マリア・シャラポワ(ロシア)は、来年の4月にテニスに戻る権利を手にすることになった。10月4日の火曜日、シャラポワは薬物テストの陽性反応に関して、『重大な落ち度』があったわけではないと判断したスポーツ裁判所(CAS)により、罰則として科…
マリア・シャラポワ(ロシア)は、来年の4月にテニスに戻る権利を手にすることになった。10月4日の火曜日、シャラポワは薬物テストの陽性反応に関して、『重大な落ち度』があったわけではないと判断したスポーツ裁判所(CAS)により、罰則として科されていた2年の活動停止処分を15ヵ月に減刑されたのだ。
今年1月の全豪オープンでの薬物テストで、禁止されている心臓疾患の薬メルドニウムに陽性反応を示したシャラポワには、24ヵ月の活動停止処分が科されていたが、CASはその処罰から9ヵ月を減刑した。
5度にわたってグランドスラム大会を制した元ナンバーワンのシャラポワは、国際テニス連盟(ITF)が彼女に科した2年の出場停止処分の判決を覆すか、あるいは減刑することを求め、6月にCASに上訴していた。
28ページにわたる判決文の中でCASの陪審団は、シャラポワにはある程度の落ち度はあるが、重大な過失と呼ぶべきものよりも度合いは低い、という判断を下した。
「陪審団はすべての状況を加味し、彼女の過失の度合いを考慮した結果、15ヵ月の処罰が適切であるという結論に達した」と、3人によって構成された陪審団は裁決した。
シャラポワはドーピングのルールを破りはしたが、「いかなる状況下でも(中略)彼女のことを意図的な薬物使用者とみなすことはできない」と陪審団は言った。
1月26日から開始されたシャラポワの活動停止処分は、元の刑では2018年1月25日まで続くはずだった。しかし今、彼女は、2度優勝したことのあるグランドスラム大会、全仏オープンの1ヵ月前にあたる2017年4月26日に競技に戻れることになる。
「私は、自分の活動停止処分について知った3月という、私のキャリアでもっとも厳しい時のひとつから、4月にテニスに戻れると知った、私のもっとも幸福な日のひとつである今この瞬間に、移ることができました」と声明文の中でシャラポワは言った。
「あらゆる意味で、私は愛しているものを取り上げられていたように感じています。それを取り戻すことができたとき、本当によい気持ちになることでしょう」と彼女は言い添えた。「テニスは私の情熱であり、テニスから離れ、本当に寂しい思いをしていました。私はコートに戻れる日まで、一日一日を指折り数えて待っています」 。
薬物使用の活動停止処分で、29歳のシャラポワは、今年の全仏オープン、ウィンブルドン、リオ五輪、全米オープンに出場することができなかった。彼女はまた、2017年1月の全豪オープンも逃すことになる。
WTAツアーの責任者、スティーブ・サイモンはこの判決を歓迎した。
「(上訴の)過程が完了したことをうれしく思い、2017年にコートに戻って来たマリアに会うのを楽しみにしている」と彼は言った。
シャラポワは、準々決勝でセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)に敗れた今年の全豪オープンで、各試合の前にメルドニウムを摂取したことを認めていた。
しかし彼女は、ミルドロネートという名でも知られるメルドニウムが、2016年1月1日から世界アンチドーピング機関の禁止薬物のリストに加えられたことに気づいていなかったと言ったのだった。
ITFはまた、2月2日に行われたモスクワでの大会外の抜き打ちテストでも、シャラポワは陽性反応を示したと言っていた。
シャラポワの弁護士ジョン・ハガティは、ITFはメルドニウムが禁止となったことを選手にしっかりと伝えなかった、と非難した。
「陪審団の判定は、ITFの結論の多くに同意していない」と、ハガティは電話による会見で言った。
「我々がCASの前に証拠を示して見せた通り、テニスのアンチドーピングの責任者たちは、マリアに(禁止薬物に関する)変更をきちんと通知しなかった。他のスポーツ連盟がルールの変更をアスリートに警告したやり方と、ITFのやり方を比べると大きな隔たりがある」
シャラポワは、通常は心臓の治療に使われるこのラトビア産の薬を、最初、2006年に、主治医によって様々な健康問題の治療薬として処方されたのだと説明した。彼女はこの薬を、風邪にかかったとき、糖尿病発症の可能性があるとき、マグネシウム不足のときに定期的に摂取したと言っている。
ITFの陪審団は、シャラポワに不正を行おうという意図はなかったが、テストで陽性反応を示したことについては、本人のみに責任があり、重大な過失を犯したと判断した。ITFの陪審団はまた、(各試合の前に服用するという摂取の仕方から)必然的に、彼女がパフォーマンス・レベルを高める目的でこの薬物を摂取していたという結論に至った、とも言っている。
メルドニウムは血流を増加させ、より多くの酸素を筋肉に運ぶことによってエクササイズの許容量を向上させる。
今年の初めに多くのロシア人や、そのほかの東欧諸国の者を含む100人以上のアスリートがメルドニウムで陽性反応を示した。彼らの何人かは今年1月1日以前に摂取を中止しており、薬品が体内に残留していただけだ、という主張が認められて処罰を逃れている。反対にシャラポワは1月1日以降にメルドニウムを摂取したことを認めていた。
シャラポワの上訴の審問は、9月7、8日にニューヨークで行われた。彼女と彼女の弁護団は、重大な過失を犯してもいなければ、不注意でもないので、処罰はすでにここまでに経過した時間か、8ヵ月に減刑されるべきだと主張していた。
「私はこの出来事から学びました。そしてITFも同様に学んだことを願っています」とシャラポワは言った。「私は最初から、過去10年摂取し続けていた、このどこでも買えるサプリメントが、もはや許されてはいなかったことを知らなかったということについて、自分の責任を認めています」。(C)AP