「彼のリーダーシップは、”チャマルティンの人々”(レアル・マドリード関係者のこと。チャマルティンは昔、レアル・マドリード…

「彼のリーダーシップは、”チャマルティンの人々”(レアル・マドリード関係者のこと。チャマルティンは昔、レアル・マドリードの本拠地だったことから今も残る通称)の心を動かしただろう」

 スペイン大手スポーツ紙『アス』は、レアル・マドリードからレンタルされている久保建英(マジョルカ)のパフォーマンスに及第点を与えている。



リーガ再開初戦となるバルセロナ戦にフル出場した久保建英(マジョルカ)

 6月13日、コロナ禍による中断を経てのリーガの再開戦で、バルセロナを本拠地ソン・モイスに迎えたマジョルカは、0-4と完膚なきまでに敗れている。開始直後に失点を喫し、早々にチームプランが崩壊。決してトップフォームではないバルサを相手に、押し戻しかけると逆襲を食らって失点し、やがて膝を屈した。

 その厳しい一戦で、マジョルカの唯一の希望となったのが、久保だった。

 右アウトサイドにポジションを取った久保は、ボールを引き出し、ためを作り、プレーの渦を作り出していた。ボールを取られない。そんな自信がみなぎって、自然に味方からボールが集まった。

 そして前半21分だ。久保はダニ・ロドリゲスとのパス交換から、右サイドでボールを持ち上げていく。バルサのセンターバック、ロナウド・アラウホと対峙すると、ステップで右へ行くフェイントを入れ、巧妙に相手の右脇を開け、左足で鋭いシュートを放っている。コース、速さ、タイミングと質が高いシュートだったが、名手マルク・アンドレ・テア・シュテーゲンに弾かれてしまい、CKになった。

 同点弾にはならなかったものの、この反撃の後、マジョルカはペースを取り戻した。その点だけでも、久保のリーダーシップが伝わるだろう。

 27分には、右サイドで久保が相手1人を外し、エリア内で待つダニ・ロドリゲスの足元にクロスを通している。このシュートはブロックされたが、こぼれ球を拾った久保はエリア外から左足を一閃。これはテア・シュテーゲンにキャッチされたが、連続性、果断さが目立った。

 その後にも、ダニ・ロドリゲスがファウルを受けて取ったFKを、久保が左足で狙っている。(GKから見て)壁の脇から飛び出てくるような技巧的なシュートだった。テア・シュテーゲンのほぼ正面だったが、キャッチはできず、弾かせる一撃だった。

 特筆すべきは、キッカーを任されていた点だろう。チーム内で、誰にも有無を言わせないプレーを見せている。開幕当時、ボス的な立場にいたサルバ・セビージャを実力で引きずり下ろしたのだ。

 今やマジョルカは、”久保一党”と言えるだろう。

 後半も、久保がタイミングを見計らってインサイドに入れたパスは、もし通っていたら、絶好機になっていた。また、右サイドでためを作って、ダニ・ロドリゲスに出し、この折り返しをアンテ・ブディミルが左足で狙ったシーンも際どかった。右サイドを駆け上がるアレハンドロ・ポゾに出したパスも、何気ないが、質の高さを感じさせた。

 この日の評価として、『アス』紙は久保にマジョルカで最高点の2(0~3の4段階)をつけている。他のマジョルカの選手はいずれも1か0で、ひとり突出していた。久保は決定機を作っただけでなく、守備面でもジョルディ・アルバへのパスコースを最大限に遮断し、貢献していた。

 19歳になって初めてのゲームで、久保はあらためて日本人選手として未知の領域にいることを示したのだ。

 もっとも、久保の目指す頂はマジョルカのエースになることではない。レアル・マドリードでポジションをつかむことにあるだろう。

 その意味では、バルサの選手たちは、ビッグクラブとしての力の差を見せつけていた。特にリオネル・メッシは、たったひとつのプレーで局面を劇的に変えている。アルバとのコンビプレーは、もはや芸術品に近い。

 久保がレアル・マドリードで主力となるには、メッシに追随する超人的なプレーが求められる。

 たとえばバルサに先制点を決められた場面。久保はフレンキー・デ・ヨングに鋭いチェックをかけ、ボールを取りかけ、いい守備をした。しかし、取り切れなかったことで、結局、自陣で相手ボールにしてしまった。この後、左サイドでフリーになったアルバから絶好のクロスを打ち込まれ、アルトゥーロ・ビダルに体ごと飛び込むヘディングシュートを押し込まれたのだ。

 わずかなミス、もしくはミスとは言えないミスが、失点に結びつく。それが世界のトップだ。

 次節は6月16日。マジョルカはビジャレアルに乗り込む。暫定18位で、1部残留のためには負けられない一戦となる。

 久保は救世主になることでさらなる値打ちを示せるか?