■TBSの上村彩子(かみむら・さえこ)アナウンサーが現場で取材した大会でのエピソードや舞台裏、インタビューしたアス…

■TBSの上村彩子(かみむら・さえこ)アナウンサーが現場で取材した大会でのエピソードや舞台裏、インタビューしたアスリートの魅力や意外な一面などを伝えるこの連載。今回は、パラリンピックの競技のひとつ、ゴールボール女子の欠端瑛子選手を紹介。新型コロナウイルス感染拡大の影響のなか、厳しい状況にありながらも、1年後に延期になったパラリンピックでの金メダルを目指して、前を向いています。

番組でゴールボールを体験した上村彩子アナウンサー
先日、BS-TBSの『アスリート夢共演』の収録でゴールボールの欠端瑛子選手にお話をお聞きすることができました。
ゴールボールとは、視覚障がい者1チーム3人で2チームが向き合ってボールを投げ合い、幅9mのゴールを守るスポーツです。競技に使うボールは、叩くとコツコツ音が鳴るぐらいかなり固く、中に鈴が2つ入っています。大きさはバスケットボールとほぼ同じなのですが、重さは倍の1.25kg。コートはバレーボールと同じ広さ(縦18m、横9m)で、12分ハーフで行なわれます。
欠端選手のような弱視の選手も全盲の選手も同じ条件になるように、全員スキーのゴーグルのような「アイシェード」(目隠し)をつけて競技するのですが、目隠しをして視界が真っ暗ななかどうやって自分の位置を把握したり、ゴールの位置がわかったりするのか疑問に思いませんか?
実はコートラインの下には3ミリ以下の紐が入っていて、選手はそのラインの凹凸を手で触ったり、足で踏んだりすることで位置や方向を把握します。座りながら、いつでも動ける体制をとって自陣のゴールをガードして、ボールを取ったらすぐに投げ返す。ボールをバウンドさせなくてはいけないエリアも決まっているため、とにかく空間認識が必要な非常に難しい競技です。
また、守備側の選手がボールに触れてから10秒以内にスローイングしないといけないルール(10セカンズ)もあるので、静と動が交互に猛スピードで試合が続いていきます。
私がゴールボールという競技を初めて知ったのは、ラジオ番組『千葉ドリームもぎたてラジオ』での取材でしたが(東京パラリンピックのゴールボールの会場は千葉ポートアリーナの予定)、最初に試合を見た時、思っていたよりも激しいスポーツでびっくりしました。
欠端選手は盲学校に高校から入って、1年生の時に体育の授業でゴールボールに出会いました。しかし、授業では男子混合チームだったので「見えていないなかであのボールを取とるのは怖い」と思って見学。それもそのはず、男子の場合は守備側にボールが来るまでのコート9mの距離を0.5秒でボールが移動します。その0.5秒の間に鈴の音を聞き分けて、自分が守るのか隣の選手に任せるのか判断しなくてはいけません。恐怖から始まったゴールボールとの出会いでしたが、2年生の時にまわりから言われて渋々参加したら楽しくてのめりこんでいったそうです。
番組では元女子バレーボール日本代表の狩野舞子さんと欠端選手が対談。狩野さんにゴールボールを体験していただきました。私もアイシェードをつけさせてもらったのですが、真っ暗で本当に何も見えず、歩くのさえままならないくらい怖かったです。
ボールの中の鈴が鳴って、その音を聞いてボールが来る方向はわかるものの、距離感がうまくつかめません。左右の横のどちらかは分かりましたが、ボールが近づいてくる前後の距離感が難しく、「ここだ!」と思って手を伸ばしても「あれ?まだ来ない」ということに……。
同時に、手を伸ばして守る時に顔に当たらないようにガードもしなくてはいけません。欠端選手によると顔にボールが当たって、鼻血が出ることもあり、試合中そうなるとコートからいったん外に出なくてはいけないため、顔をうまく守ることも必要になります。
また、コート設営の時に糸を貼ってからテープを貼るなどの準備もあり、手間がかかります。今回のロケでは設営に1時間ほどかかりました。ゴールの形が特殊なので(高さ1.3m×幅9m)、収録が行なわれた体育館に解体して運んで来て設置。そうした設備の問題や、コートを組み立てる人、一緒に練習してくれるメンバーが揃わないと十分な練習ができないなど、課題があることも事実です。
ゴールボールの日本女子チームは、2012年ロンドンパラリンピックで金メダルを獲得。ロンドンパラリンピックのあと、ベイスターズの始球式に欠端選手が登場したこともありました。実は、欠端選手の父親は、プロ野球のロッテ、大洋ホエールズ、横浜ベイスターズ(現DeNAベイスターズ)でプレーした欠端光則さん。DeNAの広報や、スカウトもされていました。そうした背景もあって実現した始球式でした。
ゴールボール日本女子代表の欠端瑛子選手
photo by Uehara Yoshiharu
ただ、ロンドンで欠端選手は試合に出る機会が少なく、チームは金メダルを取りましたが個人としては悔しい思いもしました。ロンドン大会後、学業に専念するために1年ほど競技を離れていた欠端選手でしたが、リオパラリンピックを目指して復帰。ポジションはそれまでの守備重視のセンターからレフトにコンバートされ、攻撃力に磨きをかけてきました。2016年リオでは5位でしたが、東京では再び金を狙っています。
東京パラリンピックに向けて、欠端選手が磨いている必殺技があります。それが、「回転投げ」。ボールを投げる前に、体を1回転させてから投げるのですが、回転している間、ボールの中の鈴の音がしないため、相手の対応がわずかに遅くなるという利点があります。ボールのスピードが上がりますし、鈴の音がバウンドの直前まで鳴りにくい投げ方です。
番組で狩野さんがこの回転投げに挑戦したところ、ボールが狙った方向に飛んでいかずに苦戦していましたが、欠端選手自身もまだフォームが安定してないため「これからさらに精度を上げていきたい」と意気込んでいました。「回転投げ」を、欠端選手がマスターすれば、日本の得点源になるはずです。
そのほかにも、ボールを持っていない選手2人がバタバタと足で音を立てて、誰が投げるか分かりづらくするなど、さまざまな駆け引きがあります。音を立てないように隣の味方にボールを渡して投げるポイントを動かすことや速攻なども含めて、テクニックを駆使していきます。
こうしたボールの投げ方や、守り方のフォーメーションなどを知っていくと、ゴールボールの観戦の楽しみは増えていきますし、日本女子チームの新しい必殺技にも注目したいと思います。ヨーロッパ勢や中国も強豪ですが、東京パラリンピックで欠端選手の回転投げが決まって、日本女子チームが金メダルを獲得することを期待しています!
ゴールボールのさらなる魅力や、欠端選手と狩野さんの対談が放送されるBS-TBS『アスリート夢共演』は5月2日(土)と9日(土)11:00~です。
■プロフィール 上村彩子(かみむら・さえこ)1992年10月4日 千葉県生まれ 【担当番組】TV-『S☆1』土/24:30〜 日/24:00〜 『SUPER SOCCER』日/25:20〜 『フラッシュニュース』金21:00頃~(変動あり)