立教大・上野裕一郎監督が語る「駅伝部のいま」(後編) 2024年の箱根駅伝出場を目指し、立教大学陸上競技部男子駅伝チームは4月から好スタートを切るべく、さまざまな準備をしてきた。だが、コロナ禍による影響で上半期は描いていたプランがほとん…

立教大・上野裕一郎監督が語る「駅伝部のいま」(後編)

 2024年の箱根駅伝出場を目指し、立教大学陸上競技部男子駅伝チームは4月から好スタートを切るべく、さまざまな準備をしてきた。だが、コロナ禍による影響で上半期は描いていたプランがほとんど実践できず、厳しい時を迎えている。3大駅伝(出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝)の開催も不透明ななか、上野裕一郎男子駅伝監督は今後どのような策でチームを強化していくのだろうか。



昨年の箱根駅伝予選会は23位だった立教大駅伝部

── 今年、立教大には駅伝の強豪校からポテンシャルの高い学生が入学してきました。春のシーズンは、彼らの活躍が楽しみだったのですが、それが見られないのは残念ですね。

「本当にそう思います。1年のなかには1500mとか5000mのタイムはそれほどだけど、長距離を走られそうな選手がいたので1万mをさせたかったんです。活動停止前に学内TT(タイムトライアル)をやったんですよ。その時、8000mを23分40秒で走れて、1万mでも29分台でいけそうな1年生がいたし、上級生にも29分台を出せそうな選手がいました。1500mでもひとり、3分52秒の自己ベストを出して、このままいければ……というところで緊急事態宣言が出てしまった。とくに春先の1年生の”ひと伸び”を見ることができなかったのは残念でした」

── このままいくと、上半期はレースがないまま終わりそうです。

「選手への影響は大きいですね。監督としても、新入生とほかの選手たちの実力を大会で判断したかったというのが本音です。学内TTはあるけど、モチベーション的に100%でやるのは難しいですし、タイムが残るわけじゃないですからね。やっぱりレースで争うことで本来の力が見えてくるし、タイムも残る。うちの場合は、上級生は箱根を目指していますが、新入生は箱根だけじゃなく、自分の好きな種目を伸ばしていこうと誘っているので、彼らにとってレースに出場できないというのはすごく苦しいと思います」

── 1年生は箱根駅伝の予選会をあまり考えていない?

「いや、むしろ逆です。冗談で1年生に『個々の種目をやりたいから立教に来たんだよな。じゃあ予選会の20キロは無理だな』と言うと、『いや、予選会は走ります』って。箱根は特別なのか、1年生も予選会を走りたいみたいですし、長距離をしっかり走れる選手もいるので期待は大きいですね」

── 上半期にレースがないのは、夏合宿にも影響を与えますか。

「試合もタイムもないですからね。練習も3月から見ることができていないですし、緊急事態宣言が解除されましたが、これまでどおりの練習はまだできていません。そうなると、その間、どれだけ個人でやっていたのかが判断基準になります。それは練習を見ればわかるんですよ。すごい実力のある選手は別として、僕はその期間にどれだけ一生懸命やっていたかという姿勢を見て、夏合宿の選抜組を考えていきたいと思っています」

 学生にとって重要な関東インカレが延期になり、全日本大学駅伝の関東予選会が中止になった。3大駅伝の開催可否はこれから検討されることになるだろう。さらに、高校でもインターハイが中止になり、各大学にとってはスカウティングといった部分で影響が出ている。

── インターハイの中止は、各大学にどんな影響を与えると思われますか。

「スカウティングに苦労する大学が出てくると思います。うちの場合、実質的なスカウティング活動でいえば、3月以降はどこの高校にも行っていません。ただオンラインで、高校の監督や、うちの大学を希望する生徒と話はしました。

 インターハイの中止は、陸上をやっている者としては残念というしかありません。高校生でも、まだ今後がある選手はいいですが、インターハイで終わりだと考えていた生徒にとってはね……たまらないと思います」

── ここまでレースがないのは上野監督も経験がないと思うのですが、この活動停止期間を経験して、あらためて感じたことはありましたか。

「これは平時でもそうなんですが、陸上は規則正しくルーティンを組んでやっていくことが一番大事だということです。みんなと一緒に練習ができないなかでも個人でいつもどおりに自主練習をしっかりやっていくことで、いざレースに出るとなっても自信を持って走れると思うんです。

 そこでタイムが上がって、以前とは違う自分が見えれば、それまでの練習は正しかったんだと思えるじゃないですか。そういう経験ができれば、今後、コロナの第2波、第3波が来て、また活動休止になったとしても、個人でしっかり練習することができると思います」

 立教大にとって、最も大事なレースが箱根駅伝の予選会(10月17日開催予定)だ。そこに至るまでのスケジュールは、じつは春前には完成していたという。だが、相次いで大会が中止、延期となり、また他大学の動向をつかむことができないが、予選会に向けてどのように準備していくのだろうか。

── 箱根予選会までのスケジュールで変更はありましたか。

「合宿場所などすべて予約は終わっていて、全体の流れを組んだ矢先のコロナだったんですが、今のところ予約もスケジュールも崩していません。合宿についていえば、環境のいい場所は各大学との争奪戦になるので、早めに決めないと取れないんですよ。あと強化については、大会がないなか、それを逆手に取っていこうと思っています」

── “逆手”ですか?

「本来であれば、関東インカレに昨年の倍以上の選手が出場する予定だったんです。でも、そこで立教の力を見せることができなかったので、そのまま目立たずに強化を進めていき、いざ大会となった時にほかの大学が『えっ、マジ!?』と焦るぐらいの進歩を見せられたらいいなと思っています(笑)」

── そういう成長が少し見えてきているのですか。

「箱根の予選会でいうと、昨年はまずスタートラインに立って、前年の順位を上回ることが目標でした。でも、今年はタイムがかなり読めています。選手がアベレージを出した時の順位を考えると、予選会では15番以内に入っていけそうです」

── 立教大の事業である”2024年1月の箱根駅伝出場”を目指すには、足踏みしている場合ではないと……。

「2024年は待ってくれないですからね。自分たちには時間がないですし、1年1年が勝負になります。コロナの影響で『やばい、どうしよう』ではなく、今はこれが通常だと腰を据えて取り組むことが、箱根に出るための道だと思っています。

 ただ、ここでコロナ感染者が出てしまうと、今までの努力が水の泡になってしまいます。立教大に行かせたくないと思う親御さんも出てくるでしょう。そうなると箱根へのチャンレジはおろか、部の存続自体危うくなってしまいます。そうならないために、これからも油断せず、感染防止を徹底させて、みんなで協力してこの危機を乗り切っていきたいと思っています」

(おわり)