ロジャー・フェデラー(スイス)が、往年のスター選手ロッド・レーバー(オーストラリア)やフレッド・ペリー(イギリス)、ルネ・ラコステ(フランス)らと試合をしているのを想像してみてほしい。もしフェ…

ロジャー・フェデラー(スイス)が、往年のスター選手ロッド・レーバー(オーストラリア)やフレッド・ペリー(イギリス)、ルネ・ラコステ(フランス)らと試合をしているのを想像してみてほしい。もしフェデラが-1920年代から1930年代に生まれていたら、彼のキャリアは違っていただろう。一方で、パフォーマンスや健康に関する近年の進歩による恩恵を受けることもできなかっただろう。テニス関連ウェブサイトTennis World USAが報じている。

イギリスのBritish Journal of Sports Medicine誌の研究で、プロだけでなくアマチュアにも役立った素晴らしいテクノロジーの進歩が確認された。パフォーマンスと健康に関する8つの進歩について、まとめている。1.プレーヤー分析テクノロジー

選手の動きや用具の使い方を測定することのできる特別な装置やスマートデバイスが開発された。これらにより、以前ではコーチの主観的な分析でしか得られなかった事柄の、客観的な情報を得ることができるようになった。現代の選手たちは、もしコーチがいなかったとしても低価格で洗練されたコーチング情報を得ることができ、これはテニスにとても大きな影響を与えている。

これらの情報はリアルタイム(もしくはほぼリアルタイムに近いスピード)で得られ、しかも以前に比べてはるかに詳細である。選手を分析する技術は急速に進化しており、2014年のテニス規則は、ITF(国際テニス連盟)が認可したデバイスの試合中の使用を許可するように変更された。

2.自動ライン判定システム

テニスにおける特に目立つ近年の科学的進歩といえば、ホークアイという自動ライン判定システムの導入であろう。このシステムは、高性能のカメラでボールの動きを捉え、どこに落ちるかを判断する。その様子はコンピューターグラフィックスを用いて表示される。

この情報は選手、観客、そして審判にほぼリアルタイムで提供され、「インかアウトか」という永遠の疑問に対する決定的な答えとして受け入れられている。

3.バイオメカニクスと動画分析

バイオメカニクスは、コーチがテニスのストロークにおける力学的な側面を理解しやすくし、選手たちがパワーとコントロールを養う複雑なメカニズムを分かりやすくしてくれる。ほとんどの初期研究はサーブについてだったが、最近ではグラウンドストロークが分析されている。

4.低圧縮テニスボール

低圧縮テニスボールの導入によって、子供も大人もテニスを学ぶ方法が根本的に変わった。このボールは、基本的に軽く、打ちやすい。練習中の人がこれで基本的なストロークに慣れたら、スピードが遅くバウンドの低い普通サイズの柔らかいボールにステップアップする。

5.スポーツ心理学

若いテニス選手にとっての親の重要性は高く認識されており、親教育プログラムが発展してきている。初心者や中級者のプレーヤーを指導する際には、モチベーションへ大きな焦点をあてることはとても重要である。優秀なテニス選手は様々なメンタルコントロールの方法を使っており、パフォーマンスを向上させることが分かっている。

6.怪我の調査

テニスの怪我に関する一般的な知識は年々広がってきているが、報告された怪我の発生率、重症度、怪我の種類は調査ごとに大きく異なっている。差異の原因は異なるサンプル集団や状況によることもあるが、主な理由としては怪我の定義が様々であることや、それぞれの調査で異なる手法が用いられていることである。

最近の研究により、負荷とテニスでの怪我の関係性について調査されたが、この分野についてはっきりとした結論にたどり着くまでには、さらなる調査が必要である。

7.栄養

栄養については、主にサイクリングやマラソンといった多くのエネルギーを必要とするスポーツに焦点が置かれていたが、テニスでも適切な栄養を摂取することのメリットへの理解が広まってきた。

最近では、ほとんどのプロ選手たちは最善のパフォーマンスとリカバリーの向上のために、プレー前・プレー中・プレー後に水分・炭水化物・タンパク質を正しく組み合わせた食事を摂ることを意識している。

8.ヒートストレス

テニス選手のヒートストレスに対する体温調節反応についての調査も数多く行われてきた。これらの調査によって、中核温(CBT)は幅広い環境状況において安全なレベルで保たれること、中核温は主に運動強度とそれによる代謝率によって決められることが分かっている。

体の冷却機能(発汗や皮膚血管の拡張)が正常に働いていれば、テニスの試合後約40分で熱平衡に達し維持される。

(テニスデイリー編集部)

※写真は2020年チャリティマッチでのフェデラー

(Photo by Ashley Vlotman/Gallo Images/Getty Images)