東京競馬場における春のGI5週連続開催。第2弾は、古馬牝馬の「女王決定戦」GIヴィクトリアマイル(5月17日/東京・芝1600m)である。 今回の注目は、なんといってもGI6勝を誇るアーモンドアイ(牝5歳)の参戦だ。断然人気になるのは…

 東京競馬場における春のGI5週連続開催。第2弾は、古馬牝馬の「女王決定戦」GIヴィクトリアマイル(5月17日/東京・芝1600m)である。

 今回の注目は、なんといってもGI6勝を誇るアーモンドアイ(牝5歳)の参戦だ。断然人気になるのは、間違いないだろう。

 ただし、同じ東京の芝マイルを舞台とした昨年のGI安田記念では、不利があったとはいえ、3着に敗れている。また、前走のGI有馬記念(12月22日/中山・芝2500m)では9着と惨敗を喫し、今年初戦に予定していた『ドバイワールドカップデー』のGIドバイターフ(3月28日/UAE・芝1800m)が、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって急きょ中止に。無出走での海外遠征を強いられた。

 アーモンドアイにとって、ここは仕切り直しの一戦となるのだが、不安材料は尽きない。しかも、ヴィクトリアマイルと言えば、圧倒的な1番人気の馬がしばしば敗れている。古くはウオッカ(2008年2着)、過去10年を振り返っても、ブエナビスタ(2011年2着)やミッキークイーン(2017年7着)らが苦杯をなめている。

 そうした状況にあって、日刊スポーツの松田直樹記者は、アーモンドアイ、さらには人気上位が見込まれる昨年のオークス馬ラヴズオンリーユー(牝4歳)にも疑いの目を向ける。

「過去10年の勝ち馬はすべて、前走からの間隔が3カ月以内。今年の出走馬で、これに該当しないのは、アーモンドアイとラヴズオンリーユーだけ。しかも、ともにドバイワールドカップデーのレースに挑むため、UAEまでの長距離輸送をこなして、レースを使うことなく、とんぼ返り。はたして、このリズムの狂いがどう影響するのか……。

 加えて、アーモンドアイは有馬記念から、ラヴズオンリーユーはGIエリザベス女王杯(3着。11月10日/京都・芝2200m)からと、2頭は今回、前走から大幅な距離短縮となります。

 先週のGI NHKマイルCでは、2番手のラウダシオン、逃げたレシステンシアによるワンツーフィニッシュ。今週からBコース使用となれば、先行有利の状態は続くでしょう。そんな高速馬場にあって、慣れないマイル戦のペースに戸惑うようなことになれば、人気馬不発の可能性は十分にあり得ます」

 中日スポーツの大野英樹記者も、アーモンドアイに付きまとう”不運”を嘆く。

「昨年暮れの香港遠征を熱発で回避し、目標を切り替えた有馬記念で9着。自身初となる馬券圏内(3着以内)を外すという惨敗を喫して、立て直しを図って臨む予定だったドバイ遠征は、レース自体が中止という憂き目に。結果、戦わずして帰国と、最近のアーモンドアイのリズムはどうにも悪い。ドバイ遠征による心身のダメージを考えれば、今回も不安は拭えません」

 とはいえ、大野記者は、アーモンドアイのこれまでの実績を尊重。牝馬同士の戦いとなるここでは、「一目置くべき」と言う。

「有馬記念や、昨年敗れた安田記念とは違って、今回は牝馬限定戦。アーモンドアイが普通に走れば、普通に勝てるはず。有馬記念の時のように、順調さを欠いたあとの一戦ではないですから、なおさらです。むしろ、”荒れる”レースの相手探しに徹するほうがいいでしょう」

 実際、ヴィクトリアマイルは波乱が多く、2015年には3連単で2000万円超えの超高配当が飛び出している。それに、1番人気が絡んだ際にも好配当が生まれているだけに、そうした狙いも悪くない。



ヴィクトリアマイルでの一発が期待されるスカーレットカラー

 そこで大野記者は、スカーレットカラー(牝5歳)を推奨する。

「これまでは、馬体減を常に危惧されてきましたが、ここに来て、充実した馬体をキープ。カイ食いの心配をする必要がなくなりました。その結果、1週前の追い切りでも、びっしりと攻める稽古が消化できていました。

 滑るような形でゲートを出て、後方からの競馬になった前走のGII阪神牝馬S(2着。4月11日/阪神・芝1600m)でも、上がりタイムは勝ったサウンドキアラ(牝5歳)を上回っていました。今の状態のよさなら、アーモンドアイにもかなり迫ることができるんじゃないでしょうか」

 大野記者はもう1頭、「面白い馬がいます」と言う。

「セラピア(牝4歳)です。激しい気性によって、出世は遅れてしまいましたが、年が明けてから条件戦を連勝。心身ともに成長したことがうかがい知れます。まだ折り合い面には課題を残すものの、相手が強化され、流れが速くなるGIのほうが、むしろレースをうまく運べるのではないでしょうか。

 先週の東京・芝コースは、先行有利の馬場状態でした。Bコースに替わって、その状態が続くようであれば、この馬の脚質と機動力は大きな武器になると思います」

 一方、松田記者は人気急落の実績馬2頭に注目する。1頭目は、昨春のGIIIフラワーC(中山・芝1800m)を制して、GIオークス(東京・芝2400m)の有力候補にも挙げられたコントラチェック(牝4歳)だ。

「土曜日の天気がどこまで崩れるかが気になるところですが、現在の馬場状態から大きく変わることがなければ、同馬の先行力が生きるはず。なにしろ、良馬場で逃げた場合、重賞2勝を含めて、4戦4勝とパーフェクトですからね。

 オークスも良馬場でしたが、他の馬にハナを奪われたうえ、距離も影響したと思います。その他の敗戦はすべて、やや重から重という馬場でした。ですから、不良馬場だった前走のGIII中山牝馬S(3月14日/中山・芝1800m)の敗戦(16着)も参考外。今回は、巻き返しが期待できます。

 コントラチェックを管理する藤沢和雄調教師も、『今は具合がいい。追い切りも、気持ち的にも。良馬場なら、パフォーマンスが違う。スピード競馬が好きで、揉(も)まれなければ。とにかく、時計が速くなるのは、得意中の得意』と言って、大きな期待をかけていました」

 松田記者が注目する2頭目は、一昨年の「2歳女王」ダノンファンタジー(牝4歳)である。

「2走前のGI秋華賞(8着。10月13日/京都・芝2000m)、前走の阪神牝馬S(5着)と、2戦続けて1番人気を裏切っていますが、実はヴィクトリアマイルの過去5年の連対馬10頭中、7頭が連敗からの巻き返しに成功、というデータがあります。近走の成績を問わないのが、このレースの傾向でもあるんです。

 前走は馬体重22㎏増と、良化の余地をたっぷり残しての参戦。その阪神牝馬Sは、過去10年で最も相性がいいステップレースですから、そこを叩いて順調に大一番を迎えられることは、何より好材料です。2018年のGI阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神・芝1600m)優勝や、昨年のGIIローズS(阪神・芝1800m)でのレコードVなど、秘める能力は現役トップクラス。侮れませんよ」

「現役最強馬」アーモンドアイを巡っての女王争い。歴史が示すとおりに”荒れる”なら、ここに挙げた4頭がその一端を担うはずである。