「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第3回目の講師は、女子バレーボール元日本代表で、現在は講師やスポーツ解説者としても活躍する大山加奈さん。全国高校バレー部のキャプ…

「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第3回目の講師は、女子バレーボール元日本代表で、現在は講師やスポーツ解説者としても活躍する大山加奈さん。全国高校バレー部のキャプテン(部の代表)や顧問の先生など約40名が集まり、今のリアルな悩みや質問に答えた。

「プレーだけじゃない」チームに貢献できる声の力

力強いスパイクと持ち前の笑顔で、現役時代「パワフルカナ」の愛称で親しまれた大山さん。そんな大山さんらしくまずはにこやかな挨拶からスタート。「(配信が)はじまる前からみなさんを見ていました。笑顔が見られてほっとしました」と一言。「今、どんな言葉をかければいいのか戸惑いましたが、みんなの本心を教えてくれるとうれしい。心を込めて話したい」と語りかけた。

画面の背景が学校である高校生や先生が多くいたことから、現状の学校生活の話題に。「学校はつい昨日から再開された。部活動はまだ全員でやっていなく、自主練を少しずつ。久しぶりのバレーボールでうれしい」との高校生のコメントを受けて、大山さんが高校3年生を振り返るエピソードも。日本一を目指していたにもかかわらず、東京予選で負けてしまい、キャプテンを辞めようかと思っていた際、同級生の荒木絵里香選手(女子バレーボール日本代表)に「いつまで泣いてんだ。キャプテンだからしっかりしろ」と言われ大喧嘩に。自分と同じく悔しい想いをしながらも、気持ちを切り替えあえて叱ってくれる荒木選手に愛情を感じ、今では大親友という。

「ミスをした後にネガティブになってしまう」という悩みには、「私も悪い方に考えがち」と共感。「うまくいかない時でも、チームに貢献できるのはプレーだけじゃない。誰よりも大きな声を出すこと。チームの空気や雰囲気作りに必ず貢献できるから」と力強く語った。

夢や目標を追いかけるのに ふさわしい人間になること

後半は、高校生が挙手して質問するなど、積極的でよりリアルな内容に。

高校生の「練習ができていない不安や焦りの切り替えは?」という繊細な質問には、「(インターハイがなくなった)経験がないのでアドバイスができないのが正直ですけど」と前置きしながら、「今、限られた練習しかできていないと思うので、頑張りすぎるとケガにつながる。私も現役時代ケガをして、練習できない時間が長かった。焦る気持ちはわかるけど、自分の体をしっかり見てあげて、ケガをせずに頑張ってほしい」と気遣った。

「スポーツ選手として生活で大事にしていること」との相談には、「夢や目標を追いかけるのにふさわしい人間になること」とコメント。「中3の時、バレーボールだけのことを考えていました。授業も寝ていたり、おろそかにしていたりしていた。その頃負け続けていました。全部のことがコートにつながりますよね」として、バレーボール以外の生活の、バレーへの関わり合いを伝えた。

締めのメッセージを求められると大山さんは、「みなさんが前向きでうれしかった。でも、なかなかそれだけではいかないと思う。いい子になろうとしなくていい」と本音を汲み取りながら、「本当の辛い、苦しい気持ちに正直に。今だからこそ、周りの人と話をしてほしい。あの時があったからと思う日が絶対に来るので、その時までパワーを充電してほしい。難しいけど、ゆっくりやりましょう」と心からのエールを贈った。

最後に、大山さんを中心に約40人の高校生と先生が全員でトスをしているポーズで、記念撮影し配信は終了。番組終了が告げられると、誰からともなく拍手が起こり、全員がにこやかな表情で幕を閉じた。

大山さんとのオンラインエール授業後に、高校生・先生たちだけの「アフターセッション」を開催。授業でのエールを受けて、今のリアルな想いを自由に語り合った。

授業後の感想としては「(練習ができないことなど)焦っているのはみんな一緒だと思った」「周りの人が頑張っていて励みになった」「自分は何ができるか考えようと思った」と、授業前後での前向きな変化を伝える声が多く聞かれた。

「(インターハイが中止になって)とはいえ無理して前向きになっていないですか?」というやや突っ込んだ質問にも、「ないわけではないんだけど、やっぱりここで立ち止まっていては進まないのでしっかり自分の考えを見つめ直していきたい」と強い意志を見せる意見も聞かれた。

また、今回はバレーボール部の先生の参加も。この時期の生徒の指導について聞かれると、「みなさんはアスリートだけど、ラインズマンや駐車場の整理など裏方で、インターハイの準備をしてくれていた県の高校生も、同じようにショックを受けていると思う。そういった生徒のことも感じられたいい機会として、今後のことに活かしてくれるといいと思う」と、違った視点から、今だからこその気づきを促した。

最後に「今日は楽しかった?」という問いかけに、身振りを交えて笑顔で深くうなずく高校生の姿も。普段のプレーも想像できるような表現力の豊かさが見て取れ、授業が財産となった表情が多く浮かんだ。

今後もさまざまな競技によって配信される「オンラインエール授業」。

全国の同世代の仲間と想いを共有しながら、今のやるせなさ、不安感を少しでも前向きにしていける高校生が増えることを切に願って、次回もエールを送り続ける。