レアル・マドリード王者の品格9 今シーズンのレアル・マドリードへの評価は、賛否が分かれるところだろう。 チャンピオン…
レアル・マドリード王者の品格9
今シーズンのレアル・マドリードへの評価は、賛否が分かれるところだろう。
チャンピオンズリーグ(CL)、決勝トーナメント1回戦のマンチェスター・シティ戦、第1戦では手玉に取られ、王者の面影はなかった。強力なプレッシングでシティの組み立てを分断するのが狙いだったが、相手がロングボールを蹴ってきて、肩透かしを食らう。次第にペースを握られ、後半は相手の反撃に手も足も出ず、1-2と逆転で敗れた。
一方、リーガ・エスパニョーラも不安定な戦いが続いていたが、クラシコでは宿敵バルサの鼻をあかしている。シティ戦の教訓か、前半はボールを追わずに体力を温存。プレスが弱すぎて後手に回るシーンが多く、失点を防げたのはGKティボー・クルトワの好守のおかげだったが、後半は激しいプレスからバルサを追い込み、劣勢を挽回。ヴィニシウス・ジュニオール、マリアーノ・ディアスの得点で2-0と勝利した。

レアル・マドリードのチャンピオンズリーグ3連覇に貢献したクリスティアーノ・ロナウド
批判も受けるジネディーヌ・ジダン監督だが、健闘しているのは間違いない。
欧州3連覇を遂げた一昨シーズンまでは、”ゴール製造機”クリスティアーノ・ロナウドがいた。今はいない。単純計算で、シーズン50点近い損失なのだ。
ロナウドは、レアル・マドリードの一時代を築いたと言える。
ロナウドは、マドリードに在籍した9シーズン、438試合で450得点を記録している。1試合平均1点以上のペースだ。そして2度のリーガ優勝、2度のスペイン国王杯優勝、3度のクラブワールドカップ優勝、4度のCL優勝をもたらした。彼のゴール=タイトルだ。
ロナウドは、自身が宗教であるかのような錯覚を与える。自らに対する信心が深く、行動に迷いがない。そして、神の恵みを受ける――。特筆すべきは、その必勝のメンタリティだ。
「私はとても賢く、弱点などひとつもない。自分はいつだってプロフェッショナルだ」
ロナウドはそう言う。恐るべき自信だ。
強烈なナルシズムで鍛え上げた身体能力を、ロナウドはプレーに落とし込める。たとえば高く跳躍し、最高点でボールを叩くヘディングシュートは、上半身の筋力を生かし、恐るべきスピードでゴールへ飛んでいく。超人的なヘディングは、歴代選手でも1、2を争うだろう。しかし、彼はいわゆるストロングヘッダーでは収まらない。
シュートのバリエーションは多く、左からカットインし、右足で叩き込むミドルはひとつのハイライトだろう。スプリントで相手を置き去りにし、追いすがられても鋭いステップでダメを押す。シュートの足の振りは速く、インパクトにも優れるため、GKにとっては悩ましい。「ロナウドのアングル」として研究されても、止めるのは難しい。
ボレーやオーバーヘッドも得意としている。また、こぼれ球に対する反応も速く、スルーパスに走り出すタイミング、クロスの呼び込み方も俊逸。ファウルを受ければ、FKで無回転シュートを枠に飛ばすことができる。
「ロナウドにはとにかく前を向かせるな。決定力は並外れている」
ジョゼップ・グアルディオラは、バルサの選手たちにそれだけを厳命したという。マンマークは通用しない。肉体的に卓抜しているため、近い距離で体を合わせると、跳ね返され、マークを失ってしまうのだ。
なにより、臨戦態勢に入った時のロナウドは敵を心理的に凌駕していた。
「クリスティアーノは、プレッシャーがかかっている方が活躍できる。肝がすわっていて、特別に選ばれた選手。真のプロフェッショナルだ」
ジダンはロナウドについてそう言及している。
得点数の多さは、チームの守りの堅牢さに助けられたことも一因だろう。中盤についても、ルカ・モドリッチ、トニ・クロースはいくらでもボールを配給できた。前線のカリム・ベンゼマ、ハメス・ロドリゲス、イスコは優れたアシスト役と言える。
それにしてもロナウドは異次元だ。
シュート数ひとつを取っても、その多さは際立っている。2014-15シーズン、ロナウドはリーガで48得点して得点王になっているが、シュート数も225本で1位だった。2位のリオネル・メッシ(バルセロナ)が187本、3位のノリート(当時はセルタ。現セビージャ)が105本、4位のガレス・ベイル(レアル・マドリード)が103本と、ライバルたちを大きく引き離している。おまけにシュート成功率も1.37点で1位。たとえばノリートは0.36点で、いかに飛び抜けた存在かが伝わるだろう。
ロナウドの比類のなさは、ユベントス移籍で失ってからより明瞭になった。2018-19シーズン、レアル・マドリードは3人の監督がベンチに入っているが、ひとつのタイトルも獲得することができなかった。ロナウドの代わりに7番を背負ったマリアーノ・ディアスは、カップ戦も含めてわずか4得点。同じ成績を求めるのは酷だろう。皮肉なまでの”不在の在”だった。
「才能は必要だ。しかし、努力なくして才能は無意味。私は完璧に近づき続ける」
ロナウドは言う。その巨大なナルシズムが、世界の冠たるレアル・マドリードの気風と化学反応を起こしたのだ。
(つづく)