卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」

このシリーズでは、初心者向けに卓球の基本的な技術についての説明やそのやり方、対処法などについてお話していく。実際のプレイヤーはもちろん、テレビなどで観戦される方にとっても、頻繁に出てくる用語が登場するので、知っているとより卓球の面白さが分かるだろう。ぜひ参考にしていただきたい。

今回は、試合の中で「球が合わない」と感じるときの対処法について考えてみたいと思う。

卓球は実に複雑な競技だ。わずか2.7グラムのボールを、複雑かつ強烈に回転させて至近距離で打ち合う。さらに数万通りの組み合わせのあるラケットやラバーといった用具の特徴、選手独特の打法の癖や技術等、ありとあらゆる要素が絡み合って構成される。

そんな卓球を長年経験していると、「どうもこの選手とは球が合わないな」という、なんともあいまいだが、しかしはっきりとした感触を抱くことを経験することだろう。

今回はそのあいまいな感触について、すこし踏み込んで考えてよう。

「球が合わない」とはどういうことか

まずどういう場合にわたしたちは「球が合わない」という表現を使うのだろうか。自分に問いただしてみると、サーブ以外の相手のボールで、不本意なミスを重ねているときだと考えられる。それも、ノータッチで抜かれたときではなく、しっかり反応してラケットには当てたが、うまく返球できなかったという場合だ。

なので今回は、「サーブ以外の相手のボールで、ラケットには当てるがうまく返球できない」際に使いうる表現であるとする。

どの球が合わないのかを見極める

次に相手のどのボールが「球が合わない」と感じるのかを考えてみよう。おそらく返ってくる球全てが合わないということはないはずだ。たとえば、「ラリー中のフォアドライブが球が合わない」としよう。

その際あなたは、

・オーバーミスをしてしまう
・ネットミスをしてしまう
・ラケットにうまくヒットしない

といったミスの種類について、どういうケースが多いのかを考える必要がある。そしてその際は、できればその理由も合わせて一緒に考えてみるとよい。

・軽く振っているようで、見た目よりも強烈なドライブ回転がかかっていてオーバーミスをしてしまう → 中国性の粘着ラバーを使用していることが要因
・ドライブをネットミスしてしまう → やや弾き気味に打っているが為にドライブ回転があまりかかっていないことが要因
・曲がる軌道を描いてくるので、ラケットの角に当たってしまう → ボールの外側をとらえる癖をもっていることが要因

といった具合だ。まず何はともあれ、どのボールが「合わない」のかを見極め、それと同時にその要因も究明することから始めよう。

対処の方法を考える

ではそれらが分かったら、具体的にどうすればいいのかを考えていこう。

筆者が「球が合わない」と聞いて思い浮かんだトップ選手が、中国の許昕選手だ。

伊藤美誠選手が、「アルファベットの”J”くらい曲がってくる」と答えるほど、強烈に曲がる軌道を描くフォアハンドドライブを得意とする。まさに世界トップの「クセ球使い」なわけである。そんな彼のクセ球に対して上手く対応した例を見ていこう。




写真:最強左腕・許昕(シュシン・中国)/提供:ittfworld

2013年世界選手権、当時日本代表として活躍した松平健太選手が、準々決勝で許昕選手と対峙した。その際見せた、中陣からしなるムチのように飛んで来る許昕の曲がるドライブを、いとも簡単に連続でブロックする様は、大いに観客を沸かせた。そのときの松平選手の処理に注目したい。

バック側へ来るドライブに対して、回り込んでフォアハンドでブロックしていた場面が見られた。左利きの許昕選手の曲がるフォアドライブを上手く返球しようと思うと、松平選手はボールのやや右側を捉える必要がある。そう考えたとき、通常通りバックハンドでブロックするよりも、フォハンドの方が角度を作りやすく、返球しやすいのである。

違う例も見てみよう。2019年のオーストラリアOP、ドイツのフランチスカ選手と許昕選手の一戦だ。許昕の曲がるドライブに対して、フランチスカ選手はその回転を利用する形でシュートドライブを連発。許昕の厳しいフォアサイドを突き、試合を優位に展開した。最後は意地を見せた許昕選手が勝利をもぎ取ったが、フルゲームのデュースまでもつれる大熱戦となった。

これらの例のように、「合わない球」の性質をしっかりと把握していれば、その性質に合わせた対処法や、逆にその性質を利用した返球が可能になるわけである。

そのボールを出させない工夫をする

上記のように上手く対処できるようになればいいが、どうしても難しい場合は、そのボールを出させないように工夫することが必要になってくる。

ラリー中に飛んでくるフォアのドライブが合わないということなら、サービス時は上回転やロングサーブは使わずに、下回転系のサーブを中心に組み立てるべきだ。

そしてなるべく長いラリーにならないよう、ややリスクを負ってでも3,4球目で決めにかかるように攻め込む。そしてラリーになってしまったなら、フォアサイドを避けてとことんバックサイドへ詰める。といった要領である。

まとめ

卓球は対人競技だ。自分がどれだけ技術を磨いて、どれだけその日の調子が良くても、それを上回る相手の実力や、想定外のクセ球などによって、全く自分の実力が出せずに負けてしまうケースは多々あるだろう。

しかしそれは当然ともいえる。なぜなら対人競技においては、「いかに相手のやりたいことをやらせず、自分のやりたいことができるか」が鍵になるからだ。

球が合わないということは、自分が想定していないような癖のあるボールなのだろう。であるならば、それをまずはしっかりと分析をした上で対処法を考える。あるいはそれに付き合うのを避けて、自分が苦しくならない展開に持っていくように頭を使う必要があるのだ。

ただ漫然と「球が合わない」などと言っているだけでは、何の解決にもならない。

文:若槻軸足(卓球ライター)