東京五輪世代ポジション別スター候補(4)サイドバック 現在、世界最高のサイドバックのひとりは、イングランド代表アレクサン…
東京五輪世代
ポジション別スター候補(4)
サイドバック
現在、世界最高のサイドバックのひとりは、イングランド代表アレクサンダー・アーノルド(21歳、リバプール)かもしれない。そのキックは魔法の杖を振るようで、華やかにゴールを演出する。そのキック技術を敵が警戒することによって、右サイドの局面を優位に転じられる。昨シーズンはリバプールの欧州制覇にも大きく貢献した。

売り出し中の左サイドバック、レナン・ロディ(アトレティコ・マドリード)
現代サッカーでは、サイドを主戦場にして切り崩すチームが多くなっている。リオネル・メッシ(バルセロナ)やクリスティアーノ・ロナウド(ユベントス)もそうしてスターダムを駆け上がっていった。分厚く守る中央よりも、サイドに切り込める選手を置き、コンビネーションで突破するのが定石だ。
一方、SBはその攻撃を食い止め、防御線を越えさせず、さらに攻撃の活路になることが仕事になる。守れるだけでも、攻めるだけでも足りない。攻守一体。戦術的変化に対応し、アップデートできるセンスが不可欠となっている。
ひとつだけ変わらないSBの潮流は、「ブラジルが宝庫」という点かもしれない。
東京五輪で最も期待される左サイドバックは、ブラジル代表レナン・ロディ(21歳、アトレティコ・マドリード)だろう。
ロディは、ブラジルの左サイドバックの系譜を継いでいる。左足のキック技術が突出し、プレーメーカーと似た資質を持つ選手と言っていいだろうか。歴代のレオナルド、ロベルト・カルロス、マルセロ、フィリペ・ルイスは、それぞれプレースタイルは違うものの、サイドでボールを引き出し、防御線を破られないという2点で飛び抜けていた。
ロディもアトレティコでその真価を見せつつある。シーズン序盤は戦術面での適応に苦しんでいたが、試合ごとにフィット。左足のキックやドリブルは傑出しているだけに、どこまで伸びるか。チャンピオンズリーグ(CL)のリバプール戦でも、高い水準のプレーで勝ち上がりに貢献していた。
左サイドバックはほかにも群雄割拠の状況にある。
フランスU-23代表テオ・エルナンデス(22歳、ミラン)は、レアル・マドリードが投資をしたことでもわかるように素質は十分。スペイン時代は守備面の課題が多く出ていたが、左足キックは大きな武器だ。
スペインU-23代表マルク・ククレジャ(22歳、ヘタフェ)も、リーガで1.2を争うパフォーマンスを見せる。バルサの下部組織育ちで、そのテクニックは申し分ない。エイバル、ヘタフェというクラブで守備面を鍛えられ、大人の選手に成熟した。
そして、カナダ代表アフォンソ・デイビス(19歳、バイエルン)は規格外と言える。左ウィングからコンバートされ、めきめきと頭角を現している。マーキングやカバーリングなど、ディフェンス面ではまだ改善の余地はあるが、スピードは桁違いだ。
一方の右サイドバックは、ベンジャミン・パバール(21歳、バイエルン)、ノルディ・ムキエレ(22歳、ライプツィヒ)などフランス人の台頭が目立つ。2人ともCLベスト16のチームのレギュラーを務める。また、コリン・ダグバ(21歳、パリ・サンジェルマン)もフィジカル面で優れ、貴重なバックアップとなっている。
ただ、若くしてフィジカル的アドバンテージによって目立つSBは、その後に苦労することもしばしばだ。
「SBは結局、クレバーな選手が生き残る。周りとの連係で守って、局面を優位にし、その優位を攻撃につなげられるか。力技ばかりが目立つと、結果的に戦術面の弱点をさらすことになる」
これは名門アスレティック・ビルバオの育成指導者の言葉だが、SB論として的を射ている。経験を糧にできるかも大事になる。その点は、他の守備的なポジションの選手同様と言える。
一方で、少しでもスピードが衰えると、血気盛んなアタッカーに後れを取って、粗が目立つことになる。その点、必ずしも熟練さは役に立たず、フィリップ・ラームのように早く見切りをつける(33歳で引退)選手も少なくない。パオロ・マルディーニ、カルレス・プジョル、セルヒオ・ラモスは、20代でセンターバックにコンバートされた。実はデリケートなポジションだ。
日本は、内田篤人(鹿島アントラーズ)、酒井宏樹(マルセイユ)という世界的なSBを輩出してきた。
内田は予測能力に優れるだけでなく、持ち前の速さで相手を制し、攻撃の突破口になった。日本人史上最高のサイドバックと言える。酒井も屈強さは日本人離れしており、戦いの中で駆け引きも身につけた。
だが、森保一監督が率いる東京五輪代表は、3-4-2-1というフォーメーションを敷く限りSBが存在しない。システムありきなのか、人材がいないのか。岩田智輝(22歳、大分トリニータ)などはSBの素養がある選手に思われるが……。
サイドバックは早く旬が訪れる可能性があるポジションだと言えよう。それだけに東京五輪での見どころのひとつになるかもしれない。