心なしか、去年よりマウンド上で生き生きとしているように見えた。 試合後、マウンドを降りた西田光汰にそんな印象を伝え…

 心なしか、去年よりマウンド上で生き生きとしているように見えた。

 試合後、マウンドを降りた西田光汰にそんな印象を伝えると「そう見えました?」と笑っておどけた。



2年前の都市対抗で5者連続三振を奪い脚光を浴びたJR東日本の西田光汰

 無観客試合となった3月25日の東京都春季企業大会の初日。規定のためスカウトも観戦できない試合だったが、JR東日本の西田は切れ味抜群の投球を見せた。

 2対1と明治安田生命から1点リードを奪った8回二死一塁、打席に4番の泉澤涼太を迎えた場面で西田は登板した。この日、ソロ本塁打を放っている右の強打者を相手に、西田は勢いのある速球とスライダーを軸にカウント3ボール、2ストライクとする。最後は外角に横滑りする133キロのカットボールで空振り三振。9回も三者凡退に退け、西田はチームを勝利に導いた。

「下にも後輩が入ってきて、チームが若い分、僕が引っ張っていかないといけないと思っています。ウチの投手陣で都市対抗を経験しているのは僕と伊藤(将司)さんしかいないので」

 まるでベテランのような口ぶりだが、今年22歳になる若者である。大体大浪商(大阪)から入社して4年目。本来なら高卒3年目の昨季がプロ解禁イヤーで、同期の太田龍(巨人ドラフト2位)と同じタイミングでプロに進んでいてもおかしくない存在だった。

 入社2年目の都市対抗では、新日鐵住金鹿島(現・日本製鉄鹿島)戦で5者連続奪三振と強烈なインパクトを残している。だが、西田は昨秋のドラフト時点で指名凍結を申し出ている。つまり、「プロには行かない」と決めたわけだ。

「プロに行けたとしても、このヒジでは即戦力で使ってもらえないし、活躍できる気がしなかったんです。もう1年社会人でしっかりと力をつけて、あらためて挑戦したいと思いました」

 太田が上位指名を受けて脚光を浴びるなか、西田は人知れず右ヒジの手術を受けていた。痛みの元になっていたヒジの遊離した軟骨を内視鏡で除去して、リハビリ生活へ。ところが、入社1年目もヒジの手術を経験している西田は驚異的な回復を見せる。

「初めて手術する人は術後にヒジを伸ばすのが怖くて、伸ばせるようになるまで時間がかかるんです。でも、僕は二度目だったので、ヒジが伸びることはわかっていました。だからリハビリにも時間がかからずに、11月の終わりにはもう普通に投げ始めていましたね」

 時を同じくして、肉体改造にも着手した。週4日のウエイトトレーニングで全身を強化し、課題だったストレートの球速アップの克服を目指した。

 効果は春先から表れる。不安なく腕が振れるようになり、昨年まで130キロ台後半だった平均球速が、140キロ台前半に上がった。これまでの最速だった147キロも肌寒い春から頻繁に計測し、さらに増速する気配がある。西田は「ストレートが速くなったので、カットボールなどの変化球も全体的に速くなって、キレも出てきました」と手応えを語る。

 何よりも気力の充実が大きい。投球練習から「オラッ!」と声をあげながら、のびのびと腕を振り、勢いのあるストレートを投げ込む。ヒジの痛みを抱えながらマウンドに上がっていた昨年とは、覇気が違う。

 もともと「都市対抗だろうが緊張したことがない」と豪語するほどの強心臓を売りにする投手である。体が万全でパフォーマンスも上がっているとなれば、当然プロも放っておかないだろう。

 一足先にプロへ進んだ太田へのライバル心、対抗心はないという。

「太田とは今も連絡を取り合っていますし、龍は龍で頑張ってほしいと思っています。でも、『追いつきたい』という思いはないんです。龍とはピッチャーとしてのタイプが違うし、あんなエンジンの大きさは僕にはないですから。僕は僕でやっていきます」

 毎年コンスタントにプロへと人材を送り込むJR東日本。今年は投球バリエーションに長けた先発タイプの左腕・伊藤がドラフト戦線に浮上しているが、強心臓の西田もじっくりと力を養成している。