コロナ禍でようやく開幕を迎える2020年のプロ野球は、「前例のないシーズン」と言われている。果たして、当初の予定よ…

 コロナ禍でようやく開幕を迎える2020年のプロ野球は、「前例のないシーズン」と言われている。果たして、当初の予定より3カ月遅れた影響はどう出るのか。



今季ブレイクが期待される高卒4年目の今井達也

 ペナントレースが120試合に短縮されたなか、週に6試合と移動が続く過密日程をどのようにすれば勝ち抜けるのか。当初は「投高打低」になるのではと予想されたなか、開幕前の練習試合では「打高投低」の試合が多く、公式戦でもそうなるのか。ネット上では「ボールが飛びすぎるのでは?」という声も聞こえるが、本当だろうか……。

 前代未聞の事態のなかで迎える今季。実力伯仲のパ・リーグで3連覇を狙うのが西武だ。この偉業が成し遂げられれば、パ・リーグでは1992年から1994年にかけて同球団が達成して以来となる(西武は1990年から5連覇)。

 秋山翔吾(シンシナティ・レッズ)が抜けた「山賊打線」は、代わって1番に入る新外国人選手のコーリー・スパンジェンバーグが練習試合で打率5割(34打数17安打)を残して全選手のトップに立つなど、今季もリーグ随一の破壊力を誇る。

 長らくの課題とされてきたブルペン陣は、150km/h超の速球を投げ下ろすリード・ギャレットと、昨季ドラフトで獲得した社会人出身の宮川哲と浜屋将太を加えて厚みを増した。首脳陣がうまくやり繰りできれば、勝ちゲームを逃げ切る展開を多くつくれるだろう。

 3連覇を目指す上で最大のポイントは、やはり先発投手陣だ。今季は1週間に6試合の開催が続くため、力のあるスターターが6枚そろうチームは優位に進めやすくなる。

 昨季の西武はリーグ最低のチーム防御率4.35に沈んだなか、先発陣で規定投球回数に達した者がひとりもいなかった。今季どれだけ上積みをできるか、個々の成長が問われている。

 開幕から予想される先発ローテーションは、以下のとおりだ。

金:ザック・ニール/土:松本航/日:與座海人/火:高橋光成/水:今井達也/木:第6の男

 軸になるのは、球団の外国人投手では郭泰源以来、25年ぶりの開幕投手を任されるニールだ。来日1年目の昨季は12勝1敗、防御率2.87で”勝利の使者”になった。

 運の要素が強い勝ち星を前年ほど稼げるかは微妙だが、プラス材料もある。昨季はマウンドや登板間隔の違いなど、日米の環境の変化に適応するのに6月まで時間を要したものの、今季は最初から自分のペースで投げていける。

 開幕1週間前の6月12日、ロッテとの練習試合では5回6失点に終わったが、「満足できなかったのは結果だけ。登板を重ねるごとに、100%の出来に近づきつつあるのを実感しているよ」と話すなど、調整は順調に進んでいる模様だ。昨季のように安定して試合をつくり、いかに投球イニング数を積み上げていけるかが焦点になる。

 ニールにはある程度計算が立つ一方、3連覇の行方を大きく握るのが甲子園優勝投手コンビ、高卒6年目の高橋と同4年目の今井だ。

 ともに大きなスケールを誇るふたりのどちらが、将来のエースに近づくのか。今季の西武で最大の見どころのひとつだ。

 昨季、飛躍の1年にしたのが高橋だった。尊敬する菊池雄星(シアトル・マリナーズ)と自主トレを一緒に行ない、身体の使い方や投球メカニクスを見直して自身初の10勝を挙げた。

 ただ、190cm、105kgの巨漢投手は優れた馬力を誇るものの、投球フォームを固め切れておらず、昨季終盤は右ひじの炎症で悔しい戦線離脱となった。心身を精度よく操れるようになれば、昨季以上に飛躍できるだろう。

 発展途上にあるのは、今井も同様だ。昨季は7勝9敗、防御率4.32。プロ野球投手としては細身の身体をしなやかに使い、好調時は最速155km/hを記録するなど、球界トップレベルの速球を投げていた。

 しかし、投球フォームの再現性が十分でなく、試合中盤になると身体が横ぶりになり、シュート回転する悪癖が何度も顔をのぞかせた。

 今季のオープン戦ではメカニクスを模索している段階で、予定どおりに開幕していれば先発ローテーションに入ったかはわからない。だが、今井のよさは自分で試行錯誤できることであり、コロナ禍で試合が開催されなかった時間をうまく使い、投球フォームを探し求めた。

 開幕前には同学年の山本由伸(オリックス)のように左腕を使って上半身の開きを抑えようとしていたのが、6月10日の楽天戦では以前のダルビッシュ有(シカゴ・カブス)のごとく、左腕でうまく上体を導きながら体重移動をスムーズに行ない、150km/h超の速球を投げ込んだ。

 今井の課題は継続力だけに評価はまだ控えるが、大ブレイクを期待したくなるような打者への立ち向かい方だった。

 本格派の高橋、今井と少々タイプの異なる右腕が、大卒2年目の松本だ。ルーキーイヤーの昨季から先発ローテーションに入り、7勝4敗、防御率4.54とまずまずの成績を残した。

 しかし、大学時代からセットポジションになると球威、制球力ともに落ちるという課題がある。今季、この点をどう改善していけるか。

 左バッターの内角を鋭く突くカットボールや、打者の手もとで落とすスプリット、制球力の高い速球やカーブでストライクゾーンを幅広く使えるのが松本の魅力だ。6回を投げ切ればいいという気持ちで臨み、いかに腕を振っていけるかがポイントになる。

 楽しみな新星がアンダースローの與座だ。入団1年目の2018年に右ひじのトミー・ジョン手術(靭帯再建術)を受けた右腕は、育成契約になりながら今季開幕ローテーションに入るところまでのし上がってきた。

 速球は130km/h台だが、投手の真価はいかに打者のタイミングを外すかだと、與座のピッチングを見ていると感じさせられる。下から投げる独特の軌道を活かし、投球テンポに巧みな変化をつけながら打ちっとっていくサブマリンが先発ローテーションの一角に定着すれば、6連戦の戦い方は一気に幅が大きくなる。

 そして最後、第6の男は誰になるのか。

 FA宣言して残留した十亀剣、2018年に11勝を挙げた榎田大樹、昨季6勝6敗の本田圭佑、経験豊富な松坂大輔や内海哲也、新外国人のショーン・ノリンらが争っていく。必ずしも先発6枚を固定する必要はなく、調子のいい者を使っていく形になりそうだ。

 西武の先発陣は、2013年オフに涌井秀章(ロッテ→楽天)がFA権を行使して以降、岸孝之(楽天)や牧田和久(楽天)、野上亮磨(巨人)、メジャーに旅立った菊池など次々と主力が抜けたなか、今季の開幕ローテーションには楽しみな面々がそろっている。そのなかからエースの座に近づく者が出てきた時、26年ぶりの3連覇は一気に現実味を帯びてくる。