ラグビー日本代表である立川理道のインスタグラムでアップされた動画が、ファンの間で話題を集めている。 まず画面にはコーヒーが映っており、立川が「熱いなぁ。コーキ、フーフーして」と発すると、その「コーキ」のもとへコーヒーが渡る。「コーキ」は「…

 ラグビー日本代表である立川理道のインスタグラムでアップされた動画が、ファンの間で話題を集めている。

 まず画面にはコーヒーが映っており、立川が「熱いなぁ。コーキ、フーフーして」と発すると、その「コーキ」のもとへコーヒーが渡る。「コーキ」は「フーッ、フーッ、フーッ」と太い声を発する。その際のとがった口元やカメラ目線との合わせ技で、その場にいたチームメイトが爆笑する…。

「はい、うまいことかわいがってもらっているので、ありがたいです! 最初は、何もないところでハルさんに『フーフーしてや』と振られてやったものがウケて…。『じゃあ、撮ろうや』となりました」

 表情を崩すのは、画面のなかの「コーキ」こと山本幸輝である。

 10月9日から3日間、都内でジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ就任後初となる日本代表候補合宿へ参加。今回選出された37人の候補メンバー中16人いる、テストマッチ(国際間の真剣勝負)未経験者の1人だ。

 身長181センチ、体重118キロの25歳。2013年度にヤマハ入りした。長谷川慎FWコーチからは、加入前から指導を受けている。強靭なスクラムの構築のため、組み方を根本から作り直した。尻から膝までの線を地面と垂直に保ち、後方からの力を伝えんとする。

「そうした方が、もっと強く組めるんやで」

 学生時代の力任せだった組み方を、自身と同じPRとして日本代表になった長谷川コーチから理論的に改善されたのだ。

 トップリーグではスクラムで存在感を示し、ルーキーイヤーから左PRのレギュラーとなった。2014年度の日本選手権でもスクラムを看板に掲げ、クラブ史上初の全国タイトルを獲得した。しかし今季の国内最高峰トップリーグでは、開幕6連勝中も先発機会は1試合のみ。不完全燃焼である。好調のライバル、仲谷聖史との競争に関してこう話す。

「その辺についての説明はないですが、(理由は)自分でもわかっているつもり。スクラムで相手をドミネートできる方が試合に出ているので、その部分で仲谷の方が上なんだと思っています」

 だから今度の代表入りに関し、本人は複雑な思いを吐露するのである。

「素直に嬉しいという気持ちが第一です。ただ、現状、ヤマハでスタメンとして出ていないのに選んでいただいている。その分、より一生懸命やって、絶対に結果を残さないといけない」

 ずっと国際舞台に憧れていた。2月には日本から初参戦のサンウルブズに加わり、国際リーグのスーパーラグビーに挑んだ。2月27日、東京・秩父宮ラグビー場。準優勝するライオンズとの開幕節で途中出場を果たした。13-26と食らいついた。

 しかし、ここで待っていたのは災難だった。開幕節は近大4年時以来となる右PRとしてプレー。以後は本職での見せ場も作りたかったが、一転、チームを抜けることとなった。

「せっかく選んでいただいたのに、不甲斐ない結果に終わった」

 重度の肉離れだった。

「ずっと居たかったですよ…。選手やスタッフ陣の皆さんも温かかったですし、新しい環境は楽しかった。インターネットとかでサンウルブズの活躍を観ていると、悔しくて…」

 ヤマハの本拠地である静岡へ戻っても、復活までの道のりが遠かったという。

「社会人になってから初めての怪我でした。だから僕もなめていたのか、治ったと思ってからも怪我の直りが良くないことがありました。結果、復帰が7月、8月、とずるずる伸びてしまって…」

 初めて加わった今回の日本代表では、サンウルブズでも一緒だった堀江翔太や立川と再会。オフには道化師となって旧交を温めながら、グラウンドでは新指揮官のコンセプトを遵守する。ひたすらテストマッチデビューを目指す。

「いまはいいコンディション。怪我の影響はないです。これまで充電していた分を出すだけです」

 11月5日には、昨秋のワールドカップで4強だったアルゼンチン代表と激突(東京・秩父宮ラグビー場)。以後は欧州でジョージア代表、ウェールズ代表、フィジー代表とぶつかる。

 日本協会による公式リリースは出されていないが、ヤマハは山本の恩師たる長谷川コーチの代表ツアー参加を発表。山本もこのニュースを好意的に受け取っている。自分の強みを活かす方法を、こう明かすのだった。

「まだメンバーに選ばれるかはわかりませんが、慎さんに近くでいてもらえるのはありがたい。いい兄貴が一緒にいるみたいな感じで、心強いです。まずはジェイミーがやる日本代表のラグビーを理解しないと、(いいスクラムを組むために)力を貯める(運動量を抑える)場所がわからない。個人のフィットネスレベル(持久力)を上げることも必要ですが、まず、しっかりと理解を深めていきたい」

 今回のキャンプでは、見せ場となるスクラム練習はおこなわれなかった。23日〜25日の第2回合宿(場所未定)、さらには長谷川コーチの合流するテストマッチ期間において、「フーフー」の男が持ち味を発揮するか。
(文:向 風見也)