オリンピックとパラリンピックは、毎回、開催都市独自のさまざまな工夫や、取り組みがされています。たとえば2016年に開催されたリオ大会では、メダルのストラップを使用済みペットボトルから作るといった、環境に配慮した試みがされていました。このよう…

オリンピックとパラリンピックは、毎回、開催都市独自のさまざまな工夫や、取り組みがされています。たとえば2016年に開催されたリオ大会では、メダルのストラップを使用済みペットボトルから作るといった、環境に配慮した試みがされていました。

このようにオリパラには、実は競技以外にも注目したいネタがたくさんあるのです。そこで今回は、思わず人に話したくなる東京2020大会にまつわるユニークな豆知識をご紹介します。

1)世界初の取り組み「ホストタウン・イニシアティブ」って?

©︎Shutterstock

東京2020大会ホスト国である日本には、大会に向けて世界中から多くの選手・観客等が訪れます。その機会を東京だけでなく、日本全体で活かしていこうという政府による取り組みが「ホストタウン・イニシアティブ」です。

「ホストタウン・イニシアティブ」とは、日本の地域を大会参加国・地域の「ホストタウン」として登録し、人や文化、経済の交流を図るものです。

たとえば、神奈川県鎌倉市はフランスのニース市と元々姉妹都市提携があったこともあり、フランスのホストタウンとして正式に登録されました。ホストタウンとなった鎌倉は、フランス代表チームの事前合宿の受け入れをするほか、地域の人たちとも相互交流を図るさまざまな試みをすることになります。こうしたホストタウンに日本全国の地方公共団体が登録し、その数は2020年4月3日時点で424件にものぼります。

神奈川県箱根町では、ホストタウン相手国である3カ国(エリトリア、ブータン、ミャンマー)の郷土料理を地域の小中学校で提供するなど、食を通した文化交流を図り、また埼玉県新座市では、地域の中高生がホストタウン相手国のブラジルを訪問し、現地で開催された水泳大会に参加するなど、学生によるスポーツを通した交流も深めています。それぞれの都市間で、互いに理解を深める独自の取組みが行われているのです。

この世界初の取り組みが一過性のものではなく、大会終了後も続く国際的な交流のきっかけになるといいですね。

2)不要になった携帯電話やデジカメがメダルに?

ⒸTokyo2020

東京2020オリンピック・パラリンピックで選手に授与されるメダルのデザインはすでに公開されていますが、その素材はなんと、使用済み小型家電等から集められたリサイクル金属です。

東京2020組織委員会は、「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」と題し、2017年4月1日~2019年3月31日の2年間にかけて一般から携帯電話やデジタルカメラなど不要になった小型家電を回収。その数はなんと約621万台にものぼったそう。そこからとれた金属の内訳は以下の通り。

金:約32kg

銀:約3,500kg

銅:約2,200kg

すでに東京2020大会で必要な約5,000個分のメダルに必要な金属量を100%回収できたそうです。いらなくなった小型家電が形を変え、アスリートにとってかけがえのない宝物に生まれ変わると思うと何だかワクワクしますね。

3)触って違いがわかるパラリンピックのメダル

ⒸTokyo2020

扇のモチーフが採用された東京パラリンピックのメダルの表面には、国際パラリンピック委員会の規定により、点字で「TOKYO2020」の文字が表記されています。

また、目が見えない人でも金、銀、銅のメダルの区別がつく工夫が凝らされているのですが、東京2020大会ではパラリンピック史上初の仕様として、側面に円形のくぼみが施されています。金メダルには1つ、銀メダルには2つ、銅メダルには3つ、とメダルによってくぼみの数が違うのが特徴。メダルを提げるリボンも、金銀銅の区別ができるように、シリコンプリントによる凸加工が施されることになりました。デザインにも、日本人ならではの細やかな気遣いがうかがえます。

4)聖火リレートーチに、東日本大震災の仮設住宅のアルミ建築廃材を再利用

ⒸTokyo2020

オリパラの象徴とも言える聖火。オリンピックでは、オリンピック発祥の地ギリシャのオリンピア遺跡で採火され、パラリンピックでは、パラリンピックの原点となった車いす患者によるアーチェリー大会が行われたイギリスのストーク・マンデビルと開催国内各地で採火されます。採火された炎は、聖火ランナーのリレーによって大会開催地まで届けられます。その炎を運ぶのがトーチです。

