新型コロナウイルスの感染拡大で開幕が延期しているメジャーリーグは現在、7月初旬に開催する案をベースに選手会と議論を…
新型コロナウイルスの感染拡大で開幕が延期しているメジャーリーグは現在、7月初旬に開催する案をベースに選手会と議論を交わしています。その開催案では、選手の移動の安全性を考慮して各チームは同じ地区同士のみの対戦とし、両リーグの交流戦も同地区に限定するとのことです。

ドジャースからツインズへの移籍した前田健太
ナ・リーグ西地区に所属するロサンゼルス・ドジャースで4年間プレーした前田健太投手は今年2月、ア・リーグ中地区のミネソタ・ツインズに電撃移籍しました。慣れ親しんだナ・リーグ西地区から離れることになったので、周囲の環境はガラッと変わったことでしょう。
2016年に広島東洋カープからドジャースに移籍した前田投手は、先発の一員として4年連続の地区優勝、さらには2度のリーグ優勝に貢献してきました。しかし、2017年以降はシーズン終盤にリリーフに回されるなど、「先発投手としてのプライドがあった」だけにつらい思いもしてきたと思います。
強力な投手陣を擁するドジャースと比べると、ツインズの先発陣の層の薄さは否めません。ミネソタの現地メディアも、前田投手にシーズンを通してローテーションを守って投げることを期待しています。
ツインズのエースは、2017年から3年連続ふたケタ勝利をあげている25歳のホセ・ベリオス。先発2番手は、昨年自己最多の15勝をマークしたジェイク・オドリッジ。前田投手は先発3番手というポジションでツインズに迎えられました。
ただ、ツインズに移籍したからといって、先発の座が約束されているわけではありません。このオフには昨年13勝をあげたホーマー・ベイリーがオークランド・アスレチックスからFAで加入し、昨年9月に禁止薬物違反で60試合の出場停止処分を受けた豪腕マイケル・ピネダもシーズン途中に戻ってきます。また、40歳のベテラン左腕リッチ・ヒルも左ひじの手術から復帰してくる予定です。
そうなると、5人で回す予定の先発ローテーションに余剰が生まれます。結果次第では、ドジャース時代に中継ぎとして好成績を残している前田投手がリリーフに回される可能性も否定できません。
ツインズで先発の座を守るために、前田投手は何をアピールすればいいのか——。新天地で安定した成績を残すために、ポイントはふたつあると思います。
まずは、ツインズの本拠地ターゲット・フィールドとの相性をよくすることです。
昨年、前田投手はホームで8勝3敗・防御率3.13だったのに対し、ロードでは2勝5敗・防御率5.12と極端に悪い成績でした。ドジャースタジアムが投手有利な球場であることも理由のひとつでしょうが、過去に登板経験のないターゲット・フィールドでどこまで成績を伸ばせるかは気になります。
2010年の開場当初、ターゲット・フィールドはホームランが出にくく「投手のパラダイス」と呼ばれていました。ホームランの出やすさを数値化したデータを見ても、ターゲット・フィールドはメジャー30球場の中で最も低い0.641という数値だったのです。
ところが、2014年頃からその数値は上昇し始め、2017年はメジャーで6番目に高い1.172まで跳ね上がりました。昨年は0.87と下がったものの、ツインズはターゲット・フィールドで137本もホームランを打っており、開場当初の「ホームランの出にくい球場」ではなくなっています。
昨年の前田投手は開幕から先発9試合で、ホームランを打たれなかった5試合の成績は4勝0敗・防御率0.61でした。しかし一方、ホームランを打たれた4試合は1勝2敗・防御率7.36。一発を浴びると途端に成績を落とす傾向があるので、ターゲット・フィールドでのホームランは要注意でしょう。
そしてもうひとつのポイントは、ア・リーグのチームとの対戦です。ナ・リーグの投手がア・リーグに移籍すると、多くの選手は成績を落とす傾向にあります。それはア・リーグが指名打者制を採用しているため、強力打線を武器とするチームとの対戦が多くなるからです。
昨年の前田投手はア・リーグとの交流戦で6試合に登板し、1勝3敗・防御率6.45という成績でした。22イニング3分の1を投げて、実に7本もホームランを打たれています。首脳陣の信頼を勝ち取るためには、ア・リーグの強力打線に対して一発を許さないピッチングを続けることが大事でしょう。
ただし、冒頭でも述べたように、今シーズンに限って対戦相手は同じア・リーグ中地区4チームと、交流戦もナ・リーグ中地区5チームのみの対戦となりそうです。東地区や西地区と比べて中地区は強力打線を武器とするチームが少ないので、前田投手にとっては好都合かもしれません。
過去にナ・リーグからア・リーグのチームに移籍して成功した日本人投手と言えば、真っ先に黒田博樹投手の名前が思い浮かびます。2008年に「広島のエース」という看板を背負ってドジャースに移籍し、2012年にア・リーグのニューヨーク・ヤンキースに移っても変わらず活躍しました。
黒田投手が成功を収めた最大の要因は、環境の変化にすぐさま適応した点にあると思います。外野が広く投手有利なドジャースタジアムから、ライトが狭くホームランが出やすいヤンキースタジアムへと本拠地を変えても、成績を落とすことはありませんでした。
ドジャース4年間の成績が41勝46敗・防御率3.45に対し、ヤンキース3年間の成績は38勝33敗・防御率3.44。強力打線を誇るチームの多いア・リーグ東地区に戦いの場を移し、ホームランの出やすい本拠地になりましたが、黒田投手は結果を残して先発のポジションの座を守り通したのです。
東西の名門チームに合計7年間在籍し、そのうち6年間は30先発180イニング以上をマーク。9イニングあたりわずか1.99与四球・0.88被本塁打という、抜群の制球力と一発を許さないピッチングは実に見事でした。地元紙ニューヨーク・ポストの辛口で有名なジョエル・シャーマン記者が「メジャー史上、最も成功した日本人投手」と評価したぐらいです。
「しっかりイニングをこなせば、それなりの評価をしてくれる」
かつて黒田投手は後輩の前田投手に、このようなエールを送りました。
メジャーでの1先発平均イニング数を見ると、黒田投手(6.25イニング)は前田投手(5.31イニング)を上回っています。新天地で先発の座を守るためには、ここにもヒントがあるのではないでしょうか。
同じエースナンバー18をつけた偉大な先輩——黒田投手から多くのことを学ぶことで、前田投手はア・リーグでもさらに飛躍できると思います。