新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、スポーツの世界でもさまざまな競技に影響が及んでいる。リオデジャネイロ五輪で4位に入り、東京五輪で初のメダル獲得を目指している男子7人制ラグビー(セブンズ)日本代表チームも、そのひとつだ。セブンズ…

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、スポーツの世界でもさまざまな競技に影響が及んでいる。リオデジャネイロ五輪で4位に入り、東京五輪で初のメダル獲得を目指している男子7人制ラグビー(セブンズ)日本代表チームも、そのひとつだ。



セブンズ時代のレメキ ロマノ ラヴァ

 練習環境の変化等、選手にとって厳しい状況は続いている。ただ、決して悪い面ばかりではない。五輪開催が1年延期されたことで、選手層はより厚くできるはず。この1年で日本代表に加わる可能性の高い「オススメの外国出身選手」をピックアップしたい。

 まずは、「マノ」の愛称で親しまれている31歳のWTB(ウイング)レメキ ロマノ ラヴァ(元ホンダ・ヒート)だ。

 トンガ出身の両親を持つニュージーランド生まれのレメキは、2009年に来日。その後、日本人の女性と結婚し、2014年に日本国籍を取得した。現在、4人の子どもを持つ父親である。

 昨年のラグビーワールドカップではパワフルなランを披露し、その名はさらに知られるようになった。だが、もともとレメキはセブンズで名を上げた選手だ。

 2013年に初めて7人制日本代表に選ばれると、すぐにトライゲッターとなり、2016年のリオ五輪ではエースとして君臨。圧巻のプレーで大会優秀選手賞「ドリームセブン(ベスト7)」にも選出され、世界のラグビーシーンに名を轟かせた。

 リオ五輪後は15人制に専念し、ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)就任後、すぐに日本代表に選出。右ひざの前十字じん帯断裂という大きなケガを負うも、それを見事に克服する。2019年ワールドカップのサモア代表戦ではPOM(プレーヤー・オブ・ザ・マッチ)にも選ばれた。

 念願だったワールドカップ出場を果たしたレメキは、「またオリンピックに出たい」と大会後に語り、セブンズ復帰に意欲を見せている。しかし、今年はチーム事情もあってトップリーグでのプレーに専念していたため、まだ7人制日本代表の合宿には参加していない。

 当初、レメキはトップリーグが終了した5月末あたりから再びセブンズに転向すると思われていた。しかし正直、それでは準備期間が短かったのも事実。東京五輪が延期されたことによって、セブンズに再挑戦する時間ができたのは間違いないだろう。

 スピードだけでなく、FWの選手並のパワーもあるレメキの突破力は、セブンズでも世界トップクラス。7人制ラグビーのプレーでカギを握るキックオフやプレースキック時のドロップキックもうまい。真夏の3日間の日程を12人で戦う東京五輪において、岩渕健輔HCは複数のポジションができる選手を求めており、それにもレメキはうってつけだ。

 かつてレメキは「2019年のW杯、2020年の東京五輪に出場できたら、ラグビーを引退しようかな」と話していた。ひとつ目の目標は叶えた。WTB福岡堅樹(パナソニック ワイルドナイツ)に続いてセブンズへと転向し、東京スタジアムを盛り上げてほしい。

 そしてもうひとり、東京五輪での活躍が必至の選手がいる。フィジー出身のFL(フランカー)/WTBセル ジョセ(北海道バーバリアンズ)だ。かねてから「日本代表になってオリンピックに出場したい!」と話していたが、3月30日にようやく日本国籍を取得した。

 17歳からニュージーランドでラグビーを始めたセルは、オークランド大学を卒業後に来日。2014年から東日本トップクラグリーグに所属する北海道バーバリアンズでプレーしている29歳の選手だ。

 北海道バーバリアンズは、セブンズ日本代表に登りつめてリオ五輪に出場したトゥキリ ロテ(近鉄ライナーズ)も輩出した。彼に憧れているセルは、まさしく同じ道を歩もうとしている。

 197cmの高身長は、キックオフキャッチで有利となるだろう。男子セブンズの空中戦の要として、セルは大きな戦力だ。

 前出のレメキやセルは、東京五輪の主力となる日本代表2次候補メンバーに選ばれている。一方、今年になってまだ名前が入っていないのが、フィジー出身のWTBジョセファ・リリダム(NTTドコモ レッドハリケーンズ)だ。

 リリダムは身長190cm、体重97kgという恵まれた体格を持つ大型WTB の30歳。オフロードパスを得意とする。

 昨年発表された日本代表1次候補メンバーに、リリダムの名前は入っていた。だが、まだ日本国籍を取得できておらず、東京五輪に出場できない立場だったため、今年はトップリーグに専念していた。

 15人制のフィジー代表だった祖父、7人制と15人制の両方でフィジー代表だった父を持つリリダムは、高校卒業後にオーストラリアでのプレーを経て、流通経済大でプレーするために来日。大学1年から活躍し、関東大学リーグ戦初優勝に貢献した。

 その後、3年居住の条件をクリアすると、すぐにセブンズ日本代表に選出。2018年にはセブンズのワールドカップにも出場し、ダイナミックなランを披露して大会の「ドリームセブン」に選出された。

 東京五輪の開幕まで1年以上あるため、リリダムが日本国籍を取得できる可能性は十分にある。大学の先輩である中島イシレリのように、代表入りしてスターダムにのし上がることができるか。

 オリンピックやセブンズワールドカップで「ドリームセブン」に選ばれたレメキやリリダムといった逸材を東京五輪で起用しない手はない。彼らが代表候補に入ってくることで、メンバー争いはさらに活性化し、1年後の夏にはより強い日本代表が見られるはずだ。