ブンデスリーガ(1部、2部)が約2カ月のブランクを経て再開した。 各クラブは4月上旬から、さまざまな制限付きながらもクラブの施設を利用して練習を始めていたが、全体練習を行なえたのはこの10日間程度。ふだんと変わらないパフォーマンスを求める…
ブンデスリーガ(1部、2部)が約2カ月のブランクを経て再開した。
各クラブは4月上旬から、さまざまな制限付きながらもクラブの施設を利用して練習を始めていたが、全体練習を行なえたのはこの10日間程度。ふだんと変わらないパフォーマンスを求めるのは、精神的にも肉体的にも酷というものだろう。
試合結果を見ると、首位バイエルンがウニオン・ベルリンに0-2で勝ち、レヴィアダービーは4-0でドルトムントがシャルケを圧倒。3位ボルシアMGも1-3とフランクフルトを下すなど、従来からの力関係がそのまま反映されたものとなった。ただ、ドルトムントの試合中の総走行距離を見ると、今季リーグ戦では最低の109キロ。すべてのチームがそうだったわけではないが、中断の影響があるのかもしれない。
ボルシアMG戦に先発、後半33分までプレーした鎌田大地(フランクフルト)
日本人選手では、フランクフルトの鎌田大地が先発し、78分までプレーしたが、無得点。長谷部誠はベンチスタートで74分からピッチに立った。大迫勇也が所属するブレーメンはレバークーゼンに1-4と大敗。大迫は85分から途中出場した。
2部では、シュツットガルトの遠藤航とザンクトパウリの宮市亮がフル出場を果たしている。シュツットガルトはヴィースバーデンに1-2で敗れ、ザンクトパウリは1-0でニュルンベルクを下している。原口元気のハノーファーは、対戦相手のドレスデンの2選手に新型コロナウイルス陽性が出たため、試合が延期されている。
再開前の1週間、選手、監督らは自己隔離を義務付けられた。だが、アウクスブルクで監督デビューを果たすはずだったハイコ・ヘルリッヒは、この期間に違反を犯した。歯磨き粉などを切らし、トレーニングウェアのまま近所のスーパーに出かけてしまったのだ。クラブはこの事態を重く見た。「チームや世間の模範にならなくてはならない」と、監督はヴォルフスブルク戦のベンチを外れることになった。
スタジアムには選手やクラブ関係者、グラウンド整備、試合運営、放送など合わせても最大322人しか入場することができなかった。選手たちもベンチにいるときはマスク着用が義務付けられ、観客のいないスタンドなどに距離をとって座っていた。試合前に着用したマスクと、試合から引きあげた時に使うマスクは別のものにするという点も徹底されていた。
最大5人まで選手交代できる(ただし交代は試合中3回とハーフタイムのみ可能)新ルールも適用された。今後の過密日程のなかで、監督たちは交代枠の有効活用に知恵をしぼることになるだろう。45分出場にフォーカスして調整するなどというケースも出てくるかもしれない。
また、選手は試合中、ボディタッチを最小限にするようにと求められていた。選手同士の握手やハイタッチ、ハグは避けるように言われており、それらの代わりに肘と肘を合わせることで喜びを表現した。
多くのチームが得点のたびに肘タッチで喜んでいるなか、ホッフェンハイムに3-0で勝利したヘルタ・ベルリンは、これまでどおり、得点のたびに選手が集まり、抱き合って喜んでいた。ブルーノ・ラバディア監督は開き直ってこう言う。
「エモーションはサッカーの一部だ。感情表現なしならプレーする必要などない」
サッカーが重要なスポーツで、娯楽のひとつでもあるドイツとはいえ、ブンデスリーガの再開に全国民が賛成しているわけではない。ルールの徹底が求められているなか、ヘルタ・ベルリンの選手の行動と指揮官の発言は世間の反感を買い、厳しい目も向けられている。ブレーメンのフロリアン・コーフェルト監督は露骨に嫌悪感を示した。
「私たちは細心の注意を払っている。ブルーノの言うことも理解できますが、他の監督たちをトラブルに巻き込むことにもなる。ガイドラインを無視することは、チームスポーツにおいては常に問題の種になるのですから」
一方、レヴィアダービーに勝利したドルトムントは、試合後、無人のゴール裏に向かって、セレブレーションの儀式を行なった。ダービーなどのビッグマッチに勝利したあとは、いつもなら選手同士が手を繋いでゴール裏のサポーターに向かって、喜びを表現する。今回は選手と選手が間隔を空けて無観客のゴール裏に向かい、左右を確認するとタイミングを合わせて数回、手を挙げた。そしてひっそりとベンチに引きあげる姿は、やはり寂しいものだった。
主要リーグのなかで最初に再開したブンデスリーガ。だが、2019-20シーズンをこのまま終えることができるのか。来季以降はスタジアムに観客を迎えることができるのか。まだまだ日常が戻ってきたとはとても言えない。