写真:德永美子(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ

学生卓球界の“優勝請負人”が実業団の十六銀行に加入した。その名は德永美子(とくながみこ・23歳)。

德永は、四天王寺羽曳丘中学で団体日本一、希望が丘高校でインターハイ団体準優勝、早稲田大学ではインカレ3連覇とチームをことごとく全国上位に導いてきた。

社会人1年目でも日本リーグ年間王者を決めるファイナル4決勝戦のラストで勝利し、十六銀行に栄冠をもたらした。そんな德永に卓球人生を振り返ってもらった。

全国制覇に一歩及ばず 団体戦への苦手意識

福岡の名門・希望が丘高校で德永は、レギュラーとして高校1年と3年でインターハイ団体準優勝、高校2年でも3位を経験した。だが意外にも德永は「高校のときは団体戦が苦手だった」と明かす。

チームは、中学からの同級生で同じサウスポーの前田美優(現・日本生命)がエースを張り、高校1年のインターハイ個人戦では、優勝が前田、準優勝が德永とワンツーフィニッシュを決めている。




写真:德永美子(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ

「高校のときはチームメートが強くて、自分が1点取れば勝てるのに何回も負けてしまって周りに申し訳なかった。そういうのもあって団体戦はあんまり好きじゃなかった」と勝利のプレッシャーに苦しんだことを吐露した。

卓球は団体戦とは言え、個々人の勝ち星の総数でチームの勝敗が決まる。そのため、他のチームスポーツよりも敗戦の責任が重くのしかかる。

今でも德永の脳裏に強く焼き付いている試合がある。高校3年のインターハイ、四天王寺高との決勝戦だ。エース前田がシングルス、ダブルスで2勝するもラストで德永がフルゲームの末敗れ、全国制覇を逃した。

「二人(德永、前田)とも中学まで四天王寺に行ってたので、四天王寺高校はライバルみたいな感じでした。同い年の森薗(美月)選手に2-3で負けて、チームが負けた時は…ちょっと一回卓球を休憩したいと思いました」。

団体戦に苦手意識を持ったまま德永は希望が丘高校を卒業し、次なる進路として創部95年の歴史を誇る早稲田大学の門を叩いた。

「周りの人のためにも頑張りたい」 団体戦を好きになった大学生活

大学卓球界有数の強豪校である早稲田大学では、春と秋の関東学生リーグやインカレでの優勝を目標に日々選手たちが鍛錬を重ねる。インターハイ準優勝校のレギュラーメンバーだった德永は、大学でも1年生からレギュラーに抜擢された。




写真:德永美子(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ

「春のリーグから出させてもらったのに負けまくってました。秋のリーグでも1試合目、3-3のラストの場面で自分が負けてチームも負けて、もう落ちるとこまで落ちてました…」。

秋のリーグ戦、4年生は学生生活の集大成として臨む。その初戦で敗れてしまい、どん底まで落ちた1年生の德永に救いの手を差し伸べたのは、悔しいはずの4年生たちだった。

「負けたときに4年生の先輩方が声をかけてくれました。『負けてすいませんじゃなくて、出してもらったんだから自信持って。その繰り返しだよ』と言ってくれた。翌日の試合でぎりぎり勝てたときに、まだリーグ戦終わってもないのに自分がめっちゃ泣いちゃって、ベンチで応援してくれた人も涙を流してくれた。そこでみんなの“温かさ”みたいなのを経験できて、周りの人のためにも頑張りたいと初めて実感が沸いた1試合でした」。




写真:インカレ3連覇を果たした早稲田メンバー。写真右1人目が德永美子/撮影:ラリーズ編集部

立ち直った德永は、シングルス4勝2敗と勝ち越し、チームも初戦以外全勝で6勝1敗と秋リーグ優勝を勝ち取った。

「4年生が泣いて喜んでくれて嬉しかったです。ここから徐々に団体戦が好きになっていきました」。

団体戦のスランプを脱した德永は、大学生活で八面六臂の活躍を見せた。特に主将を務めた4年生時には、創部史上初のグランドスラム(春リーグ、インカレ、秋リーグの3冠)の快挙を成し遂げ、名実ともに“優勝請負人”となった。

次は個人戦で日本一へ

德永は、大学卒業後入社した十六銀行でも、前期日本リーグ優勝、全日本実業団優勝、ファイナル4優勝を成し遂げたチームの快進撃に貢献した。




写真:同期の安藤みなみと組むダブルスでも活躍する徳永美子/撮影:ラリーズ編集部

「最初は大学と試合の雰囲気が全然違いましたが、徐々に慣れていきました。1年目は全員で盛り上がって、最後まで粘って優勝できた。すごく良い経験をさせてもらいました。それに満足せずに今年は全部優勝する気持ちでみんなで頑張りたいと思います」。

充実の1年目を振り返るとともに2年目のシーズンへ意気込んだ德永は、最後にもう1つ目標を掲げた。




写真:德永美子(十六銀行)/撮影:ハヤシマコ

「個人戦では2位や3位が多くて、小さい頃から全国大会優勝を1回もできてない。なので全日本社会人で優勝したいです」。

大学、実業団と、団体戦の醍醐味を知る徳永が、個人戦でも表彰台の頂点を目指すとき、さらに十六銀行の強さは加速していく。

取材・文:山下大志(ラリーズ編集部)