6月から興行再開、「ESPN」が各選手の反応を紹介「犠牲を強いられることに…」 新型コロナウイルス感染拡大により、興行延期が続いていたボクシング界では、6月に本場・米国で再開が決定。感染防止のため、無観客試合という措置が取られることも報じら…

6月から興行再開、「ESPN」が各選手の反応を紹介「犠牲を強いられることに…」

 新型コロナウイルス感染拡大により、興行延期が続いていたボクシング界では、6月に本場・米国で再開が決定。感染防止のため、無観客試合という措置が取られることも報じられているが、入場料収入がゼロとなる中、ボクシングの世界王者たちはファイトマネー減額でもリングに立つのか。米スポーツ専門局「ESPN」では様々なチャンピオンの声を紹介している。

 昨年9月に世界タイトル戦で伊藤雅雪を倒したWBO世界スーパーフェザー級王者ジャメル・ヘリング(米国)は米ラスベガスで7月2日に同級11位のジョナサン・オケンド(プエルトリコ)と対戦することが決定。記事によると、トップランク社所属のヘリングはボブ・アラムCEOや陣営と電話会談。「自分は犠牲を強いられることになった」とファイトマネー減額を飲んだことを認めている。

「妥当なギャラで合意に達したが、自分はチームの一員として考えてみた。世界で何が起きていることについて理解している。入場料収入はボクシング界で大きいことも理解している。現状では、それを手にできない。チケット販売はできないんだ」

 コロナ禍の影響で入場料収入がゼロとなる事情を理解したヘリングは「チームプレーヤーになるべき。正しいことを為すだけ。自分のためだけではなく、トップランクを含めた陣営にとって。心配はしていない。ゼロより遥かに有益だ」と語ったという。

 33歳で世界王者になった元米国海兵隊の苦労人は若いボクサーに「自分のキャリアを確立し続けるべき。お金は最後についてくる。これは一時的なものだ」とアドバイスを送ったという。

 一方、元WBA世界ウェルター級スーパー王者のキース・サーマン(米国)は「オレは重要ではない相手に、少ないギャラを手にするつもりだ。試合では最高のパフォーマンスを見せるが、これは言っておく必要がある。現在のディスカウントした状態で、メガファイトはすべきではない」と語ったという。

 入場料収入がないコロナ禍では、ビッグファイトに挑むメリットはないというのが、サーマンの主張だ。「トップファイターは自己犠牲することはない。プロモーターも犠牲を払いたくない。彼らはスーパーメガファイトを売り出すことはない。わかるだろう」と説明し、米国のメジャースポーツ界の緊急事態についても言及したという。

「生まれる前からずっと言われてきたことが言葉がある。お金を生み出さないとすれば、そこに意味はない。これが厄介な時代だということをどんなスポーツのファンも理解すべきだ。バスケットボールにしても、フットボールでも野球でも、彼らは10億ドルとはいかないかもしれないが、途方もない産業だ。プレーしろ、そして損を受け入れろ、とは簡単にいかないんだ」

「名前を売ることがお金より大事」「辛いが仕方ない。安全なら試合に戻る」

 元WBO世界スーパーバンタム級王者のヘスス・マグダレノ(米国)は7月11日にエニフェリ・ビセンテ(ドミニカ共和国)と対戦することが決まった。ファイトマネー減額を受け入れたマグダレノは「最終的には、我々ボクサーにとって安全なことを為すべきだ」と主張したという。

「(無観客が)ボクサーにとってより安全と言うのなら、無観客でやるしかない。ファイターが100%安全であることを確かめて、準備をするだけ」。無観客の方針を感染防止の理由から受け入れた一方、減収については「受け入れなければいけないのは辛い。でも、仕方ない。安全なら7月11日に戻るよ」と心境を吐露したという。

 IBF世界スーパーフェザー級王者のジョセフ・ディアス(米国)は「自分にとって、2020年に試合をしないということはありえない。戦いたいし、なるべく早く試合をしたい」と闘志を燃やし、1月に世界王者になったばかりの男はキャリアにおいて、ファイトマネーよりも大事なものがあると語る。

「お金は大事だが、自分の名前を確立することが今一番の目標。今が全盛期だと思っているので、これを当たり前と思わず、すべてを受け入れて、向上していく。ギャラが相応しくなくても、試合をするよ。自分のファイトをして、みんなに自分が何者なのかを示したい。自分のブランド、名前を高める。お金よりずっと大事だからね」

 コロナ禍でのファイトマネーの減額は潔く受け入れる代わりに、ブランド力を高める段階とディアスは割り切っているようだ。一方、WBC世界スーパーミドル級王者のデビッド・べナビデス(米国)は「とても不運なことだが、(減額を)しなければいけないなら、するしかない。無観客試合で興行再開となる可能性については理解している」とコロナ禍の現状を受け入れたという。

 そして、「今年中に幸運にもファイトができれば、自分は嬉しいよ。これだけのことが起きているのだから」と語り、終息を見ないコロナ禍でもリングに立てることは幸運と主張した。まもなくやってくる興行再開。選手によってファイトマネーの減額は受け取り方も様々なようだ。(THE ANSWER編集部)