日本高校野球連盟は、新型コロナウイルスの影響で中止になったセンバツに出場が決まっていた32校を8月、甲子園球場に招いて、各校1試合ずつ交流試合を行なうことを発表した。

 正直、今年は「ダメか……」と思っていただけに、この発表には驚いたし、うれしかった。今年のセンバツは、本当に楽しみにしていた。なにしろ、あれだけの逸材が一堂に会する機会などそうはないからだ。

 明石商のエース・中森俊介にスラッガー・来田涼斗。秋の神宮大会を制した中京大中京のエース・高橋宏斗。さらには高校通算47本塁打の花咲徳栄の井上朋也に、1年春から星稜の中心選手として活躍する内山壮真。昨年の甲子園でも活躍した履正社・小深田大地や智弁和歌山・細川凌平……。

 昨年の奥川恭伸(星稜→ヤクルト)のような、誰もが「目玉」と認めるような選手はいなくても、この先、野球界を代表する存在として活躍していそうな逸材がひしめいている──それが”2020年センバツ”の俯瞰図だった。

 だからこそ、センバツ中止が決定してからも「あの選手も見たい、この選手も見たかった……」と未練たらしく大会のガイドブックを眺めていたものだ。

 それが今回、各校1試合とはいえ、甲子園で彼らの雄姿を見ることができる。そこで、センバツで密かに注目しようとしていた「5人の逸材」をあらためて紹介したいと思う。



昨年秋の北海道大会を制した白樺学園のエース・片山楽生

 昨年の秋に見て、今年の春にどうしても見たかったのが白樺学園の片山楽生(らいく/3年/投手/178センチ81キロ/右投左打)だ。

 北海道大会を制し、明治神宮大会でも1勝を挙げるなど大健闘。その牽引役となったのがエースの片山だった。北海道大会から、いかにも投手らしい”粘っこい球質”が魅力だった。

“粘っこい球質”とは、普通は打者に近づくにつれてボールの回転数は落ち、スピードも減速するものだが、逆に加速しているように見えるボールである。よく「ホップするような……」と表現されるボールがあるが、これだ。

 スピードガンでは140キロ前後でも、向き合った打者が感じる球速は150キロ前後。打者はタイミングを計ってスイングするが、ベンチから見ていた感覚と違うために合わない。

 ストレートのスピード感をいっそう際立たせる変化球も、スライダーとチェンジアップが効果的。

 ひと冬越えて急成長する投手をこれまで何人も見てきたが、片山も間違いなくその系譜に連なると思っていた。

 当然、昨年秋に比べて打者のレベルは格段と上がっているに違いない。そんななかで片山がどんなピッチングをするのか楽しみでならない。

 打者なら東海大相模の西川僚祐(3年/外野手/186センチ95キロ/右投右打)だ。彼の実戦でのバッティングはもう10回くらい見ている。しかもホームランも3、4本見ていて、どれも打った瞬間それとわかる一発。昨年秋の関東大会での習志野(千葉)戦で放った場外アーチは、弾道を見失ったほどだ。

 パワーは間違いなく全国屈指。そのため、角度をつけて引っ張れば簡単にスタンドに放り込める。だが、そのスイングがクセになるとまずい。今でも外に逃げる変化球の見極めが甘く、打ってもヒットにならないボールを追いかけて打ち取られる場面を何度も見た。それにドアスイング傾向になると、木製バットになった時に必ず苦労する。

 おそらく、そのあたりは本人も気づいているはずだ。だからこそ、西川が逆方向を意識したバッティングをしているのか、確認したいのはその一点だ。そこが修正されていれば、ドラフトでの上位指名もあるのではないだろうか。

 このほか、昨年秋に見られず、この春にどうしても見たかった3人の投手がいる。日本航空石川の嘉手苅浩太(かてかる・こうた/3年/190センチ105キロ/右投右打)、天理の達孝太(たつ・こうた/2年/192センチ80キロ/右投右打)、鹿児島城西の八方悠介(やかた・ゆうすけ/3年/180センチ74キロ/右投右打)だ。

 嘉手苅は、昨年秋の石川大会決勝の星稜戦で炎上してしまった。高校生でこれだけのサイズの投手なら調子の波が激しいのは当たり前。好調時は150キロ近いストレートを投げ込むと聞いていたのだが、それだけでも魅力十分。

 また、投げない日は「4番・三塁手」として出場するという。「あれだけのサイズで、これだけ動ける高校生は少ない」と、地元の人から聞いていた。その「これだけ動ける」とは、どの程度なのか。そこをセンバツで見たかったのだ。

 天理の達は近畿チャンピオンとなり、昨年秋の神宮大会にも出場したのだが、ブルペンしか見ていない。そのブルペンでも素質のよさは十分感じることができた。マウンドの前から投げているんじゃないか……と思わせるほど捕手との距離が近く感じる。おそらくバッターも同じことを思っているのではないだろうか。それだけで立派な武器だ。

 達を初めて見たのは、近畿大会決勝の大阪桐蔭戦の映像だった。じつはこれが投手として初の公式戦だという。中村良二監督もずいぶん思い切ったことをするなぁ……と思っていたら、7回まで1失点の好投。さすがに8回は疲れが見え、追加点を奪われたが、そんな結果以上に驚いたのが、達の表情だ。大阪桐蔭相手にビビるどころか、「楽しくてしょうがない」といった感じで、嬉々として投げていた。

 このスケールの大きさは、大谷翔平(エンゼルス)、佐々木朗希(ロッテ)に通じるものがある。どこまで成長しているのか、楽しみで仕方ない。

 鹿児島城西の八方は、昨年の秋は見られなかったが、夏の県大会で一度見ている。古豪・玉龍高に打ち込まれ敗退したが、高めのボールゾーンに対し相手打者が思わず振ってしまうシーンを何度か見かけた。つまり、ベース付近でもボールの勢いが落ちていない証拠である。あの腕の振りは教えてもなかなか身につくものではない。

 当時はまだ、いいボールと悪いボールとの差にばらつきがあったが、いいボールがいく確率が上がれば、そうそう打ち込まれることはないはずだ。こういう投手が、全国の舞台で一気に注目を集めそうな気がしている。

 今回記述した選手以外にも「こんな選手がいたのか」と、我々を驚かせてくれる選手も出てくるだろう。いずれにしても、甲子園で思う存分、野球を楽しんでほしいと思う。