レアル・マドリード王者の品格10 レアル・マドリードとバルセロナ。常に比較される両クラブだが、なにもかもが違う。レア…
レアル・マドリード王者の品格10
レアル・マドリードとバルセロナ。常に比較される両クラブだが、なにもかもが違う。

レアル・マドリードへの復帰の可能性もある久保建英(マジョルカ)
レアル・マドリードには、バルサがマドリードに対して抱くようなコンプレックスが、ほとんどない。敵愾心は強いが、被害者意識はなく、むしろ高圧的である。その不遜さは、中央政府のバックアップを受けていた歴史的な成り立ちと関係しているのかもしれない。
また、レアル・マドリードは、バルサのようなクラブとしての一貫したプレースタイルを持っていない。世界最高レベルの選手を集め、マドリディスモ(マドリード主義)に従い、死力を尽くして戦わせる。それはプレーモデルというよりも、信仰心に近いかもしれない。枠に収まらず、臨機応変に戦って勝利することができるのが、彼らのスタイルだ。
下部組織においても、バルサがボールプレーヤーにこだわり、その鍛錬を続けるのとは一線を画している。あえて言えば、どんなクラブでも、どんなスタイルでも、自らの技を出し、生き残れる人材を育成する。フィジカルもメンタルも強い選手を選り抜き、鍛え上げる。プレーコンセプトが、集団よりも個人に立脚しているのだ。
レアル・マドリードは今後も、クラブの歴史にふさわしい世界最高の選手を擁し、覇道を行くだろう。アルフレッド・ディ・ステファノが言うように、「マドリードは方舟。選ばれたものが乗り、降りていく」。マドリディスモが選手に力を与えるのだ。
久保建英は、そのひとりとして名を残すだろうか?
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、レアル・マドリードも活発な補強には動いていない。しかし水面下では、来季に向けた手を打っている。
そもそも、現在のチームは主力の高齢化が著しい。ルカ・モドリッチ、セルヒオ・ラモス、カリム・ベンゼマ、マルセロ、ガレス・ベイル、トニ・クロース、ナチョなどはオーバー30。カゼミーロ、イスコ、ダニエル・カルバハル、エデン・アザール、ルーカス・バスケス、ハメス・ロドリゲスも28、29歳だ。
世代交代は、否応なく加速するだろう。
ジネディーヌ・ジダン監督は、同胞のフランス人選手に熱視線を送っている。ポール・ポグバ(マンチェスター・ユナイテッド)、キリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)の2人は、”宿願”とも言える希望選手。監督復帰のひとつの条件だったとも言われるが、果たして……。
クラブは次世代のフランス人選手にも触手を伸ばしている。
17歳のエドゥアルド・カマビンガ(レンヌ)は、獲得候補リストの上位にいるようだ。守備的MFで、とにかくボール奪取力に優れる。フランスには伝統的に、マルセル・デサイー、クロード・マケレレ、エンゴロ・カンテなど、フィジカルを生かした守備を得意とする選手が多いが、その系統だろう。カゼミーロの後継者か。
16歳の攻撃的MFライアン・チェルキ(リヨン)は、すでにトップでの経験を重ねている。現役時代のジダンを彷彿させるボールテクニックを持つ。マルセイユルーレットも得意技。ジダンのラブコールを受けたことで、レアル・マドリード行きを熱望していることを公言している。
そして21歳のセンターバック、ダヨ・ウパメカノ(ライプツィヒ)はすでに欧州中が注目する逸材である。トップスプリンターで、簡単にアタッカーとの勝負を制してしまう。インターセプトのうまさも随一で、とにかく弱点がない。若手センターバックとしては1,2を争う万能さで、セルヒオ・ラモスの後釜になるのではないか。
来シーズンの目玉選手になりそうなのが、ノルウェー代表FWアーリング・ハーランド(ドルトムント)。クリスティアーノ・ロナウドの移籍後、レアル・マドリードの次世代ストライカーとして嘱望される。レアル・ソシエダに期限付き移籍中のノルウェー代表MFマーティン・ウーデゴールのレンタルバックとセットで、北欧ホットライン誕生の可能性もある。
ウーデゴールだけでなく、期限付き移籍先から復帰する若手選手も見込まれる。モロッコ代表右サイドバック、アクラフ・ハキミ(ドルトムント)は成熟を見せる。フランス代表左サイドバックのテオ・エルナンデスも、ミランで殻を破った。
当然、久保も復帰候補のひとりだろう。今シーズン、マジョルカで先発の座を確保。それにとどまらず、チームの主力のひとりになっている。攻撃面でチームを左右するプレーを披露。その勝負強さはレアル・マドリードのスタッフにも高く評価されている。
復帰した場合は、モドリッチの後継者として、ウーデゴールとその座を争うことになるか。あるいはベイルの後釜として、前十字靭帯断裂のケガから復帰を目指すマルコ・アセンシオとポジションを競うこともあり得る。マジョルカでのプレーを見る限り、後者のようなゴールに近いポジションで、より力を発揮できそうだが……。
久保の場合は18歳と若く、もう1シーズン、マジョルカよりも上位のクラブで経験を積むのが得策という声も根強い。ウーデゴールも、オランダのクラブで試合経験を積み、レアル・ソシエダを上位に押し上げ、復帰が現実的になっている。もしチームがエムバペを獲得したら、アタッカーの席は確実にひとつ埋まる。今は雌伏の時かもしれない。
移籍先としてはアーセナルも候補に挙がる。MFダニ・セバージョスを貸し出すなど、ルートはあるだけに、現実味はある。ただし、スペインの有力クラブ、たとえばレアル・ソシエダ、バレンシアなどのほうが望ましいかもしれない。
久保はレアル・マドリードというクラブに求められてスペインに渡った。それだけで日本人にとっては歴史的な価値と言っていいだろう。バルサの下部組織ラ・マシアで育った彼が、日本でプロとして目覚め、やがて白いユニフォームに袖を通す――。それはマドリディスモの新たな1ページとなる。
(つづく)