21歳のニック・キリオス(オーストラリア)が、試合で無気力なプレーを見せ、さらにファンを侮辱したかどで、ATPから謹慎処分(出場停止処分)と2万5000ドルの罰金を受け、シーズンの残りの期間を棒に振ることになった。 テニス界で衝突が絶え…

 21歳のニック・キリオス(オーストラリア)が、試合で無気力なプレーを見せ、さらにファンを侮辱したかどで、ATPから謹慎処分(出場停止処分)と2万5000ドルの罰金を受け、シーズンの残りの期間を棒に振ることになった。

 テニス界で衝突が絶えない気まぐれなキリオスは、先週の上海マスターズ2回戦で予選勝者のミーシャ・ズベレフ(ドイツ)と対戦し、その試合での振る舞いについてATPから調査を受けた結果、『テニスの規範に反する行為』であるため罰せられるに至った。

 3-6 1-6で敗れたこの試合の間、キリオスは勝つための努力をほとんどせず、軽くサービスを入れたあと、相手のリターンを待たずにコート脇のベンチに向かうなどしていた。

 キリオスはこの試合後、スポーツマンらしからぬ行為、(観客への)暴言、全力を尽くして戦わなかったかどで、すでに1万6500ドルの罰金を科されていた。

 月曜日にATPは、キリオスに対して2万5000ドルの罰金のほか、2017年1月15日までの8週間にわたる出場停止処分を言いわたした、と発表した。1月15日は、2017年最初のグランドスラム大会である全豪オープンの1日前にあたる。

 しかしATPはまた、もしもキリオスが「スポーツ心理学者の指導下での治療・教育プラン、あるいはATPによって認められたそれに相当するプランに入って指導を受けることに同意するなら、出場停止期間は3ヵ月に軽減する」とも説明し、キリオスがこれに同意すれば、彼は11月7日に競技に戻れることになる。

 とはいえ、11月7日以降に通常の大会はない。唯一の大会は11月13日から20日まで、ロンドンで行われるATPファイナルだけだ。12位のキリオスは、この8人のトップ選手による大会に出場する権利を擁していないため、いずれにせよ彼は、ツアーに戻るには来年を待たなければならないことになる。

 キリオスは月曜日に声明文を発表し、上海での自分の振る舞いを謝罪した上で、2017年に戻ると言った。彼はATPが命じた治療プログラムに参加するか否かについて言述しなかった。

  「僕のシーズンがこのような形で終わろうとしていること、ATPファイナル出場権を追い続けるチャンスを持てなくなってしまったことを残念に思う」とキリオスは言った。「それは僕にとって重要なゴールだった。僕はATPの決断を理解し、尊重する。僕はこのオフとなる時間を、オフコートでもオンコートでも向上するために使うつもりだ。僕は心から申し訳なく思っており、2017年に戻ることを楽しみにしている」。

 キリオスの上海での脱戦は、東京の楽天ジャパンオープンで今季3つ目のタイトルを獲得したわずか数日後に起きた。

 試合中、キリオスは主審にプロらしからぬ振る舞いについて警告を受け、観客からはブーイングや野次を受けた。彼は観客からの非難の声に対し、カッとなった様子で「あなたはここに来てプレーしたいのか?」と叫び返していた。

 初戦勝利後、キリオスは記者会見で、疲労していること、週末の東京での優勝を味わう時間すら持てなかったことを打ち明けていたが、2回戦敗退後は、自分は観客に何も負うところはないから、彼らの反応など気にかけておらず、どうでもいいと言っていた。

 敗れたあと、キリオスはツイッターに謝罪の言葉を掲載している。「今日は多くの面で十分ではなかった。僕の本来の力はあのようなものではない。言い訳を続けることもできるがそんなものはない。申し訳ない。僕はまだ発展途上にいる」。

 月曜日にキリオスのウェブサイトに掲載された声明文では、さらなる悔恨の意を表した。

 「故障と戦い、夏の終わりには他のチャレンジに取り組んだだけに、今シーズンは長かった」とキリオス。「アジアでのサーキットは特にタフで、東京で優勝したあと大陸をわたっての旅で、僕の身体は肉体的にも精神的にも、ついに上海で力尽きた」。

 「これは言い訳ではない。上海、そして他の場所で見てくれていたファンたちに謝らなければならないことは重々わかっている……僕はもちろん、我々のスポーツの成功にはファンがどれほど重要なのかを承知している。個人的にも僕は、世界中を巡るツアーで、様々な町でファンと交流することが好きなんだ」。

 キリオスがATPと衝突したのは、これが初めてではない。昨年の彼はモントリオールでの試合の最中に、無礼な言葉でスタン・ワウリンカ(スイス)を侮辱し、1万2500ドルの罰金と、28日間の謹慎処分、そして続く6ヵ月の間にふたたび深刻な違反を犯したら、さらに2万5000ドルの罰金を科すことを言い渡されていた。その彼の保護観察期間は今年2月に終わっていた。

 キリオスは、ウィンブルドン、そして全米オープンでのパフォーマンス、また、オーストラリア五輪委員会役員との不和から五輪出場を辞退したこと、そして、彼にアドバイスを与えた引退した選手に怒って言い返したことなどで、非難を集めていた。(C)AP