だったこともあり、劉選手にセ・パ両チームの出場選手を選んでもらうことに。

セ・リーグ
投手
 先発投手:菅野智之(読売ジャイアンツ)

 中継投手:P.ジョンソン(阪神タイガース)
 抑え投手:山﨑康晃(横浜DeNAベイスターズ)

捕手
 小林誠司(読売ジャイアンツ)

内野手
 一塁手:D.ビシエド(中日ドラゴンズ)
 二塁手:山田哲人(東京ヤクルトスワローズ)
 三塁手:C.ビヤヌエバ(読売ジャイアンツ)
 遊撃手:坂本勇人(読売ジャイアンツ)

外野手
 筒香嘉智(横浜DeNAベイスターズ)
 福留孝介(阪神タイガース)
 青木宣親(東京ヤクルトスワローズ)

パ・リーグ
投手
 先発投手:千賀滉大(福岡ソフトバンクホークス)
 中継投手:宮西尚生(北海道日本ハムファイターズ)
 抑え投手:松井裕樹(東北楽天ゴールデンイーグルス)

捕手
 嶋基宏(東北楽天ゴールデンイーグルス)

内野手
 一塁手:中田翔(北海道日本ハムファイターズ)
 二塁手:浅村栄斗(東北楽天ゴールデンイーグルス)
 三塁手:松田宣浩(福岡ソフトバンクホークス)
 遊撃手:今宮健太(福岡ソフトバンクホークス)

外野手
 柳田悠岐(福岡ソフトバンクホークス)
 秋山翔吾(埼玉西武ライオンズ)
 王柏融(北海道日本ハムファイターズ)

DH
 A.デスパイネ(福岡ソフトバンクホークス)

 中でも特に、巨人の菅野智之投手が一番の憧れだという。「いつもインターネットで動画を観て参考にしているし、何より2018年の成績が素晴らしいですよね。いつか対戦することが夢なんです」と目を輝かせて語った。

 これはひょっとしたらそう遠い話ではないかもしれない。というのも、劉選手は中国代表選手に選出される可能性があるという。もしかすれば2019年11月開催のプレミア12や、WBC、アジア大会などで対戦することもあり得るのだ。北京生まれの野球少年の夢の扉は、開かれたばかり。今後の成長に期待したい。

>選手プロフィール|埼玉武蔵ヒートベアーズ

文・写真:戸嶋ルミ
通訳:劉ハクシン(埼玉武蔵ヒートベアーズ)
取材協力:埼玉武蔵ヒートベアーズ