自粛アマ選手に金言「野球の技術は、全体練習ではうまくならない」 元巨人内野手の仁志敏久氏が江戸川大学(千葉県流山市)の客員教授に就任し、14日にオンラインで初授業を行った。同大学では新型コロナウイルスの感染拡大をうけて新年度の授業開始が遅れ…

自粛アマ選手に金言「野球の技術は、全体練習ではうまくならない」

 元巨人内野手の仁志敏久氏が江戸川大学(千葉県流山市)の客員教授に就任し、14日にオンラインで初授業を行った。同大学では新型コロナウイルスの感染拡大をうけて新年度の授業開始が遅れていたが、この日オンライン限定でスタートした。

 仁志氏は常総学院高、早大、日本生命を経て、1995年ドラフト2位(逆指名)で巨人入り。強打の1番打者として活躍する一方、華麗な二塁守備でゴールデングラブ賞に4度輝いた。2007年から3年間は横浜(現DeNA)、10年には米独立リーグでもプレーした。

 現役引退後は、同い年の小久保裕紀監督の下で侍ジャパンの内野手守備走塁コーチを務め、15年のプレミア12、17年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)第4回大会に参戦。その傍ら、14年から現在に至るまで、U-12(12歳以下)侍ジャパン監督を務めている。また、筑波大の大学院でコーチングを学び、16年3月に人間総合科学研究科の修士課程を修了。今年4月1日付けで、江戸川大学社会学部経営社会学科の客員教授に就任した。侍ジャパンでの指導経験や大学院での学習成果を生かし、「スポーツ指導者論1」の授業を14回(1回100分)担当する。

現12歳以下侍ジャパン監督、筑波大大学院を修了

 初授業の冒頭、“仁志先生”は大学構内の自身の研究室から、ビデオ会議ツール「Google Meet」を通じ、それぞれパソコンの前で見つめている学生約130人に向けて、こう語り掛けた。「本当はみなさんと教室でワイワイやりながら、楽しい授業がしたかったです。オンラインになってしまいましたが、なるべく楽しくできるように考えていきたいと思います。あまり固く考えないでください。『スポーツ指導者論』という名前にはなっていますが、一般社会に出て部下や後輩を持った時にも使える、コーチングの話をしていきたいと思っています」

 授業は、仁志氏が自らパワーポイントで作成したスライドを見せながら展開。そこには、仁志氏が2011年に“野球王国”と呼ばれるドミニカ共和国をテレビ番組の取材で訪れた時の写真、16年に米大リーグ・ダイヤモンドバックスの若手秋季キャンプに指導者として私費留学した際の写真や練習メニューなど、レアな資料が盛り込まれていた。

 100分の授業の最後には、受講した学生あてにアンケート用紙をメールで送信することを予告。自分がどんなスポーツをやっていたか、どんな指導者に出会ってきたか、印象に残った言葉、嫌だったことなどを、記入して返信することを求めた。

 授業は少なくとも今月いっぱい、オンラインで行われる見通しだ。仁志氏は「現状ではスライドでしか伝えられないので、スライドをつまらなくしないように、なるべく飽きさせないようにと考えました。今後は、AED(自動体外式除細動器)を使った心肺蘇生法とか、どうしてもオンラインでなく実際にやってほしいこともあります」と言う。

レギュラーで授業を受け持つのは初めて

 一昨年12月6日に特別講師として江戸川大学に招かれたことはあったが、レギュラーで授業を受け持つのは初めて。それでも「学生が授業をつまらないと感じるとすれば、それは教師の責任だと思う」と甘えや言い訳は一切口にしない。

 この日、受講した学生からは「わかりやすくて、面白かったです」といったチャットメッセージが届き、仁志氏にとっては上々の“デビュー戦”だったようだ。「どちらかというと、教えるというより、僕の方が学んでいます。資料を作るために、いろいろなものを読み直したり、初めて読んだりしていて、『へーっ』と思うことが多いです」と語った。

 その仁志氏に、現在チーム練習ができないでいる、少年少女を含むアマチュア野球選手向けのメッセージを求めると、こう熱弁した。「こんな時だからこそ、家で素振りやトレーニングをすることが増えると思う。実は野球の技術は、1人で練習する時に1番うまくなる。逆に言えば、全体練習でうまくなることは、まずありえない。全体練習は、チームプレーのクオリティを上げたり、自分の技術を確認するためのもの。全体練習を練習と思わず、1人で練習することが必要なのだと、やってみれば気付くと思う」

 これこそ、171センチとスポーツ選手としては小柄な仁志氏が、常総学院高、早大、日本生命、巨人と各カテゴリーの名門を渡り歩き、常に中心選手として活躍できた秘訣。学生にも伝承されていくのだろう。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)