春は出会いと別れの季節、特に中高生にとっては入学や進級などで環境が大きく変わる時期だ。

新たな生活に大きな期待を抱く一方で、同じくらいの不安を抱く生徒も多いだろう。

そこでバスケットボールキングでは、BリーグやWリーグの選手たちに、高校時代を振り返ってもらうインタビュー特集をスタート。

トップリーグで活躍する選手たちの高校時代の話を、今後の学生生活の参考にしてほしい。

第5回は牧全が登場。中学卒業後に渡米した牧は、多感な学生時代をどう過ごしたのか、前編・後編にわたって振り返る。

前編はこちら

インタビュー・文=入江美紀雄、岡本亮

写真=B.LEAGUE

取材協力=横浜ビー・コルセアーズ

ハイレベルのバスケ環境に触れた高校時代


――留学が始まった当時、ご自身の英語のレベルはどうでしたか?

牧 日本の中学レベルよりは上でしたが、ペラペラというわけではなかったので、すごく勉強しました。結局慣れるのに3年くらいかかりましたね。

――ネイティブ並みに話せるようになるのに3年かかったということですか?

牧 大学生になった時、周りから「日本語話せるんだ」って驚かれるくらいに話せるようにはなりましたが、アクセントなどは難しいですね。

――アメリカは日本の高校とは違う部活のスタイルですよね。

牧 そうです。強くなればなるほどトライアウトに参加できるようになります。

――牧選手が留学されたサンタクルーズハイスクールのレベルはどうでしたか?

牧 バスケの名門ではなくて、サーフィンやスケートボードなどのほうが有名でした。ある程度のレベルにはいたと思いますが、もっと強い高校に行っていればより上手になれたのかな、とも思います。

――たまたまその高校に行ったということですか?

牧 親戚がサンタクルーズに住んでいて、小さい頃から来たことがあったので。だから友達もいたし、留学後すぐになじめました。

――アメリカはシーズンごとにするスポーツが変わりますが、アメフトや野球などほかのスポーツにはチャレンジしましたか?

牧 僕はバスケだけでした。やろうと思えばクラブチームもあるので、1年中バスケをしていましたね。

――アメリカのバスケでどんなところに驚きましたか?

牧 夏休みにAAU(アメリカのアマチュアスポーツを統括する団体)が主催する大会があって、その大会に出るたびに周りの選手がすごすぎてやる気がなくなった記憶があります。

――「心が折れた」、ということですか?

牧 次元が違うという感じですね。高1なのにヒゲが生えていたり、210センチもあるのに僕よりドリブルが上手だったり。「そんなの勝てるわけない」ってなりました。

――それでもそういう環境にいられたのは良かったですよね。

牧 いい経験でした。そこで僕は努力して頑張るしかないって思えましたし、ひたすらバスケをして、スキルで補えるようにしました。

――高校時代で思い出に残っている試合はありますか?

牧 NBAに何人か行った選手のいるチームに出会えたのはいい経験でした。高校最後のカリフォルニアで一番大きな大会です。トップ8に入ることができました。

――NBAに入るような選手は、高校時代どんな選手なのですか?

牧 同じ年とは思えません。バスケットIQもそうだし、体つきや身体能力も2~3年分差があるような感じです。

バスケで心が折れた時のクッションが必要


――英語が大変だとおっしゃっていましたが、それ以外の勉強はどうでしたか?

牧 頑張っていたので、成績は良いほうでした。アメリカは高校まで義務教育なので、真面目に学校に行っていればある程度の成績は取れます。

――勉強で苦労したことはあまりないということですか?

牧 苦労はしました。高校に入学して最初の2年は大変でしたね。向こうの高校生は第二外国語としてスペイン語やフランス語などを習うのですが、僕の場合それが英語だったので、通常の授業に加えて英会話の授業も取っていました。

――高校でも成績が良くないと試合には出られないのですか?

牧 そうです。でも、ちゃんと授業に出て宿題を提出すれば補えます。

――高校卒業後アメリカの大学に進まれましたが、どうやって進路を決めましたか?

牧 高校の時にディビジョン2の大学からいくつかオファーをもらいましたが、あまり行きたい大学ではなかったので、いい大学から声がかかるのを待とうと思って短大に行きました。

――短大からソノマ州立大学に転校したということですね。

牧 いくつかオファーをもらいましたが、一緒にプレーしたいと思っていた知り合いがソノマ州立大学に行くと決めたので、僕もそうしました。

――大学のレベルはどうでしたか?

牧 カリフォルニアの短大はレベルがものすごく高いですよ。ディビジョン1の大学から声がかかったけど、成績が悪くて行けない高校生が短大に行くケースが多い。なので、やっていて面白かったですね。

――学生時代にアメリカでプレーして良かったと思う部分は?

牧 アメリカと日本のバスケはまったく違います。自己主張の強いアメリカでは、バスケ面でもどれだけ自分をアピールするかが大切です。

――アメリカの高校、大学に挑戦したい学生へアドバイスをお願いします。

牧 バスケばかりではなくて、それ以外のゴールを持ってもいいのではないでしょうか。英語を学びたいとか、アメリカの文化に触れたいとか、ほかのことを頭に置いてもいいと思います。バスケだけに専念しても心が折れる時もあります。他にクッションを置けば、プラスになることはありますよ。

――文化や風習の違いを学べるのも大きいわけですか?

牧 間違いなく大きいです。日本人は自分の主張をあまり言わないし、他人の意見に同調しがちですが、意見をガンガン言ったほうが自分のためになる。アメリカに行ってコミュニケーション能力が高くなりました。

――最後に部活ができない中高生にメッセージをお願いします。

牧 今は筋トレなら筋トレ、バスケならバスケとクリエイティブにできる時期だと思います。自分の試合を振り返る時間もある。映像を分析したりして、外から見たバスケを学べるいい時間だと思います。頑張ってください。

PROFILE

牧全(まき・ぜん) レバンガ北海道

高精度の3ポイントシュートとここぞという時に勝負強さが光るシューティングガード。中学卒業を機に渡米し、サンタクルーズハイスクールを卒業後、カリフォルニア州の短大を経て、ソノマ州立大学へ。大学卒業後に帰国し、2015年にレバンガ北海道へ加入。4シーズンを過ごしたのち、横浜ビー・コルセアーズへ移籍。2019―20シーズンは途中出場からチームを盛り立てた。さらに先日、来シーズンは北海道でプレーすることが発表されている。