トーチは開催国が準備するのですが、東京2020大会のトーチには、東日本大震災の被災地で使われた仮設住宅のアルミ建築廃材が素材の一部として再利用されています。

多くの被災者の生活を支えたアルミが、桜をかたどった約11、000本の美しいトーチに生まれ変わりました。このトーチに込められた、平和や復興への願いに思いを馳せると、聖火が一段と特別なものに見えてくるかもしれませんね。

5)表彰台の素材は使用済みプラスチック!?

(写真はリオ2016パラリンピック) ©︎Getty Images Sports

オリンピックやパラリンピックで、メダルを獲得した選手だけが立つことのできる表彰台。前回のリオ大会では、その素材にFSC認証(森林の環境保全に配慮し、地域社会の利益にかない、経済的にも継続可能な形で生産された木材にのみ与えられる)木材が使用されましたが、東京2020大会では、使用済みプラスチックが使用されることになりました。

近年、日本では一人当たりのプラスチックごみ排出量が世界第2位の多さとなっていて、再利用など、プラスチック資源循環の取り組みが課題となっています。

そんな中、「使い捨てプラスチックを再生利用した表彰台プロジェクト」~みんなの表彰台プロジェクト~を実施。市民の協力により回収された使用済みのプラスチック空き容器と、海洋プラスチックを再利用して表彰台が作られるのは、オリパラ史上初となります。

6)選手村ビレッジプラザは、日本全国から集めた木材でできている

©︎Getty Images Sports

東京2020大会に向けて、新国立競技場をはじめ、さまざまな施設が建設されていますが、東京・晴海の選手村の玄関口となる「選手村ビレッジプラザ」もそのひとつ。カフェや雑貨店などの店舗のほか、メディアセンターなどが配置され、大会関係者を支えます。また、各国選手団の入村式の舞台となるため、メディアを通して多くの人の目に触れることになる場所でもあります。

この「選手村ビレッジプラザ」の建物は、全国63自治体から借り受けた木材によって作られているのが特徴。全国から集められた木材で一つの建物を作ることで、オールジャパンの大会参画を実現し、各地の木材を建物のさまざまな箇所に使うことで多様性と調和を表現しています。

大会終了後、建物は解体され、木材は各自治体に返却され公共施設などで再利用される予定だそう。入村式の報道では、ぜひ建物にも注目してみてください。

7)選手村のベッドは段ボール製?

ⒸTokyo2020

東京2020大会の選手村は、大会期間中の選手のコンディションを支えるとても大切な施設。その内部にもさまざまな工夫が凝らされていますが、なんと選手用に採用されたベッドフレームは段ボール製。エコとはいえ、強度が心配になりますが、段ボールは内部に細かく梁を増やすことができるので、ベッド自体の耐久性を上げることが可能なのだそう。そのため、荷重200キロまで耐えられるベッドになりました。

また、マットレスは選手の体型や体重によって、肩・腰・脚、それぞれのマットレスの硬さをカスタマイズできるものを採用。

大会終了後、ベッドフレームは新聞紙などの古紙に、マットレスは溶かしてビニール袋に再加工することもできます。

寝心地がよく、丈夫で低コストな上、サスティナビリティにも配慮した寝具は、すべて東京2020大会のための特別仕様。選手の睡眠環境改善のために、このような機能性寝具が選手村に導入されるのは今回が初めてだそう。選手が最高のパフォーマンスができるように配慮された、日本のおもてなしならではの新たな試みです。

オリンピック・パラリンピックというと、記録や選手のパフォーマンスに注目が集まりがちですが、今回ご紹介したように、東京2020大会では、日本ならではの取り組みがたくさんされています。おもてなしの心の表れでもある「ホストタウン・イニシアティブ」や、職人技術を生かした聖火リレートーチやメダルなど、東京2020大会をきっかけに日本を誇りに思える活動や取り組みが今後さらに増えていくといいですね。

text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)

photo by Tokyo2020、Getty Images Sports、Shutterstock