新型コロナウイルスの影響により無期限延期とされていたラ・リーガだが、ついに再開の見通しがついた。リーグ再開に向けて動き出したスペイン。バルセロナも練習を開始した 3月14日にスペイン全土に非常事態宣言が出されると、ラ・リーガとスペインサッ…
新型コロナウイルスの影響により無期限延期とされていたラ・リーガだが、ついに再開の見通しがついた。
リーグ再開に向けて動き出したスペイン。バルセロナも練習を開始した
3月14日にスペイン全土に非常事態宣言が出されると、ラ・リーガとスペインサッカー連盟は3月23日にリーグ戦の無期限延期を発表。すべてのクラブが活動を停止し、選手たちはひたすら自宅で個人トレーニングを繰り返す日々を強いられた。
その間、リーグがこのまま再開されない場合、現在首位のバルセロナをチャンピオンにする措置をラ・リーガが検討していると報じられると、レアル・マドリードのGKティボー・クルトワは、「バルセロナとの勝ち点差はわずか2だ。僕たちはチャンピオンになれる可能性がまだある。そのためシーズンが打ち切られたら運が悪いよ。彼らがチャンピオンに決まったら不公平だ」と不満を漏らした。
一方、リーグが中止になると恩恵を受ける可能性があるチームが存在する。それは降格圏内にいるマジョルカ、レガネス、エスパニョール。理由は今季のセグンダ(2部)降格がなくなるかもしれないからだ。しかし、マジョルカのビセンテ・モレーノ監督は「もしリーグが再開されない場合、何が起こるかわからない。降格圏内にいるチームの利益が常に話されているのは、とても不愉快だ」と不快感を露わにした。
非常事態宣言から2カ月以上が経過した今、スペインでの新型コロナウイルスの感染拡大はやっと収まりを見せ始めている。5月19日の感染者は295人、死者83人。感染者がピークだった3月26日の9,189人、死者数がピークとなった3月31日の929人と比べ、大幅に減少してきているのがわかる。
これを受け、スペインサッカー界も動き出した。各クラブはラ・リーガの定めるプロトコルを遵守し、今月上旬に新型コロナウイルスのPCR検査を受け、練習場で個人トレーニングを開始した。5月18日からは10人までのグループ練習が可能となり、ようやく実際にボールが転がる映像が見られ始めている。
そして、ラ・リーガのハビエル・テバス会長は、新型コロナウイルスの状況次第としつつも、「6月12日に再開したい」と発言した。これは欧州選手権(ユーロ)が来年に延期された期間を利用し、6月〜7月にかけて残り11節を消化するプランである。
レアル・マドリードのDFセルヒオ・ラモスは、「サッカーは二の次で健康が第一だが、再びプレーできることを願っている。国は経済的な原動力、そして娯楽としてサッカーを必要としている」と再開に向けての意見を述べた。
また、レアル・マドリードのジネディーヌ・ジダン監督は「私は練習より試合のほうがもっと好きだ。選手たちは再び戦うことを楽しみにしている」と語ると、ビジャレアルのハビエル・カジェハ監督は「6月12日再開は妥当だと思う。チーム全体で2〜3週間トレーニングできるからね。そんなにタイトな日程ではない」と、テバス会長のプランを肯定した。
だが、国のトップであるペドロ・サンチェス首相は、「サッカーが早く再開されることを願っている」と語りつつも、「スタジアムではなく、テレビの前で観ることになるだろう」と、無観客開催となる見解を示した。
無観客開催は、各クラブにとって入場料収入で大打撃になるだけでなく、選手たちのモチベーションに悪影響を与える点も懸念される。
アトレティコ・マドリードのキャプテンであるコケは「サポーターは常に僕たちを盛り上げ、最も必要としている時には助けとなる。彼らなしにプレーするのは難しい」と観客の重要性を訴えた。実際、アトレティコは2月にホームのワンダ・メトロポリターノで行なわれたチャンピオンズリーグで、満員の観衆の後押しを受けながら、優勝候補の一角だった前年度王者のリバプールを撃破した。
しかし現実問題として、観客を動員しての試合開催は不可能だろう。
バルセロナのDFジェラール・ピケは「多くの利害関係があるので、ラ・リーガがリーグ戦を最後まで終えたいのは理解できる。無観客開催を望んでいない一方、僕たちは首位だがこれ以上プレーせずにリーグを終えるのも酷いことだ」と複雑な胸の内を明かした。そして、「ハビエル(・テバス会長)が6月12日に再開する話を聞いたが、もう1カ月しかなく練習試合もできない。ケガを避けることを考えると、もう少し時間があったほうがいいと思う」と再開が時期尚早であると訴えた。
テバス会長がリーグを最後までやり遂げたい主な理由は、大きな収益を失いたくないことにある。リーグがこのまま中止された場合、ラ・リーガは莫大な放映権を含め6億7880万ユーロ(約814億5600万円)もの損失が出ると見積もっている。そのためフランスやオランダなど、欧州各地で中止が決まるなか、無理をしてでもリーグ再開に突き進んでいる。また欧州5大リーグの中で一足早く、ブンデスリーガが再開したことは、スペインでのリーグ再開に向けて大きな後押しとなっている。
リーグ再開が決定した場合、試合に向けて健康面の安全を確保するための様々な制約がある。各クラブは試合に参加するメンバー全員のリストをラ・リーガに提出し、飛行機や電車で移動する場合はチャーターする必要がある。
スタジアムは試合前日に入念に消毒され、選手、クラブスタッフ、審判団は試合24時間前にPCR検査を受ける。試合当日の会場入りは3時間前(通常は1時間半前)となり、スタジアムに入れる人数は約230人に制限されている(選手、コーチングスタッフ、審判団、ボールボーイ、クラブ管理者、セキュリティスタッフ、医療関係者、警察、VAR、テレビ関係者など)。
そして試合中、握手などの接触は禁止、ボールは絶えずボールボーイにより消毒され、ハーフタイムにはユニフォームをすべて着替える必要があり、試合後の記者会見はビデオ通話形式で実施される。
選手、監督、ラ・リーガ会長まで、各々の立場で思うところはあるだろうが、皆の目標はただひとつ。それは選手、監督などすべての関係者から新たな感染者が出ることなく、無事にサッカーのある日常が戻ることにほかならない。リーグ再開予定日まであと3週間。カウントダウンが始まった。