名トレーナーが衝撃を受けたスピンクス戦 ボクシングの元世界3団体ヘビー級王者マイク・タイソン氏(米国)はエキシビションマッチでの復帰へ向けて準備を進めている。53歳にして再びボクシング界の主役として大きな注目を浴びているが、ではいつがタイソ…

名トレーナーが衝撃を受けたスピンクス戦

 ボクシングの元世界3団体ヘビー級王者マイク・タイソン氏(米国)はエキシビションマッチでの復帰へ向けて準備を進めている。53歳にして再びボクシング界の主役として大きな注目を浴びているが、ではいつがタイソン自身の“最強”だったのか。往年の名トレーナーは32年前のタイソンの伝説の初回KO劇に思いをはせている。

 1988年の6月27日、マイケル・スピンクス(米国)を挑戦者に迎えた一戦だ。無敗同士の対戦で、文字通り圧倒した。タイソンは初回からエンジン全開。スピンクスをロープへと追い込むと、強烈左アッパーで顔面をとらえる。続けて右ボディーもくらわせ、スピンクスに膝をつかせた。

 立ち上がったスピンクスに、タイソンは容赦ない。再び対峙してすぐ、今度は強烈な右フックをお見舞いした。顎をとらえた一撃に、スピンクスは後ろ向きに大の字で倒れる。意識朦朧のまま立ち上がろうとするも、無情の10カウントとなった。

 いまなお語り継がれる、初回91秒でのKO勝利。デビューからの連勝を35に伸ばした試合を、「マイク・タイソンがそれまでのファイターの中で最も輝いていた夜」として紹介しているのは、米専門メディア「ワールドボクシングニュース」だった。

 記事によると、スピンクス戦を改めて絶賛しているのは一時期タイソンのトレーナーを務めたテディ・アトラス氏だ。

「あの夜は今までリングに上がってきたどのファイターよりも素晴らしかった」

 当時スピンクスは31戦無敗。飛ぶ鳥を落とす勢いだったタイソンといえど、「試金石」となる一戦だと目されていた。だが、ワンサイドのKO勝ち。タイソンの強さだけが際立った試合を「あの夜、タイソンは今までリングに上がってきたどのファイターよりも素晴らしかった」と「ESPN」の情報番組「スポーツセンター」での91秒間のその試合の映像を振り返りながら、アトラス氏は語っているという。

「最高の自信、パワー、アグレッシブさを兼ね備え、指揮官のようなスマートさを持っていた。最初に彼が決めたダウンはアッパーカットだ。それで彼は突破口を見つけ出し、ボディーショットを打つために十分すぎる冷静さを保っていた」

 アトラス氏は改めてこう回想しながら、さらに続けて「彼はスピンクスの最高の一打が右であることを知っていた。だから彼はそれに対して準備していたし、自分の右カウンターで対応していたんだ。これが『知性』というものだよ。それが詰まっていたあの夜は今までリングに上がってきたどのファイターよりも素晴らしかった」と振り返っているという。

 スピンクスはこの初めての黒星をきっかけに引退。一方のタイソンもこの2年後、東京ドームで行われたジェームス・ダグラス(米国)戦で初黒星を喫している。(THE ANSWER編集部)