仙台六大学野球の秋季リーグ戦で仙台大が東北学院大を4-2で下し、3季ぶり5度目の優勝を飾った。明治神宮大会出場をかけ、22日から行われる第8回東北地区大学野球代表決定戦に出場する。■3季ぶり5度目の優勝、中心選手の松本桃太郎が胸に秘めていた…

仙台六大学野球の秋季リーグ戦で仙台大が東北学院大を4-2で下し、3季ぶり5度目の優勝を飾った。明治神宮大会出場をかけ、22日から行われる第8回東北地区大学野球代表決定戦に出場する。

■3季ぶり5度目の優勝、中心選手の松本桃太郎が胸に秘めていた思い

 仙台六大学野球の秋季リーグ戦で仙台大が東北学院大を4-2で下し、3季ぶり5度目の優勝を飾った。明治神宮大会出場をかけ、22日から行われる第8回東北地区大学野球代表決定戦に出場する。優勝に大きく貢献した仙台大・松本桃太郎内野手(4年)には、この秋のリーグ戦にかけた秘めた思いがあった。

 打線が序盤に得点を重ね、投げては帝京高出身の1年生・稲毛田渉が8安打7奪三振の完投。2015年春のリーグ戦以来、3季ぶりの優勝に森本吉謙監督は「まだまだですが、今日はよくやったと言いたいですね。難しい戦いだったと思います。(前回の優勝から)間が2季空いて、このままズルズルと行ってはいけないシーズンだと思っていた。決して強いチームではない中、日替わりヒーローが出て、それぞれがやってくれました」と喜びをかみしめた。

 14年春。仙台大はプレーオフを制して67季ぶりに優勝した。当時3年生の熊原健人投手(現DeNA)がチームをけん引。熊原が4年生になった15年春もリーグの頂点に立ったが、同年秋は2位、今年春は3位と苦杯をなめた。森本監督は「危機感より、意地があったような気がします」と言う。

「なんだかんだ言って、(昨年まで)熊原がいたからでしょ、とは絶対に言われたくなかった。そうじゃないと証明するには勝つしかなかった」

 その“証明”のキーマンとなったのは今秋のドラフト候補・松本だ。前節では、リーグの通算安打記録を更新し、1試合2本塁打もマーク。8日の試合でも先制弾を放つなど、バットでチームを引っ張った。「最後のリーグ戦が一番、野球をやっていて楽しかったし、充実した時間にも、いい結果にもなりました」と笑顔を見せた松本は、森本監督と同じ思いを明かした。

■「クマさんがいないと勝てないとは思われたくないと」

「自分たちの力で勝てて、ホッとしています。クマさん(=熊原)が抜けて、僕らはこの春、勝てなくて。仙台大はクマさんがいないと勝てない、クマさんがいたから優勝できたとは思われたくないと思っていました」

 そして、この秋のリーグ戦に懸けていた秘めた思いも語った。

「自分もずっとプロに行きたいと思っていましたが、監督から『プロに行きたいのなら自分の力でチームを勝たせろ』と言われたんです」

 今春のリーグ戦後、進路について話した時だった。プロに進むことを希望した松本に森本監督がかけた言葉は「それなら、秋はお前の力でチームを勝たせろ。それができればプロは見えてくる」というものだった。

「刺さったんですよ、言われたことが。言い返そうと思ったんですけど(笑)、それが現実だったので。プロに行きたいって言っているくせに何もできなかったな、不甲斐ないなって。今でも思い出すと痛いです、胸が。それくらいグサッときて。そんなことを言われるとは思っていなかったので」

 松本は1年春からフルイニングでリーグ戦に出場を続け、毎シーズン、好成績を残してきた。しかし、森本監督の中には、物足りなさがあったのだろう。秋のリーグ戦を戦う上で、また、松本の将来を見据えて“本気”の奮起がほしかったのではないだろうか。

 指揮官の言葉で松本の心に「このままではプロに行けない。チームを勝たせられない選手が、次のステージには行けない」と火がついた。オフも返上してひたすらバットを振った。「自分だけが打てば勝てるわけじゃない」と、これまではチームメイトに「上から目線になる」と遠慮していた打撃の話も積極的にするようになった。

 自分のために頑張るのではなく、チームのために頑張る。決して、自分本位な選手だったわけではないが、チームへの貢献度を考え始めた松本の変化がチームを躍進させた。

■「自分のバットでチームを勝たせることを考えてやってきた」

「松本の存在は大きかったと思いますが、それだけでは勝てなかった。松本に引っ張ってもらった部分と、逆に松本が仲間に引っ張ってもらった部分がある。リーグ優勝は、部員、全員のものです」

 森本監督はこう振り返る。前日までは大当たりだったが、この日の試合前に「今日は打てないと思います。朝のバッティング、良くなかったんですよね」と話していたことが的中(?)し、この日は内野安打1本。5回には犠飛を打ったが、1番・望月隆晟(2年)が先制の2点タイムリーを放つなど、周りが安打を重ね、「僕、今日の試合はチームの得点にあまり関わっていないんですけど、他の選手が打ってくれて勝ちゲームにできました」と喜んだ。

 1年秋のリーグ戦で打撃三冠など、タイトルを総なめにした。最後のリーグ戦は打率5割、10打点、4本塁打。リーグ通算安打は120に伸ばした。

「自分のバットでチームを勝たせることを考えてやってきました。完璧にできたかはわからないけど、春よりはチームを救えたと思います。力は出し切りました。次はトーナメントなので負けたら終わり。その試合、その試合を全力で、相手を倒しに行きたいと思います。ミスも出ると思いますが、みんなでカバーしていきたいと思います」

 昔話の桃太郎には勇敢な仲間がいた。仙台大の桃太郎にも信頼できる強力なチームメイトがいる。次なる戦いは明治神宮大会出場をかけた東北地区の代表決定戦だ。

高橋昌江●文 text by Masae Takahashi