BSテレ東で5月30日に放送された「卓球ジャパン!」は、「伊藤美誠&石川佳純 緊急出演!心に残る涙の激闘ウラ側SP」として、東京オリンピック代表の石川佳純と伊藤美誠がリモート出演。それぞれの名勝負を本人がDEEP解説した。

伊藤美誠編では2試合をピックアップ。語ってもらって明らかになったのは、彼女の類まれな強心臓っぷりだった。

1試合目は、世界卓球2015、女子シングルス準々決勝の李暁霞(中国)戦。ロンドン五輪金メダリストを相手に、世界卓球初出場で当時14歳の伊藤が2ゲームを先取。敗れはしたものの、世界中に「伊藤美誠」の名を知らしめた一戦だ。



まず、当時の心境を聞かれた伊藤の答えがすごい。

「感情が"無"(む)だったんですよ。李暁霞選手とやっているのに"無"で、この精神面すごいなって自分で思ったくらいです」

初出場の大舞台で、目の前には五輪金メダリスト。その状況の中、ほぼ何も感じずに対峙していたと言うのである。

実際に映像を見ても、険しい表情の世界女王に対して伊藤は終始飄々とプレー。バック対バックの勝負では相手を上回っていた。「ぼくらが初めて(陸上の)世界戦に行って、ボルトが横のレーンを走っているのに、飄々として普通に走って、60mくらいまでリードしているってことですよね? 異常!異常!(笑)」と、大魔王・伊藤のメンタルには、さすがの百獣の王・武井壮も驚きを隠せない様子。



面白いことに本人も自身の表情を読み取ることができないようで「私も何を考えているかわからないです(笑)」。未知なる14歳を前にして、李暁霞もかなりヒヤヒヤしたに違いない。改めて伊藤のすごさがわかる一戦だった。



続く2試合目は、伊藤が「めちゃくちゃ楽しかった試合!」と振り返った、世界卓球2018、中国との団体決勝1番、劉詩ブンとの激戦。日本人選手を相手に37連勝中という強敵をトップで破った、伊藤にとってはさらなる飛躍のきっかけになった試合だ。

ここでもやはり伊藤のメンタルは並ではない。団体戦決勝の1番という最もプレッシャーがかかる場面でも「緊張はないですね(笑)。緊張というか、楽しいが最初にくる。いつもより違う緊張感があっても、楽しいに変わります」というのだ。世界中のアスリートがうらやましがる強靭すぎるメンタルである。

ゲームカウント2-2となって最終第5ゲームは序盤でリードされる展開になるも伊藤は慌てない。

「前半勝負だったので、前半で近づきたいなというがありましたが、めっちゃ離されて、1-5までいっちゃったので、そこからは逆にリラックスしてできました」

一方で劉詩ブンは徐々に緊張感が高まっていたようだ。1-5の場面では浮いたボールに対する劉詩ブンのフォアスマッシュを伊藤がカウンターで打ち返すスーパープレーがあった。

「5-1なのにクロスに打ってくるということは、まだちょっと緊張感があるんじゃないかと思います。入れたいという気持ちがある」と伊藤は相手の心理を分析してみせた。



「(相手の緊張感は)感じますね。顔に出さない選手も今多いので、そういう選手とやる時は、何を考えているんだろうとなりますが、やってるとだんだん慣れてきて、"でも結局緊張してるんでしょ?"って自分に言い聞かせてます。"結局緊張してるもんね!"って(笑)」

この小悪魔的(?)なメンタル術、伊藤恐るべし。

中盤でじわりじわりと追いついていく伊藤。4-6でのラリーは、失点したものの手応えを感じていた。

「いいコースに何本も振れて、この1点で自身ができたというか、大丈夫だなと思えた瞬間でした。そこから結構いい感じに、ちょこちょこ追い上げていけているので、決められてはいるんですが自信になった1本」

そして8-10で相手のマッチポイントながら、"ゾーン"に入っていたと言う伊藤が4連続ポイントで逆転勝利。ポーカーフェイスだった伊藤もベンチに戻った時には目に涙を浮かべていた。



「劉詩ブン選手が一番勝ちづらい選手だと思っていたので、すごく嬉しかった。楽しかったけど、最初の1-5になった時は苦しかったので、解放された感じです」

この一勝は伊藤にとっても大きな自信になったようで「世界卓球の団体戦で中国に勝利できたのは大きなことで、ここから他の大会でも中国人選手に勝つ機会が増えました」と、自身のベストゲームを振り返った。

そんな、まさに"神"メンタルの伊藤美誠は、現在もしっかり練習はできており、大会の再開に向けて準備万端だ。

「海外が恋しい。海外に行って試合をしたいってすごく思います。試合をしていないとすごくウズウズします。早く決勝戦の舞台に立ちたいです!」とまるでクリスマスを待つ子供のよう。試合が好きでたまらない、試合の緊張感が楽しいと思えるこのポジティブな性格が彼女の強さの源だ。



東京オリンピックも1年の延期となったが「私自身は実力が上がる一方だと思っていますし、そこはプラスにとらえて、3種目でしっかり金メダルを取れる実力を磨いていけたらと思います」と力強いコメントを残した。

最後に伊藤から卓球ファンへメッセージ!

「今は試合がない時期ですが、いつ試合があってもいいように準備しているので、これから私を待っててください!」


「卓球ジャパン!」 BSテレ東で毎週土曜 夜10時放送中