テニス界の悪童として知られるニック・キリオス(オーストラリア)は、25歳の誕生日をファンに「電話しないでくれ」と頼みながら過ごした。それというのも、同じテニス界の若手スターであるステファノス・…

テニス界の悪童として知られるニック・キリオス(オーストラリア)は、25歳の誕生日をファンに「電話しないでくれ」と頼みながら過ごした。それというのも、同じテニス界の若手スターであるステファノス・チチパス(ギリシャ)がキリオスの電話番号をSNSで公開してしまったせいらしい。ニュースメディアRT.comが報じた。キリオスは誕生日に、過去の誕生日パーティの映像を組み合わせて投稿、その最後で彼に電話しようとするのはやめてくれるよう頼んだ。チチパスが彼の電話番号を公開してしまったからだ。

世界ランキング6位のチチパスは、頭の上に「僕に電話して」という言葉と電話番号らしき数字を書いた紙を掲げた自身の画像を投稿し、86万人以上いる彼のフォロワーを混乱させた。

好奇心の強いファンたちは、その番号がオーストラリアのものであることに気付き、コート内外の派手な言動で有名なキリオスの番号らしいと噂が広まると、電話をかけてみるファンが出始めた。

キリオスはInstagramのストーリーで、最初は「これでツアーで大麻が吸える」などと冗談を言っていたが、最後は真面目なトーンになって語った。「25歳の誕生日、大きな節目だ。だけど…チチパスが僕の電話番号をInstagramに載せたらしいね。どうか電話をするのをやめてくれ。音楽さえ聴けない、何もできない。どうか僕の携帯電話に電話するのをやめてくれ。感謝するよ」

最初に番号を公開してから8時間も、チチパスはそれを削除することはせず、今度は「ニックに電話するのはやめて」というメッセージを掲げた写真をアップした。

一方のキリオスには、140万人を超えるフォロワーがいる。二人は1月の「ATPカップ」で対戦し、3セットすべてタイブレークという接戦をキリオスが制した。そして最近チチパスがSNSに上げた高さ1mはありそうな台にジャンプする動画に、キリオスは「ひどいな、ステファノス・チチパス…笑えるよ」とからかいのコメントをつけた。

チチパスの公表した番号で、キリオスと話せるかと期待してかけてみた多くのファンはがっかりしたようだ。「かけてみたけど、出られないからメッセージを残して下さいって」というファンもいれば、「フェデラーの番号を教えて」というファンもいた。

キリオスはトゲのある性格で知られているが、今はチチパスとは以前よりは良好な関係のようだ。それは彼らの2回の対戦がどちらもタイブレークでの接戦であったことによるのだろうか。

昨年の「ATP500 ワシントンD.C.」では、キリオスは靴紐が切れたチチパスのために、チチパスのチームからシューズを届け、跪いて渡した。二人の対戦でのもっとショッキングな出来事は、「ATPカップ」で第1セットを取られた時に、チチパスはそれこそキリオスがよくやるようにラケットをたたきつけ、そばにいた自分の父親を怪我させてしまったことだ。

チチパスの父は安全な所へ避難し、息子がペナルティを課せられ、その後母親から叱り飛ばされるのを見守った。

「自分もその時の感情に任せてバカなことをしてきたよ。(父親にあたったのは)明らかに事故さ」とキリオスは語った。キリオスがしてきたこととは、ラファエル・ナダル(スペイン)との試合中に彼の真似をしたり、1つの大会でラケット破壊・審判への暴言・試合途中でコートを去るなどして11万3千ドル(約1200万円)の罰金をくらったことなどだろうか。

チチパスのジャンプについては、ファンの多くがキリオスの意見に同意し、「次世代選手たちがやった中でも最もバカなこと」という意見もあった。

キリオスはアメリカのテニス・レジェンドで、やはり短気な言動で知られていたジョン・マッケンロー(アメリカ)への崇拝の念をしばしば明らかにしている。「マック(マッケンローの愛称)、もしも僕らが同世代だったら、一緒に楽しい思いができたと思うよ」

キリオスは新型コロナウイルスのパンデミックによるロックダウンを故郷であるオーストラリアのキャンベラで過ごしている。誕生日の数日前に彼がInstagramに上げた自身の写真につけた心のこもったコメントはこうだ。

「今のバージョンの僕は一夜にしてできたものじゃない。それは経験。苦痛。不安。虐待。落ち込み。ここへ来るまで、いろんなことを潜り抜けて来なければならなかった」

※為替レートは2020年4月28日時点

(テニスデイリー編集部)

※写真は2019年「ATP500ワシントンD.C.」でのキリオスとチチパス

(Photo by Marlena Sloss/The Washington Post via Getty Images)