井端弘和「イバらの道の野球論」(16)前回の記事はこちら 近年稀にみるハイレベルな争いになった昨年のプロ野球新人王。…

井端弘和「イバらの道の野球論」(16)前回の記事はこちら

 近年稀にみるハイレベルな争いになった昨年のプロ野球新人王。セ・リーグは高卒2年目で36本塁打を記録したヤクルトの村上宗隆が、ルーキーながら盗塁王(36盗塁)に輝いた阪神の近本光司を抑えて新人王に。パ・リーグではソフトバンクの日本一に大きく貢献し、昨年のプレミア12でも活躍した高橋礼(12勝6敗)と甲斐野央(26ホールド、8セーブ)の一騎打ちになり、高橋がタイトルを手にした。

 今年はリーグ日程がなかなか見えてこない難しい状況ではあるが、そんな中でブレイクを果たしそうな若手選手はいるのか。侍ジャパンの内野守備走塁コーチを務める井端弘和氏に、新人王にも輝きそうな両リーグの投打の注目株を聞いた。




昨年、ファームで首位打者に輝いた巨人の山下航汰

――まず、セ・リーグで注目している若手の野手はいますか?

「高卒2年目で、新人王の資格がある巨人の山下航汰(こうた)です。昨年はファームで、イチローさん以来となる高卒ルーキーで首位打者(打率.332)に輝きました。プロのボールに対する対応が早く、まだまだ伸びしろもあるので楽しみです。

 彼は2018年の『”育成”ドラフト1位』で入団しましたが、昨年の7月には支配下登録もされ、たった1年で『ドラフト1位』のような選手になりましたね。キャンプで右太もも裏を肉離れしたようですが、開幕が伸びたことでしっかり調整ができると思います」

――将来、どんな選手に成長しそうですか?

「今年は一軍でどれだけ起用されるかわかりませんが、早い段階で巨人のクリーンナップを担うかもしれません。山下は左打者ですから、右打ちの岡本和真とも並べやすいですし、5番でもいいですね。守備を不安視する声もありますけど、3月21日に行なわれた巨人の二軍とNTT東日本との練習試合で見た限りでは、十分にやれていました。内野に比べると守備の負担が少ない外野手ですし、しばらくはバッティング中心で頑張ってほしいです」

――続いてセ・リーグの投手はいかがですか?

「大阪商業大学からドラフト2位で中日に入団した、橋本侑樹(ゆうき)は面白いですね。変則フォームの左投げで、スライダーのキレもいい。オープン戦や練習試合では中継ぎで結果を出していましたから、シーズンでも同じような起用になると思います。

 それでも新人王となると、投手では広島のドラフト1位・森下暢仁(まさと)が本命です。明治大学の先輩である野村祐輔も新人王(2012年)になりましたが、森下はバランスがよく、将来的にエースになれる素材。野村の他にも、大瀬良大地など広島にはいい先発の見本がたくさんいますし、広島のエースや抑えとして長く活躍された佐々岡真司新監督からも多くのことを学べるでしょう」

――森下投手に近いタイプの投手を挙げるなら誰になりますか?

「やはり明治大学の先輩で、同じ右投げの柳裕也(中日)だと思いますが、柳本人は『森下のほうが上』と言っていました(笑)。身長180cmと上背があってボールに角度があるのと、何よりマウンドさばきがいい。若いうちはキャッチャーのサインどおりに全力で投げるのが普通ですが、彼は打者の様子を見ながら投げることができています。入団当初の野村もそうだったので、明治大学の伝統なのかもしれませんけど、現段階で冷静な投球ができるのは大きな強みです」

―― 一方で、パ・リーグで期待の投手は誰になりますか?

「ロッテのドラフト1・佐々木朗希(ろうき)を挙げざるを得ないですね。もともと首脳陣としては、日本ハム入団1年目のダルビッシュ有(カブス)と同じように、6月くらいに一軍に上げることを想定していたはず。今年は開幕がどこまで延びるかわかりませんが、順調に調整ができたらシーズン序盤で”一軍デビュー”があるかもしれません」

――佐々木投手の印象は?

「ロッテが中日との練習試合で沖縄の北谷を訪れた際、キャッチャー側からブルペン投球を見ましたが、第一印象は『近い』でした。しなやかで力みがないフォームからは想像がつかない球速が来るので、マウンドからホームベースまでの距離がすごく短く感じるんです。打者がストレートを意識しすぎてスイングの始動が早くなれば、変化球で打ち取られてしまう。他チームも研究を進めて対応してくるでしょうが、しばらくは佐々木が主導権を握る勝負が多くなるんじゃないかと思います」

――パ・リーグの野手については、前回のパ・リーグ注目選手の記事でロッテのドラフト5位・福田光輝選手を挙げていただきましたが、他に注目している若手の選手はいますか?

「智辯和歌山高校からドラフト2で楽天に入団した黒川史陽(ふみや)がいいですね。彼をキャンプで見た時には『プロ何年目の選手だろう』と思ったほど、チームに馴染んでいました。高校通算34発の打撃はもちろん、セカンドの守備も安定しています」

――高卒の内野手として、昨年に広島で活躍した小園海斗選手と比べていかがですか?

「小園を初めて見た時は、前評判が高かった守備は『まだプロのレベルではないな』という印象で、それよりも体の分厚さと打撃のよさが目につきました。一方で黒川の守備は、ノックのさばき方を見てもすでにプロレベル。スピード感は小園のほうがありますけど、黒川も十分に一軍で結果を残せる実力があります。

楽天には同じポジションに浅村栄斗がいるので、仮に今年中に一軍に呼ばれても起用される機会は多くないかもしれない。それでも何年か後には、黒川がチームの中心選手になっていてもおかしくないくらいの逸材だと思います」