パ・リーグの球団として、史上初の4年連続日本一を目指すソフトバンクの開幕投手を務めるのは、プロ8年目の東浜巨だ。当初予…

 パ・リーグの球団として、史上初の4年連続日本一を目指すソフトバンクの開幕投手を務めるのは、プロ8年目の東浜巨だ。当初予定されていた3月20日の開幕戦もマウンドに立つはずだったが、新型コロナウイルスの影響によりシーズンスタートが延期。開幕投手もいったん白紙に戻ったが、工藤公康監督に「自主トレ期間中も気持ちの入り方が違うように見えた」と認められ、再び指名された。

 6月12日に広島との練習試合で先発した東浜だったが、初回、先頭打者の打球が左太ももを直撃。幸い大事には至らなかったが、予定よりも早い降板となった。だがその翌日、東浜はPayPayドームのグラウンドで元気に調整していた。練習後、自身初となる開幕投手への思いなど、たっぷり語ってくれた。



自身初の開幕投手を務めることになったソフトバンク東浜巨

── 足の状態が心配ですが?

「だいぶ痛いです(苦笑)。でも、打撲なので。筋肉への影響もないし、骨にも異常はありません。大丈夫だと思います」

── 予定よりは短いイニングになりましたが、打球を受けたあとも続投しました。

「当たった時も骨ではないとわかっていたので、我慢すれば投げられると思いました。大事をとって早めの降板になりましたが、いいボールが増えているのは間違いないと感じました。ただ、あともう少しの部分があるので、投げたかったですけどね……それでも(6月)6日の練習試合で75球を投げたし、スタミナは問題ないと思います」

── 開幕が刻一刻と迫っています。今の心境は?

「いつもどおりです。目の前の練習をしっかりやって、一つひとつ課題を消化しています。開幕戦はもちろん大事ですが、そこから先のほうがもっと重要になってくると思っているので、長いシーズンを見据えながらやっている感じですね」

── 今年は新型コロナウイルスによるさまざまな影響がありました。そのあたり例年との違いは?

「それは感じています。日本だけじゃなく、世界的にも厳しい状況のなか、それでも野球ができる。それって当たり前じゃないんだなとつくづく感じています。今シーズンは一生忘れられないシーズンになると思います。こんなイレギュラーなことは過去にないし、これからもないと思っていますし……当たり前にできていたことができず、不便な思いをしました。そのなかで自分はやっぱり野球が好きなんだなと、あらためて気づくこともありました」

── そんな激動のシーズンの開幕投手を務めます。あらためて感じることはありますか?

「去年は5月にチームを離れ、右ヒジの手術をしてシーズン中に戻ってくることができずに悔しい思いをしました。そういうことがありながらも、『おまえがしっかり投げなきゃダメなんだぞ』と監督や首脳陣に期待してもらって……意気に感じています。また、ここ2年間はリーグ優勝を逃している。自分がチームの力になって、一歩でも優勝に近づけるように頑張らないといけない」

── 開幕投手はどのようにして伝えられたのですか。

「2度目の紅白戦後にピッチングコーチの方と一緒に監督室に行き、その場で『開幕投手を頼む』と。それで『はい、頑張ります』と返事をしました」

── もともと3月20日の開幕戦でも大役が決まっていました。いったん白紙になりました。

「時間ができたことをプラスにとらえて、少しでもレベルを上げて準備していこうと思っていたので、白紙になったことについては何も思っていませんでした」

── 工藤監督は「東浜投手は一から体をつくり直すと、すばらしい集中力でトレーニングしていた」と絶賛していました。

「一からというよりも、冬の期間に積み上げてきたものがあるので、そこにどれだけ上乗せできるかを考えていました。12月から沖縄でコンドミニアムを借りて、何人かの選手と泊まり込みで練習しました。4年前から取り組んでいる練習法があって、それは野球の動きというよりは、人間として最適な動きをしっかりできるようにという考えに基づいたものなんです。自分のなかでようやく成果を感じ始めたところです。この4年間、肩やヒジを痛めて遠回りしたものもありますが、やっと野球の動きにつなげられてきたかなと思っています」

── 2017年に16勝を挙げて最多勝を獲得しましたが、あの頃よりも前進したという手応えがあるということでしょうか。

「あの時は無我夢中で、なぜ勝っているのかわからなかった。投げる形はあっても、自分自身の形がないというか、掴み切れていなかった。今は、まだ結果が出ていないので手応えがあるとは言えませんが、いい取り組みができているとは思います」

── 開幕戦の相手はロッテですが、何か特別な思いは?

「何も考えていません。相手よりも、まず今シーズン開幕することが大事。そのなかでベストな投球をすることを心がけたいです」

── 開幕戦の第1球を思い描いてマウンドに立つとかはないですか?

「全然考えていません(笑)。周りは考えているかもしれないですけど、いつもどおりマウンドに上がって、キャッチャーのサインを見るだけです」

── 開幕日の6月19日といえば、誕生日前日です。東浜投手にとって20代最後の日になります。

「そうですね……正直、感慨深い気持ちはないですね(笑)。だけど、すごいタイミングだなとは思います」

── 20代の10年間をあらためて振り返るといかがですか。

「あっという間でした。10代の頃より早かった。それだけ内容の濃い1日を過ごしていたんでしょうね。こんな刺激的な環境のなかで過ごさせてもらっているだけでもすごいこと。それはいつも感じています」

── 以前、早く30歳になりたいと言っていました。

「それは今も同じです。スポーツ選手なので、単純に歳はとりたくないですけど、年齢を重ねた分だけ知識も増えてきますし、いい年齢の重ね方をしたい。30代が終わった時も同じことが言えるように、有意義な時間を過ごしたいですね」

── プロ野球選手になった頃は「10安打完封が僕の持ち味」と話していました。投げるボールが強くなり、投手としてのレベルも格段に上がりましたが、その気持ちに変化はありますか。

「根本は変わらないです。点を取られないのが大事。それをここ数年はできていない。自分の成長も感じますが、点を取られないでチームの勝利に貢献することが僕の仕事。今年1年、それをやり通したいです」