東京・有明で開催されている「楽天ジャパンオープン」(ATP500/本戦10月3~9日/東京・有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コート/賞金総額136万8605ドル/ハードコート)は6日目、シングルス準決勝2試合とダブルス準決勝1試合…

 東京・有明で開催されている「楽天ジャパンオープン」(ATP500/本戦10月3~9日/東京・有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コート/賞金総額136万8605ドル/ハードコート)は6日目、シングルス準決勝2試合とダブルス準決勝1試合が行われた。

 シングルスはいずれも下位選手が上位を破る結果に。世界ランキング14位で第5シードのダビド・ゴファン(ベルギー)は11位で第4シードのマリン・チリッチ(クロアチア)を7-5 6-4で破り、15位で第6シードのニック・キリオス(オーストラリア)は8位で第2シードのガエル・モンフィス(フランス)を6-4 6-4で下した。

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 雨天で屋根が閉まった有明コロシアムは暗いムードになりがちだが、ハイレベルで見応えあるプレーの連続に観客は沸いた。

 中でもゴファンの人気は日に日に高まっている。順当なら錦織圭(日清食品)だったはずのドロー表のトップハーフから勝ち上がってきたゴファンは、自分のテニスについて錦織に似ていると話していた。「すべて、錦織のほうがレベルが上なんだけど」と付け加えて。

 そのことは日本での人気と無関係ではなく、180cm、68kgとテニス界では小柄で華奢なゴファンに親近感を抱き、彼が大きな選手に対して頭と技を駆使する姿には感嘆のうなり声が漏れる。

 柔能く剛を制す、と言うが、ゴファンとチリッチの戦いはまさにそれだった。過去2度の対戦でいずれも勝っているゴファンは、「(チリッチは)早い展開を嫌がっているようだった」と対戦時の印象を語ったが、その手応えを信じ、やはりスピーティーなプレーを積極的に仕掛けていった。

 先にブレークしたのはチリッチだった。第1セット第8ゲーム、デュースのあと、チリッチが両者を通じて初めてのブレークポイントを握る。そこでゴファンは痛恨のダブルフォールト。しかしゴファンが『チャレンジ(自動ライン判定)』を要求すると、ボールはラインをかすめていたためポイントはファーストサービスからやり直しに。

 「フォールト」のコールの前に、チリッチはリターンをネットにかけていたようにも見え、ゴファンは自分のポイントになるはずだと主審に抗議。しかし叶わず、結局、アドバンテージを握っていたチリッチがラリー戦を制してブレーク成功という流れだった。

 この状況からゴファンがよく立て直した。ファーストサービスの入りがよくないチリッチのセカンドサービスを攻めるのはもちろん、ファーストサービスにもきれいに面を合わせてラリー戦に持ち込み、ブレークバック。

 リターンには自信を持つゴファン、本人いわく「生まれつき」の目のよさと、「子供の頃から体が小さかったので、勝つためにライジングを磨く中で、自然と動体視力も鍛えられた」ことが、ビッグサーブに対する好反応にも表れているのだろう。

 また、ディフェンスも堅く、特に追い込まれて繰り出すバックハンドのスライスは絶妙だ。コートの外に追い出された位置からのダウン・ザ・ラインへのショットも、針の穴を通すように正確だった。

 次のサービスをキープすると、第11ゲームで2度目のブレーク。結局、3-5から4ゲーム連取で第1セットを奪うと、第2セットは第5ゲームをブレーク。そのリードを最後まで危なげなく守った。  「初めての東京でこんなにいいプレーができて本当にうれしい」 

 ATP500大会での決勝進出は一昨年のバーゼル以来。このカテゴリーでの初タイトルをかけ、勢いに乗る21歳のキリオスと戦う。

 「チリッチのような実績ある選手に3度も勝ったのだから、自分もこのレベルの大会に勝てるはず」 25歳は自信ありげに微笑んだ。 (テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)