プロテニスツアーの先が見えない中断の中でも、一握りの有名選手たちは経済的に困窮することはないだろう。しかし、世界ランキング75位以下の多くの選手たちにとっては違う。毎週毎週トーナメントで必死に…

プロテニスツアーの先が見えない中断の中でも、一握りの有名選手たちは経済的に困窮することはないだろう。しかし、世界ランキング75位以下の多くの選手たちにとっては違う。毎週毎週トーナメントで必死に戦い賞金を得ることで、キャリアを続けていけるのだ。米USA Today紙が報じている。労働組合や、収入の機会を失った選手を助けてくれるような団体がない中での援助は、いくらであろうと嬉しいもの。それが今回、WTT(ワールド・チーム・テニス)が厳しい状況下の選手とコーチたち約60名に、サポートの気持ちを示すべく、千ドル(約10万円)ずつ支給すると決めた理由の1つだ。

WTTとは1970年代からアメリカで開催されているチーム対抗のリーグ戦で、ニューヨーク、シカゴ、ラスベガスなど9つの都市をベースに、7月の約3週間で戦われ、8月の初めにはプレーオフが行われる。男女シングルスの試合が1セットずつ、男女ダブルスが1セットずつ、ミックスダブルスが1セット戦われるというフォーマット。2019年シーズンには西岡良仁(日本/ミキハウス)も参戦していた。

WTTのCEOであるCarlos Silva氏は各選手·コーチに千ドルという贈り物について「とてもいい反応を得ています。たくさんの人々がお礼のメールを送ってくれました。“本当に助かりました”というメッセージをくれた選手たちもいて、良いことだったと思っています」と語った。

このアイディアは、2017年からWTTの主要株主となったIT長者のFred Luddy氏と話していた時に思いついたそうだ。お金と一緒に選手たちへは、WTTに参加してくれたことへの感謝と、そしてこのお金には何の約束事もくっついておらず、今年あなたが得る賞金とは別のギフトですと念を押すメッセージが添えられていた。

千ドルというお金は、今シーズンWTTに参加予定の2人、今年「全豪オープン」で初優勝を果たしたソフィア·ケニン(アメリカ)や、長年トップ50内にいるサム·クエリ―(アメリカ)らにとっては何かが変わるほどの大金ではないだろうが、キャリア獲得賞金総額が100万ドル(約1億円)以下の多くの選手は、ツアーを回る様々なコストも考え合わせれば、経済的に大きな余裕があるわけではない。

「最初は考えました、“誰に送って誰に送らないか”と。そして、とにかくシンプルにしようということになりました。このお金をより必要としている人たちも、そうでもない人たちもいる。でも全員に送ろうと決めました。たくさんのコーチたちにも。コーチ一筋でやっている人々は、やはり今、仕事がないのです」とSilvaは続けた。

現時点ではWTTは、7月12日からのシーズン開始の予定は変更していない。この9つの都市をベースにしたチーム対抗リーグは、ファンは会場でも観戦するが、主としてテレビ放映を目的としている。このリーグ戦は1970年代から行われており、現在はTV局のCBSとESPNが放映、今年の賞金総額は500万ドル(約5億4200万円)だ。

今年エントリーしている有名選手には、グリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)、テニス・サングレン(アメリカ)、ボブ・ブライアン(アメリカ)&マイク・ブライアン(アメリカ)、スローン・スティーブンス(アメリカ)、ダニエル・コリンズ(アメリカ)、クリスティーナ・プリスコバ(チェコ)らがいる。

今年の試合を無観客で行う可能性もあるとしつつも、今はまだそれを決定するには時期が早すぎるとSilva氏。WTTでは全試合を1つのコートで行うため、ATPやWTAの大きな大会に比べたら開催するのは容易である。

「今は、我々も皆と同じ様にじっと待っています。政府や知事の要請に従い、データを集めてあらゆる可能性を探っています。それらの可能性をすべて考え合わせ、最終決断をする立場としては、開催が本当に大丈夫になるまでは何もしません」

※為替レートは2020年4月10日時点

(テニスデイリー編集部)

※写真は2019年7月WTTリーグ戦でダブルス試合に参加したティアフォー(左)と西岡(右)

(Photo by Tony Quinn/Icon Sportswire via Getty Images)